「ポイント会員」「ライフデザイン」「群戦略」 新規領域に活路を見いだす3キャリア石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2018年05月13日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2017年度決算が出そろった。各社とも業績は好調ながら、戦略の軸足を非通信領域に移しつつある。目指す方向性は3社とも一致しているが、中身まで見ていくと、それぞれの特色が出ていることが分かる。ここでは3社の業績をまとめて振り返るとともに、新たに打ち出した戦略の詳細を見ていきたい。

通信契約者からポイント会員へと基盤を転換するドコモ

 「これまでは回線契約を中心に考えていたが、今後は回線契約の有無に関わらず、dポイントが基盤になるよう変革を進めていきたい」――こう語るのは、NTTドコモの吉澤和弘社長だ。ドコモは以前から、「dマガジン」や「dTV」などのサービス分野をキャリアフリー化していたが、軸足はドコモの回線を使うユーザーに置いていた。

ドコモ ドコモの戦略を語る吉澤社長

 「dカードを出した段階で、回線契約だけでなく、会員を意識していた」(吉澤氏)というものの、考え方だけでなく、顧客管理システムも回線中心になっていたようだ。吉澤氏によると、「システム上、お客さまの基盤が回線単位になっていた」といい、dポイントはあくまで、そこにひもづくポイントプログラムになっていた。

 この仕組みを改めたのが、5月1日のこと。ドコモはdポイントクラブをリニューアルし、新たに「ポイント共有グループ」を導入。ドコモ回線を契約していないdポイント保有者ともグループを組めるようにシステムを刷新して、dポイントを家族で利用できるようにしている。「システムそのものの作り込みをして、dポイントクラブの仕組みを変えた」(吉澤氏)

ドコモ
ドコモ 2018年度は、回線契約者から会員への基盤転換を目指す

 狙いは、回線契約以上に幅広いユーザーを獲得するところにある。吉澤氏は「今、回線契約者は6000数百万いるが、会員ならそれに止まらない。端的なことを言えば、人口までいける。その会員がdマーケットのサービスやdポイントで買い物をしていただける」と狙いを話す。「回線で縛ってしまうと、顧客基盤を自ら絞ることになってしまう」(同)というわけだ。

 もちろん、このdポイント会員に「ドコモの回線契約を勧めることもできる」と回線契約者の獲得にもプラスになる。dポイントの発行総額は、2017年度で1500億ポイントを超え、利用額も1200億ポイントに達している。「そのうちのかなりは付属品やアクセサリーの購入に使われているが、2番目に多いのが加盟店での支払いで、額も大きい」(吉澤氏)。こうしたdポイントの成長も、軸足を移す判断をした理由といえる。

 dポイント会員のポテンシャルが大きいと吉澤氏が語るように、スマートフォンやタブレットなど、“人”が使う回線の契約数の伸びは鈍化している。2018年度のドコモの純増数は、149万1000。通期計画の130万は上回っているが、ドコモ回線を使うMVNO分の増加や通信モジュールの影響を除くと、「だいたい横ばい」(吉澤氏)と何とか現状を維持している状況だ。スマートフォンやタブレットの利用者は3586万から3830万に増えたが、この多くはフィーチャーフォンからの機種変更やタブレットの新規契約だと考えられる。

ドコモ スマートフォン・タブレット利用数は伸びているが、MVNOや通信モジュールを除くと契約者数はほぼ横ばいだという

 相次ぐ新料金プランの導入もあって、通信事業の営業利益は8328億円と横ばい。業績の伸びは、コンテンツやサービスなどのスマートライフ領域が支えている。このスマートライフ領域をさらに拡大するには、大きな成長が期待できない回線にひもづけるより、伸びしろのあるdポイントと連動させた方がいいというのが、戦略転換の理由といえる。実際、dポイントクラブの会員数は2017年度に6560万を突破。dポイントカードの登録者数も2232万へと拡大している。

ドコモ 2017年度の業績は、スマートライフ領域が支えた形になる
ドコモ dポイントクラブの会員数は6560万を突破した

 ただ、dポイントを使える店舗が少ないと、ポイントプログラムそのものの魅力が高まらない。ドコモでは2020年までに300社以上の加盟企業獲得を目指すが、これを達成できるかは1つの鍵になりそうだ。dポイントの利用を促進するためには、d払いなどの決済手段を充実させる必要もある。ユーザー側には、「dポイントといえばドコモ契約者のもの」という意識が残っているため、この意識を変えるためのプロモーションを強化することも必要になりそうだ。

ドコモ ドコモは、2020年度までに300社以上の加盟企業獲得を目指す
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