アイ・オー・データ機器とトーメンデバイスは、合弁会社「ITGマーケティング」を2012年3月に設立した。出資比率はアイ・オーが61.11%、トーメンデバイスが38.89%となる。アイ・オーはいわずとしれた総合周辺機器メーカー、トーメンデバイスはSamsungの電子製品を扱う専門商社だ。新会社のITGマーケティングはSamsung製SSDの代理店として、量販店やPCショップで全国的に拡販していくという。
SamsungのSSDといえば、OEMではメジャーな存在だ。SSDというパーツが一般に認知される以前の黎明(れいめい)期から、ソニーやアップルなどのモバイルノートPCなどに多く採用され続けており、性能のよさ、信頼性の高さともに定評がある。
これまでに秋葉原などのPCショップでは、独自のルートで仕入れた並行輸入品が店頭に並ぶこともあったが、その場合はショップ保証のみとなり、保証期間も1カ月程度(ショップによって異なる)と短いことが多い。ITGマーケティングの設立により、従来より幅広いショップで正規代理店取り扱いのSamsung製SSDが入手でき、3年間の長期保証と国内サポートが受けられるようになるのは朗報だ。
今回はSamsungの現行モデル「SSD830シリーズ」のリテールパッケージを入手できたので、性能を検証していこう。テストしたのは「ベーシックキット」(後述)の256Gバイトモデル「MZ-7PC256B/IT」(実売価格は3万0800前後の見込み)だ。
SSD830シリーズは、自社製のトリプルコアコントローラ「MCX」と、自社製のNAND型フラッシュメモリを搭載したSamsungならではの製品だ。2.5インチ、厚さ7ミリのスリムなフォームファクタを採用している。最近は7ミリ厚のSSDしか搭載できない薄型ノートPCもいくつか出てきており、そういったノートPCにも使えるのはありがたい。
一方、9ミリ厚のSSD/HDDを搭載する前提で設計されたノートPCにキッチリ固定するにはスペーサーが必要になるわけだが、間に緩衝材などを挟んでもいいし、後述の「ノートパソコン(ラップトップ)用キット」にはスペーサーも付属する。

内蔵型SSDながら、非常に凝ったデザインを採用。表面にはヘアライン加工のアルミを使用しており、SAMSUNGのロゴや容量のロゴも美しい仕上がりだ(写真=左)。背面はネジ穴だけがあるシンプルなデザインだ(写真=右)
ARM9ベースのトリプルコアによる自社製コントローラ「MCX」と、20ナノメートルプロセスルールで製造されたトグルDDR NANDフラッシュチップ、キャッシュはDDR2で256Mバイトメモリを搭載する(写真=左)。基板は片面実装で、裏面にチップなどはない(写真=右)

サイズは69.85(幅)×100(奥行き)×7(高さ)ミリ、重量は約62.5グラム。7ミリ厚と薄いボディを採用する(写真=左)。インタフェースはSerial ATA 6Gbpsだ(写真=中央)。カバーはネジではなく、ツメでガッシリ固定されていた(写真=右)詳細なスペックは表にまとめた。今回評価する256Gバイトモデルについては、「Intel 520」(240Gバイトモデル)、「PLEXTOR M3P」(256バイトモデル)との比較表も掲載した。
Intel 520などが搭載するSandForceコントローラ(SF-2281)はデータを圧縮して記録する仕組みを採用しているため、圧縮データ(コントローラで圧縮が可能なデータ)と非圧縮データ(コントローラで圧縮ができないデータ)で転送速度に大きな差がある。一方、SSD830のSamsung製コントローラはそのような仕組みではないため、データの種類を問わず高速な転送が可能だ。
スペックはあくまでも公称値だが、非圧縮データに関しては、シーケンシャル読み出しで520Mバイト/秒、シーケンシャル書き込みで400Mバイト/秒(250Gバイトモデル以上)と、現行の最速クラスといっていい。ランダムのIOPS(1秒あたりに処理できるリード/ライトのアクセス数)では、読み出しは最も高速だが、3台の中では書き込みが劣る。
なお、保証期間は3年間と3台の中では短いが、IntelやPLEXTORの製品もこの前世代までは3年だった。正規代理店扱いのSSDとして、水準以上の信頼性を満たしているといえる。
| Samsung SSD830シリーズのスペック | ||||
|---|---|---|---|---|
| 容量 | 64Gバイト | 128Gバイト | 256Gバイト | 512Gバイト |
| インタフェース | Serial ATA 6Gbps | |||
| シーケンシャル読み出し最大 | 520Mバイト/秒 | |||
| シーケンシャル書き込み最大 | 160Mバイト/秒 | 320Mバイト/秒 | 400Mバイト/秒 | |
| 4Kバイトランダム読み出しIOPS最大 | 75000IOPS | 80000IOPS | ||
| 4Kバイトランダム書き込みIOPS最大 | 16000IOPS | 30000IOPS | 36000IOPS | |
| 質量 | 61グラム | 62.5グラム | ||
| 外形寸法 | 69.85(幅)×100(奥行き)×7(高さ)ミリ | |||
| 平均故障間隔(MTBF) | 150万時間 | |||
| 動作時消費電力 | 0.127ワット | |||
| アイドル時消費電力 | 0.078ワット | |||
| 保証期間 | 3年間 | |||
| Intel 520、PLEXTOR M3Pとの比較 | |||
|---|---|---|---|
| 製品名 | Samsung SSD830(MZ-7PC256B/IT) | PLEXTOR M3P(PX-256M3P) | Intel 520(SSDSC2CW240A3) |
| 容量 | 256Gバイト | 256Gバイト | 240Gバイト |
| インタフェース | Serial ATA 6Gbps | ||
| シーケンシャル読み出し最大(圧縮有効) | − | − | 550Mバイト/秒 |
| シーケンシャル書き込み最大(圧縮有効) | − | − | 550Mバイト/秒 |
| シーケンシャル読み出し最大(非圧縮) | 520Mバイト/秒 | 540Mバイト/秒 | 550Mバイト/秒 |
| シーケンシャル書き込み最大(非圧縮) | 400Mバイト/秒 | 420Mバイト/秒 | 235Mバイト/秒 |
| 4Kバイトランダム読み出しIOPS最大 | 80000IOPS | 75000IOPS | 50000IOPS |
| 4Kバイトランダム書き込みIOPS最大 | 36000IOPS | 68000IOPS | 60000IOPS |
| 平均故障間隔(MTBF) | 150万時間 | 150万時間 | 120万時間 |
| 動作時消費電力 | 0.127ワット | 2.8ワット | 0.85ワット |
| アイドル時消費電力 | 0.078ワット | 0.7ワット | 0.6ワット |
| 保証期間 | 3年間 | 5年間 | 5年間 |
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