何年もの時間をかけて、各メーカーがプリントエンジンやインクカートリッジ、純正写真用紙などを進化させてきたため、昨今ではエントリークラスの複合機でも十分な品質で写真印刷が行える。しかし、使用するインクの種類や色数、プリントエンジンの仕様、ドライバのチューニング、純正用紙が異なる以上、メーカー間で画質の傾向は異なる。また、同じインクシステムを採用しても、ラインアップの上位と下位では画作りを変えている場合も少なくない。もちろん、画質の違いはカラーコピーやスキャンにも存在する。スペック表では分からない製品間の画質差を知ることは、複合機を選ぶうえで有益だろう。
そこで最終回は、この冬注目の複合機を8モデル集め、同一環境で写真プリント、普通紙カラーコピー、反射原稿/フィルムスキャンの画質を比較した。使用したモデルは以下の通りで、予算5万円/ハイエンドクラス、予算4万円/ミドルハイクラス、予算3万円/ミドルレンジクラスの3つに大別できる。各製品の概要は第2回、搭載する機能の比較は第3回、プリント/コピー/スキャン速度の比較は第4回を参照してほしい。
本特集で検証する複合機 | ||||
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モデル名 | メーカー | インク構成 | スキャナ | 量販店での実売価格 |
予算5万円/ハイエンドクラス | ||||
Colorio PM-A970 | エプソン | 染料6色 | 4800dpi CCD | 5万円前後 |
PIXUS MP960 | キヤノン | 染料6色+顔料Bk | 4800dpi CCD | 4万5000円前後 |
予算4万円/ミドルハイクラス | ||||
Colorio PM-A920 | エプソン | 染料6色 | 3200dpi CCD | 3万8000円前後 |
PIXUS MP810 | キヤノン | 染料4色+顔料Bk | 4800dpi CCD | 3万7000円前後 |
HP Photosmart C7180 All-in-One | 日本HP | 染料6色 | 4800dpi CCD | 3万5000円前後 |
予算3万円/ミドルレンジクラス | ||||
Colorio PM-A820 | エプソン | 染料6色 | 1200dpi CCD | 2万8000円前後 |
PIXUS MP600 | キヤノン | 染料4色+顔料Bk | 2400dpi CCD | 2万8000円前後 |
HP Photosmart C5180 All-in-One | 日本HP | 染料6色 | 2400dpi CCD | 2万5000円前後 |
各テストについては、PC環境のプリンタドライバとスキャナドライバ、PCを接続しないダイレクト印刷とスタンドアロンコピーのいずれも色に関する設定をすべてデフォルトに設定した。そのほかの環境については、各項目で説明する。
以下に各モデルで印刷したサンプルを掲載しているが、これらは印刷したサンプルをスキャナで取り込みPNGファイルに変換したものだ。カラースペースがsRGBの環境で見た目の傾向が最も近くなるが、表示される画像は実際の印刷サンプルよりも色域が狭くなっている(実際の印刷サンプルはより鮮やかな発色になる)ため、色再現は正確ではない点に注意してほしい。また、表示するPC環境の違いによって画像の見た目が大きく変化することからも、掲載した印刷サンプル画像はあくまで各モデルの傾向の違いを見るための参考であり、評価はキャプションを確認してほしい。実際の印刷品質は、店頭でチェックすることをおすすめする。
まずは家庭での写真印刷で最も多く利用されている、光沢紙のL判印刷を比較した。印刷サンプルに用いた用紙は、すべてメーカー純正の最高品質メディアだ。エプソンのPM-A970とPM-A920は「写真用紙クリスピア」、キヤノンのMP960とMP810、MP600は「プロフェッショナルフォトペーパー」、日本HPのC7180とC5180は「アドバンスフォト用紙」を使用している。
C7180とC5180のプリントエンジンはアドバンスフォト用紙に最適化されているが、日本HPの純正写真用紙には色域が広く対光性100年以上をうたう「プレミアムプラスフォト用紙」も用意されている。プレミアムプラスフォト用紙は速乾性でアドバンスフォト用紙に劣り、使用時は印刷速度が低下するものの、印刷時の発色などが異なるため、参考までに掲載した。テスト画像はPC環境のAdobe Photoshop CS2で開き、各プリンタドライバの最高品質設定で出力している。
以下は印刷サンプル(印刷サイズは幅56×高さ85ミリ)を1200dpiでスキャンした画像の縮小表示だ。各画像をクリックすると、1200dpiでスキャンした画像データの一部が実寸表示される。各画像サイズは1280×1024ドットと大きいので注意してほしい。実際は虫眼鏡を使っても、これほど大きく見えることはないが、細部の描写の違いが分かるため掲載した。誤解のないように断っておくが、印刷サンプルを実寸でみた場合、もちろんドットがこのように目立つことはまったくない。
各モデルの普通紙カラーコピーにおける画質を比較した。カラーコピーの原稿は、PM-A970の最高品質設定で写真用紙クリスピアに出力したもの。各モデルの画質設定は、最も利用頻度が高いと思われるデフォルトの状態だ。以下はカラーコピーの印刷サンプル(印刷サイズは幅56×高さ85ミリ)を600dpiでスキャンした画像の縮小表示となる。各画像をクリックすると、600dpiでスキャンした画像の一部が1280×1024ドットで実寸表示される仕組みだ。L判写真のサンプルと同様、印刷サンプルを実寸でみた場合、ドットがこのように目立つことはない。
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