Serial ATA 6Gbps転送に初めて対応した従来モデルのIntel SSD 510シリーズは、動作の安定性とWindows XP環境でTrimコマンドを発行可能な「Intel Solid-State Drive Toolbox」などの充実したソフトウェア環境により、登場から1年経った今も人気が高いが、データの書き込み性能などで競合SSDに見劣りする面が出てきた。
今回登場した「Intel SSD 520」シリーズは、Serial ATA 6Gbps転送はそのままに、Intel SSD 510シリーズの問題点を解消したモデルだ。インテルが示す性能指標には、従来のIntel SSD 510(容量250Gバイト)では、シーケンシャルリードが500Mバイト/秒であったのに対し、Intel SSD 520では550Mバイト/秒と向上した。
| 製品名 | SSD 520シリーズ | SSD 510 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 容量 | 60Gバイト | 120Gバイト | 180Gバイト | 240Gバイト | 480Gバイト | 250Gバイト |
| インタフェース | Serial ATA 6Gbps (Serial ATA 3Gbps接続時) | |||||
| シーケンシャルリード圧縮有効最大(Mバイト/秒) | 550(280) | 500(256) | ||||
| シーケンシャルライト圧縮有効最大(Mバイト/秒) | 475(245) | 500(260) | 520(260) | 520(260) | 520(260) | 315(240) |
| シーケンシャルリード非圧縮データ時(Mバイト/秒) | 430 | 550 | 550 | 550 | 550 | ― |
| ラシーケンシャルイト非圧縮データ時(Mバイト/秒) | 80 | 150 | 170 | 235 | 275 | ― |
| 4KBランダムIOPSリード | 15000 | 25000 | 50000 | 50000 | 50000 | 20000 |
| 4KBランダムIOPSライト | 23000 | 40000 | 60000 | 60000 | 42000 | 8000 |
| フラッシュコンポーネント | MLC | |||||
| 本体サイズ | 2.5インチ | |||||
| 平均故障間隔 | 120万時間 | |||||
| フラッシュメモリ製造プロセス | 25ナノメートル | 25ナノメートル | 25ナノメートル | 25ナノメートル | 25ナノメートル | 34ナノメートル |
| 動作時消費電力 (mW5) | 850 | 380 | ||||
| アイドル時消費電力 (mW5) | 600 | 100 | ||||
Intel SSD 520でも、60Gバイト、120Gバイト、180Gバイト、240Gバイト、480Gバイトと価格的に購入しやすい小容量モデルからデータ保存にも使える大容量モデルまでそろえている。Intel SSD 520ではすべての容量モデルで550Mバイト/秒のシーケンシャルリードが出せる点も特徴だ。シーケンシャルライト速度はデバイスの容量によって異なり、最小容量となる60Gバイトモデルで475Mバイト/秒である一方で、180Gバイトモデル以上では520Mバイト/秒という高い性能を確保していた。ただ、Intel SSD 520では消費電力が増えているので、消費電力が気になるモバイルノートPCの換装用に使用する場合は気を付けたい。
SSDの性能は、実装するフラッシュメモリやキャッシュメモリの容量より、搭載するコントローラによって定まる傾向にある。コントローラは実装するフラッシュメモリの特定部分に書き込みや消去が集中しないようにするためのウェアレベリングや必要なデータの再配置などを行い、データ消去などの効率を高めることで長期使用によるデータ速度低下を抑えるガーベージコレクションなどもコントローラ側で行っている。
Intel SSD 520シリーズでは、このコントローラにSandForceの「SF-2281VB1-SDC」を採用した。SF-2281はすでにほかのSSDでも採用実績のあるコントローラで、大きなデータ予備領域を持ち、データ圧縮機能を使用してデータ処理の効率化を行うことで性能の向上や実装するフラッシュメモリ上への書き込み数を減少させることで、SSD寿命の向上が図られているなどの機能を持つ。Intel SSD 520シリーズでは、SF-2281VB1-SDCをベースにインテル側でファームウェアに改良を行ったものを用意しており、法人ユーザー向けの機能として256ビットのAES暗号化機能なども備えている。
Intel SSD 520シリーズで最も大きな変化といえるのは、「4KバイトランダムIOPS」性能の向上にある。これはSSDの実質的な体感速度に大きく影響する指標だ。
1秒間に行なわれる4Kバイトサイズのファイルデータの読み出しと書き込みの回数を表わす4Kバイトランダムリードでは容量ごとに読み書きの速度差があり、最小容量の60Gバイトモデルで1万5000IOPS、180Gバイト以上のモデルでは5万IOPSとなっている。4Kバイトランダムライトでは最小容量の60Gバイトモデルでは2万3000IOPS、最も性能が高い180Gバイトモデルと240Gバイトモデルでは平均値6万IOPSとなっている。なお、480Gバイトモデルではやや数字が落ちて、平均値4万2000IOPSだ。
Intel SSD 510では4Kバイトランダムリードで最大2万IOPS、4Kバイトランダムライトでは最大8000IOPSであったことから、大幅に向上していることが分かる。
Intel SSD 520シリーズのデータシートには、転送速度に圧縮有効時と非圧縮時の2種類が記載されている。これは、コントローラー側のデータ圧縮機能により、データの種類によって書き込み性能の差が出やすいからだ。最大値はこの圧縮機能がもっとも効率よく機能した場合の数値となる。インテルによると、こうした最大値が出やすいのはExcel、Wordなどのドキュメント類、Webブラウザなどで閲覧などで、すでにエンコードされて圧縮率の高いインターネット上にある動画ファイルなどではほとんど効果がないとしている。通常の圧縮ソフトでも効果の出やすいファイルと同じ傾向になっている。


Intel SSD 510とは異なり、Intel SSD 520は外周部に黒いフレームが取り付けられている。本体部分の厚みは約7ミリ、黒いプラスチックスペーサーが約2.5ミリとなるが、従来と同様、フレーム部分を外して7ミリ厚のまま使うためのネジは付属しない。なお、フレームを外した時点でメーカー保証外となる(写真=左)。テスト用に用意したのはパッケージに挿入されたリテール版だ。SSD本体以外に、3.5インチドライブベイに取り付けるためのマウンタやSerial ATAケーブル、ペリフェラル4ピン電源変換コネクタが付属する(写真=中央)。カバーの内部をみると、カバーを使ってコントローラを冷却できるように、コントローラと当たる部分に熱伝導シートを貼っている(写真=右)

基板の表側(写真=左)と裏側(写真=中央)を確認する。実装するフラッシュメモリは25ナノメートルプロセスルールで製造したIntel「29F16B08CCME2」で1枚につき16Gバイト分の容量がある。裏表合わせると16枚あるため、単純計算では合計256Gバイトとなるが、コントローラが予備領域を多めに取るタイプであるため、実際に使用可能な容量は240Gバイトとなっている。そのコントローラは、SandForceブランドの「SF-2281VB1-SDC」だ。データ圧縮機能を備えることで、性能向上とSSDの寿命の向上の両立を図る(写真=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.