大手キャリアが相次いで値下げする中、前倒しで対抗策を打ち出さざるをえなくなったのがMVNOだ。1月から4月にかけ、主要MVNO各社は新料金プランを導入。卸価格や接続料の値下げを料金プランに反映させ、MVNOが得意とする低容量、低価格帯の料金をさらに値下げした。例えば、IIJが展開するIIJmioは4月に2GBで858円からの「ギガプラン」を導入。NTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEは、20GB、30GBコースの新規申し込みを終了させつつ、データ容量の区分はそのままに料金を引き下げた。
OCN モバイル ONEと同様、NUROモバイルも低容量帯に料金プランを絞った「バリュープラス」を導入。最も安い3GBプランは、音声通話付きで792円と、大手キャリアのオンライン専用プランを下回る価格が好評を博した。大手キャリアが音声接続を導入したり、卸価格の基本料を見直したりした結果、MVNO各社の新料金プランは音声通話対応のプランが大幅に安くなった。また、音声接続を使った、自動プレフィックス機能が登場し、30秒あたりの通話料を11円に値下げする会社も増えている。
さらなる料金値下げでMNOに対抗したMVNOだが、その生存領域は以前より狭まりつつある。MVNOが主戦場としている3GB前後の料金プランの金額差が、以前より縮まっているからだ。MNOでも、サブブランドやオンライン専用プランを選べば、1000円以下で3GBプランを契約できるようになった。価格差が数百円であれば、あえて通信品質に波があるMVNOを選ぶ人は限られてくる。実際、総務省が12月に公表したデータを見ると、MVNOの契約者数は2021年に入ってから、緩やかに減少していることが分かる。
このデータのMVNOには新規申し込みを終了し、ユーザー数が増えることがない楽天モバイルやLINEモバイルも含まれる。そのため、新料金プランを導入したMVNO各社が苦戦しているわけではない点には注意が必要だ。IIJmioやOCN モバイル ONEは、前期比で着実にシェアを伸ばしている。オプテージのmineoも、シェアは横ばいだ。一方で、大手キャリア間でのブランド変更の手数料が無料になり、MNPの手続きも不要になった。他社からユーザーを獲得するのが、以前にも増して難しくなっているといえる。
とはいえ、新料金プランを導入した大手キャリアも“無傷”では済まない。半ば官製値下げといえる料金改定を一気に推し進めた結果、通信料収入は減少し始めている。状況を打開するには、非通信事業の強化とともに、よりデータ通信を使ってもらう工夫が必要になるはずだ。例えば、5Gに切り替えたユーザーは、データ使用量が増えるため、上位のプランを契約する傾向が強くなる。端末の大半は5G対応になっているものの、契約数は9月末時点で3000万弱にとどまる。残りのユーザーをいかに5Gへ引き上げていくかは、2022年以降の課題になりそうだ。
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