「Xperia Tablet S」徹底検証(前編)――Sony Tabletからの進化を見極めるブランド一新、中身はどうだ?(2/5 ページ)

» 2012年09月04日 11時15分 公開

充電とUSB接続、ディスプレイ出力も兼ねた「マルチポート」を用意

 デザインの刷新に伴い、本体装備の端子類にも変更が見られる。

 電源供給用には「マルチポート」と呼ばれる新しい独自端子を下面(横位置で本体を見た場合)に用意した。これを利用して、PCとのUSB接続(タブレットがクライアントとして動作)、USB機器との接続(タブレットがホストとして、マウスなどを接続して動作)、およびHDMI経由でのディスプレイ出力(オプションケーブルが必要)が行なえる仕組みだ。マルチポートの採用に伴い、従来機が備えていたUSBポートは省かれている。

 そのほかには、左側面の奥にSDメモリーカードスロット(SDHC UHS-I対応)と、ヘッドフォン/マイク共用端子を備えている。操作ボタンについては、右側面に電源ボタンとボリューム調整ボタン(上下一体型)が並ぶ。従来機での意見をもとに、これらの押しやすさも改善したという。

 カメラ機能は液晶側に約100万画素のフロントカメラ、背面側に約800万画素のリアカメラを搭載する。リアカメラの撮像素子には高感度特性がよく、暗部でもノイズの少ない写真が撮れる裏面照射型CMOSセンサーを採用している。

前面に約100万画素のカメラ(写真=左)、背面に裏面照射型CMOSセンサーが備わった約800万画素のカメラを内蔵する(写真=右)

横位置の状態で、下面にはステレオスピーカーとカバーが装着されたマルチポートを搭載する(写真=左)。上面には何もないように見えるが、赤外線リモコン機能の受光部が内蔵されている(写真=右)

左側面にはマイク入力/ヘッドフォン出力共用端子と、カバーの奥にSDメモリーカードスロットを備える(写真=左)。右側面には電源と音量のボタンが並んでいる(写真=中央)

 ちなみに、マルチポートのカバーは着脱式で、マルチポートの利用時には完全に外してしまうタイプとなっている。このタイプはなくしてしまう不安があるが、ゴムなどでつなげていても別のカバーやプロテクター類を使うときに邪魔になるし、機械式のドアなどでは破損や水漏れの可能性が高くなるだろう。防滴設計を考えると、仕方がない部分かもしれない。

マルチポートのカバーは着脱式だ(写真=左)。オプションのクレードルには、マルチポートに差す充電用コネクタが付属しており、標準のマルチポートカバーと差し替えることで、クレードルに本体を置くだけでの充電が可能になる。SDメモリーカードスロットには、防滴仕様のカバーが装着されている(写真=右)

バッテリー駆動時間を大きく延長し、ACアダプタは小型化

Xperia Tablet Sの内部構造。非常に薄型のバッテリーを中央に大きく配置し、上部に基板類、下部にスピーカーを内蔵している

 内蔵バッテリーの容量は、従来の5000mAhに対し、6000mAhに増量されている。

 公称の駆動時間は、ビデオ再生時で約12時間、Wi-Fi Web閲覧時で約10時間、スタンバイ時で約1050時間だ。バッテリーの増量に加えて、各部で省電力に配慮して設計したそうで、それぞれ従来機より約6時間、約3.8時間、約620時間も駆動時間が延びている。薄型化と軽量化を果たしつつ、スタミナを大きく強化している点は特筆したい。バッテリーの充電時間は約5.5時間だ。

 付属のACアダプタも新しくなり、コンパクトなACプラグ一体型タイプとなった。実測でのサイズは70(幅)×35(奥行き)×33(高さ)ミリ、重量はACアダプタのみで50グラム、着脱できるDCケーブルも加えた場合で76グラムだ。ACアダプタはコンセントに差し込むプラグ部分を折り畳めることもあり、持ち運びはしやすい。

 マルチポートに接続するDCケーブルはUSBコネクタ型を採用しており、このDCケーブルでPCとのデータ接続も行なえる。ACアダプタの出力仕様は0.5ボルト/1.5アンペアとなっており、給電能力が強化されているUSBポートを搭載したPCであれば、バスパワーによる充電も可能だ。

 一般的な仕様のUSBポート(2.0で0.5アンペア、3.0で0.9アンペア)では、公式に充電できないとされている(接続しても「充電中」とは表示されない)が、実はゆっくりとではあるものの、充電は行われるという。

付属のACアダプタはコンパクトで、マルチポートからUSBへの変換ケーブルを分離して利用できる(写真=左)。Xperia Tablet S(左)とSony Tablet S(右)のACアダプタ比較(写真=右)。ACアダプタも大幅に小型化しているのが分かる

徹底したこだわりを感じる液晶ディスプレイと操作感

1280×800ドット表示の9.4型ワイド液晶ディスプレイは、IPS方式を採用するほか、オプティコントラストパネルによってコントラストを高めている

 画面の見やすさも向上した。液晶ディスプレイは広視野角のIPSパネルを採用しており、サイズは9.4型ワイド、画面解像度は1280×800ドット(アスペクト比16:10)だ。ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」でも使われている「オプティコントラストパネル」を採用している。通常、空気層となっている液晶パネルとガラスの間にクリアな樹脂を流し込み、空気層をなくすことで外光の反射を抑え、暗いシーンでの白ぼやけを防ぎ、深く美しい黒色を表現できるという。

 この仕様は従来機と同じだが、間に挟む樹脂やLEDの点灯制御の最適化など、細かい改良がなされているという。また、輝度は約380カンデラ/平方メートルと、従来より30カンデラ/平方メートル程度明るくしており、写真や動画だけでなく、通常の操作画面でも見た目の印象がよくなった。この点は、後述する表面ガラスの飛散防止フィルムを取り除いた効果もあるのだろう。

 ちなみに、液晶ディスプレイの解像度を引き上げなかった理由としては、本体の薄さや軽さ、バッテリー駆動時間を優先したためで、フルHDクラスの液晶パネルを搭載すると、厚みが出てしまい、駆動時間も10時間を切ってしまうことから、今回は解像度を維持する選択をしたとのこと。この部分はトレードオフとなる。

液晶ディスプレイのモジュール。タッチセンサーのチップを2つ搭載し、飛散防止フィルムを省いて、表面に防指紋/低摩擦コーティングを施している

 静電容量式のタッチパネルを改良することで、タッチ操作の感度を向上しているのも見逃せない。タッチセンサーのチップを2つ搭載し、精度を高めている。また、ガラスの強度を上げることにより、飛散防止フィルム(万が一、破損した際にガラスが飛び散るのを防ぐ役割がある)を省略したほか、表面のコーティングを工夫することで、指の滑りを改善し、タブレットデバイスとしてトップクラスの低摩擦を実現したという。さらに指紋が付きにくく、指紋が付いた場合の拭き取りやすさも向上したとしている。

 操作感について、ソニーの開発者は「爪の長い女性の小指の横でなぞっても、しっかり操作できる」とアピールしているが、実際に小指の爪の横で操作して比べてみると、確かに感度のよさは実感できる。爪の横のわずかな部分でこするような動作では、従来機や他のAndroidタブレットでは反応したり、しなかったりするのだが、Xperia Tabletではほとんど確実に反応してくれる。

 もちろん、普段の利用においても、片手で本体を持って親指でスクロールさせるといったシーンなど、何気ない場面で感度のよさは操作感の違いとなって現れてくる。ちょっとした違いではあるのだが、一度これに慣れると、他の標準的なAndroidタブレットはモタモタして、操作しにくいと感じるかもしれない。

 指紋の拭き取りやすさという点も明らかに向上しており、サッと軽い力で拭き取れるようになっている。これは先代機と比べると歴然、明らかな違いが確認できた。これまで、あまり意識していなかった部分だが、これは確かに快適だ。拭き取りにくいと無意識的に構えてしまい、「後でまとめて拭き取ろう」という心理になりがちなのに対し、これくらい拭き取りやすいと、自然に拭き取る回数も増え、常にきれいにしておけそうだ。

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