ナナオは、疲れ目抑制に注力した液晶ディスプレイ5機種を発表したことに伴い、報道関係者向けに液晶ディスプレイの技術セミナーを開催した。「パソコン画面と疲れ目の最新事情」と題し、液晶ディスプレイの画面表示と疲れ目の関係について、独自調査の結果をまとめた内容だ。
今回ナナオが調査したのは以下の3つ。
これらの解説は同社企画部 商品技術課 課長の森脇浩史氏が行った。
まずはLED照明器具やLEDバックライト内蔵テレビ/ディスプレイの普及によって、LEDの光を見ることが増えてきた現状を背景に、PCディスプレイの「LEDバックライトと疲れ目の関係」について語られた。
現在、照明器具やディスプレイのバックライトには代表的な2つの調光(明るさの制御)方式がある。1つは液晶ディスプレイのCCFL/LEDバックライトや減光タイプの蛍光灯に用いられる「PWM調光」、もう1つは従来の白熱電球に用いられる「DC調光」だ。
PWM調光は発光素子の点滅時間を制御することで、見た目の明るさを制御する。点滅時間の制御は通常、人間が知覚できないように200Hz程度の高い周波数で動作させており、発光素子のオン時間を長くして、オフ時間を短くすると明るく、オン時間を短くして、オン時間を長くすると暗く見える仕組みだ。
メリットとしては、調光範囲が広いことと、デジタル処理のため設計と制御が容易なことが挙げられる。その一方で、人によっては点滅によるちらつき(フリッカー)を感じるデメリットがある。
PWM調光のフリッカーが感じられるかどうかは個人差が大きく、多くの人が知覚できないが、ナナオとしては輝度が低くなるほど、PWMの波形が細く(オン時間が短く)なり、連続して点滅しているように見えるからではないか、と分析している。
また、CCFL(蛍光管)のPWM調光は残光時間が長い(オフにしてもすぐに光が消えない)ため、明るさの時間的な変化が少ないのに対して、LEDのPWM調光は残光時間が短い(オフにするとすぐに光が消える)ため、明るさの時間的な変化が大きいことから、LEDではフリッカーが感じられるのではないか、との考察を述べた。
DC調光は素子に流す電流の増減によって、明るさを制御する。電流が多いと明るく、少ないと暗く見える仕組みだ。
メリットとしては、LED素子に用いた場合、光の点滅が原理上起こらないため、ちらつきを感じないことが挙げられる。デメリットは、回路構成が複雑になること、回路および素子の性能上、あまり低い輝度に設定できないこと、そして低輝度での色再現性にも難があることだ。
実際にPWM調光とDC調光のLEDバックライトで疲れ目にどのような影響の違いがあるのか、北里大学医療衛生学部が10人(10眼)で試験したところ、測定機器によるCFF(フリッカー値)、眼球球面収差、眼屈折度、調節近点、調節微動解析の結果は数値上有意差が見られなかった。ただし、被験者のアンケート結果では、DC調光方式のほうがちらつきが気にならず、疲労を感じにくい傾向にあった。
それぞれに一長一短があるPWM調光とDC調光だが、ナナオはLEDバックライトのちらつきを抑えるため、2012年8月7日に発表した5機種の液晶ディスプレイにおいて、この2つを組み合わせた独自のハイブリッド調光方式である「EyeCare調光方式」を初めて採用した。
EyeCare調光方式では、高輝度時にDC調光でフリッカーを抑え、低輝度時にPWM調光で色再現性や表示安定性を維持しつつ、約1カンデラ/平方メートルの低輝度も実現する。2つの調光方式の切り替えは自動で行われ、ユーザーが意識することはない。
低輝度時のPWM調光では当然点滅によって明るさを制御するが、高輝度時にDC調光を採用したことで、PWM調光でのピークの明るさを下げることができ、従来機種より明滅の輝度差が小さくなっていることから、フリッカーが抑えられていると森脇氏は説明する。
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