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そのデータ保存法で本当に問題ない?――自宅兼オフィスのNAS環境を見直す本田雅一流 NAS導入のススメ(前編)(2/2 ページ)

» 2013年08月28日 16時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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次期主力ストレージをどう作る?

 さて、ということで割とマジメに自宅兼オフィスである我が家のストレージシステムを考えてみることにした。再構築するにあたっては、分散していたいくつかの役割を整理したいという気持ちもある。我が家でネットワークストレージに求めるニーズは、主に以下の5つ。もちろん、ほかにもあるが、まずはこれらがきちんと動いてくれることが条件となる。

  1. アーカイブ用途
  2. データの一時保管庫
  3. メディアサーバ(DLNAサーバとLogitech Serverの両方)
  4. 出張先からのストレージへのアクセス
  5. 取引先とのストレージ共有
オーディオ機器との連携では、LINNのWindows/Mac OS X用ソフト「SONGBOX」をメディアサーバとして使いたいが……

 と、今どきのNASにはごく当たり前のニーズなのだが、実は1つだけ問題がある。(3)のメディアサーバ部分に関して、音楽機器向けには筆者がメインのオーディオシステムで使っているLINN Products社の「SONGBOX」(http://www.linn.jp/ds/manual/pdf/SONGBOX_Ver4.3.62.pdf)というサーバを使いたいのだが、このサーバはWindowsかMac OS Xでしか動作しない。

 SONGBOXはiTunesがメディアファイルを管理しているXMLファイルなどを読み込み、Genius Mixを除くプレイリストも共有できる。LINNのプレーヤーはALAC(Apple Lossless Audio Codec)もサポートしているので、PC上でSONGBOXを動かし、iTunesでNAS上のALACを管理してiPhoneなどと同期(同期時にはiTunesがAACなどに自動変換してくれる)することが可能だ。同じコンテンツをメインのオーディオシステムでもライブラリとして利用できる。

 すべてをNASに任せられればいいのだが、どうしてもPC依存が残りそうだ、ということで思案した。

・解決案その1――Mac mini+Drobo 5D

米Drobo製の大容量ストレージ「Drobo 5D」は、独自のRAID機能で手軽にHDD冗長化が行える

 我が家のサーバはかつてWindowsを使っていたが、ここ数年はかつてのPowerPC G4版「Mac mini」にOS X Serverを入れて運用していた。しかし最近はPowerPC用バイナリが存在しないミドルウェアも目立つようになってきていて、しかたなく退役寸前の「Mac Pro」をだましだまし使ってきた。そろそろグラフィクスカードが傷んできて、表示が明らかにおかしくなるのだが、サーバとしてはきちんと動いてくれるので、何とかHaswell搭載のMac miniが出るまでは……と我慢を重ねてきたのである。

 しかし、それもここでいっそ諦めてしまい、現行のMac miniの安いモデルを買ってきて、これにイージーな障害対策機能付きHDDアレイボックスの「Drobo 5D」を接続。必要なサーバ系アプリケーションは、全部OS X Serverに載っけるのもいいか? というのが一案。

 これならば、サーバは使い慣れたOS X Serverだし、パフォーマンスの面でもおそらくは間違いなかろう。ストレージの運用は、Droboの評判を見ている限りさほど問題なさそうだ。しかし、HDDを含めないベアボーンで約10万円という価格は、Mac miniを同時購入することを思えば、少々値が張ってしまう。実は結構、この構成にする方向に傾いていたのだが、そもそもOS X ServerはNAS用じゃないよね、的なことも考えると、トータルの使い勝手がどうなるかは微妙な気もする。

・解決案その2――Free BSD+VAIO X

 同業者(といっても最近は分野が異なるが)の大原雄介氏が推薦してくれたのが、Free NASを活用する方法だ。Free NASはUNIX系のフリーOSであるFree BSDをベースに、NAS専用に作り込まれたパッケージである。起動イメージをUSBに入れ、USB起動でPCをNASに仕立て上げることもできる。

 より信頼性の高いRAID Z(可変ストライプ幅でRAID 5より速度と耐障害性を向上)を使えるのも魅力と感じたが、やはり少しばかりコストはかさむ。好きな筐体、マザーボード、電源などを選べ、各パーツの入れ替えも自由に行えるなど柔軟性が高く、トラブルが起きたときに自力でなんとかなることと考えれば、少々のコスト(といっても10万ぐらいだろうか)なら許容できるが、静音性や省電力性を考え始めると、自作PC慣れしていないと難しいかもしれない。また、筐体サイズも少し大きめになりがちだ。

 メディアサーバもある程度使えるが、やはりPCとの併用は必要とも思うので、この場合は、使っていないIntel Atom搭載のノートPC「VAIO X」をネットワークにぶら下げておき、iSCSIでメディア用ストレージ部分を切り分け、メディアサーバはすべてWindowsにやらせようという魂胆である。

・解決案その3――QNAP or ASUSTOR+VAIO X

QNAPの「TS-469 Pro」。中小規模事業者向けのAtom D2700搭載NASの4ベイモデル

 それでも、やっぱりお手軽がいいなぁ、とひよった考えでたどり着いたのが、もっと評判のよいNASにすればいいんじゃないか? という結論だ。記事の冒頭で「コンシューマ向けのRAID NASは〜」とひとくくりに書いてしまったが、少々乱暴な言い方でもある。コンシューマーレベルでも十分に使いこなせる、しかし信頼性の高いNASを使えばいいじゃないか? ということで、調べてみて浮かび上がったのが「QNAP」「ASUSTOR」といったNAS専業ベンダーの製品だ(前者は独立系だが、後者はASUSTeK Computerの子会社)。

 中でもコンシューマーではなく、中小規模事業者をターゲットにしたAtom搭載モデルは、なかなか評判がいいようだ。価格も購入するショップによってまちまちだが、比較的リーズナブルだと思う。NAS専用だけにコンパクトでドライブベイの使い勝手もよく、動作音が静かという点もよさそうだ。

 このケースの場合も、NAS側では満たせないニーズに関してiSCSIを使ってVAIO Xをアプリケーションサーバに仕立て上げようと考えていた。

「QNAP」を選択した理由

 結局、採用したのは(3)の案だ。理由は簡単で、「できる、できない」は別の議論として、自分で面倒を見る部分が多いシステムは、専任の管理者がいない個人運用では避けたほうがいいと思ったからである。

 コンピュータの管理をするのが仕事だったり、あるいは大好きな趣味の一環だったり、であれば話は別だが、筆者のように単なる利用者だと、構築後に何年かしてトラブルが起きる頃には、すっかり設定した経緯やノウハウなどを忘れてしまっている。仕事ならば、きちんとドキュメント化して……となるのだろうけど、個人ベースの事務所という名の自宅なのに、そこまでの面倒はかけられない。

 また、QNAPのシステムにはMarvellのARMコアを使ったネットワーク機器向けプロセッサとAtomコアベースのネットワーク機器向けプロセッサ、両方のプラットフォームがあり、後者に関してはよりハードウェアの信頼性が高い統計結果が出ている、という事前情報を、代理店からもらっていたからだ。

 実は、より安価で機能がとても近いASUSTOR(それもそのはずで、QNAPのエンジニアがスピンアウトして生まれたブランド)も高評価だ。かなりよい印象を持ったのだが、こういう製品はやはり年月が重ねられているほうが望ましい。

 さらにもう1つ理由がある。企業向けと言いつつ、コンシューマーを強く意識した新OS QTS 4.0もAtom採用の企業向けQNAP NASで利用できるようになったため。QTS 4.0は利用開始時に企業向けと家庭向けを選択でき、標準でインストールされるパッケージなどが変化する(もちろん、あとからインストールしたり設定変更も可能だ)。

 ならば、中小とはいえ企業向けのNASを使って、パーソナルなNAS環境を作るのも面白そうだなぁ、と思ったのだ。ということで、少々ぜいたくではあるが、QNAPの「TS-469 Pro」と、NASで利用することを意識した高耐久性のSATA HDD「WD Red」シリーズ(Western Digital)を発注した。

というわけで、QNAPのTS-469 Proと、WD RedのHDDを4台入手した


 後編につづく。

・→後編:注目すべきはハードよりソフト――自宅兼オフィスのNASを一新した効果は?

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