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» 2013年07月31日 08時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:不採用の理由は、PCに“詳しすぎる”から……だと? (1/2)

PC周辺機器メーカーでは、あまりPCに詳しすぎる人は社員として採用しないか、より慎重に見極めるという不文律がある。人一倍の「こだわり」を持つ彼らが、現場に与える悪影響とは何か。

[牧ノブユキ,ITmedia]

詳しい人なら大歓迎、とはいかない周辺機器メーカー

 大手家電メーカーの業績不振が伝えられる中、決して好況とは言えないまでも、企業存亡の危機につながるような致命的なダメージもなく、それなりの売上を維持しているのが多くのPC周辺機器メーカーだ。

 円安がマイナスに作用しているとはいえ、もともと本体機器があっての事業ということで、予期しない事態に臨機応変に対応できる能力が備わっていることが、要因としては大きいと思われる。

 ところで、実はこうしたPC周辺機器メーカーの多くには、人員の採用にあたってよく似た1つの傾向がある。それは「あまりPCに詳しすぎる人は社員として採用しないか、採用する場合もより慎重に見極める」ということだ。

 こう書くと、早合点しがちな人は「知識がゼロに近ければ近いほど採用されやすいのか」と思ってしまいそうだが、決してそうではない。あくまで「詳しすぎるのはNG」というだけだ。実際、筆者の知る複数の人事関係者が「確かに多かれ少なかれ、その傾向はあるね」と認めている。

 自社製品のマーケットにまつわる知識が豊富であることがマイナスに作用するというのは、その結論だけを耳にすると、やや奇異に感じられる。しかしながらこの件には、PC周辺機器メーカーの関係者であれば、「それってあるある」と思い当たる、ある理由が影響している。一体どのような事情によるものだろうか。

自分の好みを品ぞろえに反映させる営業マン

 PC周辺機器のメーカーといってもその規模はピンキリだが、開発部隊が製品を企画・設計、量産を経て販売店に卸し、販売後のエンドユーザーに対するサポートも行うというのが、一般的な機能になるだろう。

 こうした機能をすべて自社でまかなっている企業もあれば、一部もしくはほとんどの機能を外注にまかせ、あくまでブランドおよび窓口としての企業名を掲げているだけの企業もある。特に昨今では、いちいち自社で企画開発するよりも、海外から仕入れた品にメーカー名を刷り込んで売ったほうが小回りが利いて売り上げにつながるケースも多く、むしろ実態としては商社に近い「自称メーカー」も少なくない。

 さて、規模や業態はさまざまなれど、こうしたメーカーでは、自社製品を販売店などを通じてユーザーに届けるにあたり、営業マンがその仲立ちとなる。彼らは基本的に店との折衝がメインになるわけだが、そこで求められるのは交渉力だ。

 製品についての知識は、まったくゼロなのは困るものの、知識がありすぎて自分の意見が入り始めると、現場ではかえってマイナスに働きかねない。商談で自分の好みを反映させたり、あるいはその知識ゆえに客のサポートを店から押し付けられて効率が悪くなるといった具合だ。

 むしろ過剰に知識があるよりも、知識がないならないで商談相手を持ち上げて教えてもらうくらいのほうが、コミュニケーション上は望ましいわけだ。繰り返すが、知識がないほうがよいというわけではない。知識が過剰にあるよりは、不足していても営業マンとしてのスキルがしっかりしていることのほうが、望ましいということだ。

 PCの知識がある人におおむね共通するのは、やたらと自分の体験で語りたがるということだ。特にコンシューマー向けの商材であれば、自分がプライベートで得た知識が、そのまま仕事で役立つケースが多いだけに、余計にその傾向が強くなる。

 そこで価値観の多様性を認めたうえで話ができれば問題ないのだが、こだわりが転じて他の価値観を否定したがる人は、なぜかこの業界には多い。下手をすると会社が売ろうとしているものを「これは私の見立てでは売れないですね」などと自己判断で売り込まなかったりと、マイナスの影響を及ぼすこともしばしばだ。

 実際のところ、こうした営業マンが受け持つような量販店で製品を買って使うのは、多くの場合は一般人に毛が生えた程度のユーザーであり、いわゆるマニアではない。しかしながら知識のある人が営業マンとして交渉の場に立つと、マニアならではの文法で販売店と接してしまうわけだ。

 むしろ、他の業界から転職してきて、PCの知識は平均以下ながら好成績を上げる、名物営業マンと呼ばれる人々は少なくない。それを支えるのは交渉力やコミュニケーション能力だったりするのだが、彼らはそうしたスキルに気を払わず、逆に製品やそれにまつわるマーケットの知識がない彼らを馬鹿にしたりする。

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