SetPointはロジクールの各種マウスで利用可能なマウス設定ユーティリティだ。MX Airの場合は単なるボタンへの機能割り当て以外にも、MX Airならではの設定項目が並ぶ。その1つがジェスチャー機能だ。空中でのマウスの動きにあわせて、(ボタンを押しながら)さまざまなショートカット操作が行える。例えば再生・一時停止ボタンを押しながらMX Airを右回転/左回転させると、次/前のトラックへ移動という操作になり、VOLボタンを押しながら上下/左右に振ることで音量調節も行える。
そのほか、空中と机上でポインタの速度を別個に指定することができる。空中でのポインタの速度とは、要するにどれくらいの角度で画面の端から端まで移動できるか、というものなのであまり遅くしないほうがいい。空中では切り返しができないため、マウスを手中でくるくる回すか、あるいはBACKボタンなどに「エアカーソルの固定」機能を割り当てて作為的に切り返しを行わなければ移動できなくなる場合もある(こうなるとかなりうっとうしい)。
また、スクロールパネルの設定もここから行うことができる。慣性スクロールの技術はSmartShiftと銘打たれているが、これはMX Revolutionのプレシジョンスクロールホイールで採用された、フリースピンとクリック・トゥ・クリックの切り替え機能のことだ。MX Airではサウンドフィードバックによって擬似的にクリック感を出しながら、同時に慣性スクロールも実現している。
MX Airの価格はマウスとしては相当高価だ。「diNovo Edge」と一緒に買いそろえる、という人は別として、やはり一般ユーザだと簡単には手が出せないだろう。会社で業務用として購入する場合には、プレゼンなどでの効果が期待できるが、個人だとそれも難しい。そして、机上での利用がメインであれば、操作感はやはり“革命マウス”ことMX Revolutionのほうが上だ。
しかし、空中モードでの利用が見えている場合、例えばリビングなどで大画面TVに10フィートUIを映して利用するだとか、普段からメディアセンターを利用しているがリモコンよりもマウスのほうが使いやすいと考える人――「空中マウスがあれば便利なのに」と想像したことがある人にとっては、MX Airは待望の製品と言える。
というのも、モノがよいのは確かだからだ。ロジクールのハイエンド製品に共通する特徴ではあるが、MX Airにも当然ながら所有することで喜びを感じさせる品格というものが備わっている。最後に購入欲を後押しするのは、やはり高品位なデザインであり、作りである。MX Airに興味を持った人は、価格のことはひとまず置いておき、下に掲載した写真で美しいデザインを味わってほしい。
はたしてMX Airの空中モードが今後のラインアップにどう展開されていくのか。いままでのマウスの技術進化は、比較的系統立てて見ることができる。ボールの機械式から専用マウスパッドを必要としない光学式への移行。コードレス、ホイール、チルトホイールなど、後続の機種に引き継がれ、そしてベンダーを越えて標準になっていく機能。長時間の使用でもストレスを生まないデザイン。プレシジョンスクロールホイールやレーザーセンサなど、ハイエンドの製品から始まり、次第に普及していく技術。もちろんその影には、1代限りで消えていったものもある。
プレシジョンスクロールホイールは、自動切り替えを削ることでミドルレンジの製品への搭載を可能にしたが、コストのかかるMEMSセンサによって実現したMX Airのギミックは、現状では大きくコストを削れる部分が見当たらない。しばらくは孤高の高級機というポジションに収まることになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.