出張の“新”必携機器「ホテルルータ」って何? 「AtermW300P」を実際に出張で活用してみた(2/2 ページ)

» 2013年12月09日 16時50分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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ホテルのWi-Fiサービスも「共有」できる

 もう1つ、本機は有線環境のほかに「無線サービスも」ルーティングできる機能がある。ホテルのインターネットサービスが無線(Wi-Fi)のみであっても、本機はルータとして機能するのだ。

photophoto 「無線サービスも」ルーティングできる。ホテルより配布されたWi-FiサービスのためのSSID・暗号キーを本機に登録すると、本機をWi-Fi中継器にして部屋では複数台のWi-Fi機器を使用できるようになる。ホテルのWi-Fiサービス以外に、SSID・暗号キー、さらにサービスIDとパスワードでの認証が必要な公衆無線LANサービス(別途契約が必要。BBモバイルポイント、Wi2が動作確認済みサービスとして初期登録されている)も登録すれば、同様に共有できるようになる。また、この機能を応用し、自宅無線LAN環境のWi-Fi電波中継器としても活用可能だ

 ホテルのインターネットサービスは、チェックイン時に(場合によっては滞在時のみ使える)Wi-Fi接続のための設定項目(SSIDとパスワード)をもらい、その項目をPCに入力して使う──という感じが一般的だ。

 ホテルルータでは、この使い始めまでの手続きを本機で行うというやり方に変える。ノートPCで認証するとそのノートPC 1台しか使えないが、ルータである本機で認証すればそのノートPCも、別にあるスマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機なども1つのインターネット接続を共有できるようになるというわけだ。

 本機での認証作業は、本機にWi-Fi接続したPC(など)のブラウザで「http://192.168.10.1」へアクセスすると開くWeb設定ツールで行う。

 「接続先設定(公衆無線LAN)」の項目から、ホテルで配布されたWi-Fi接続のための設定項目を入力する。接続先設定を開くとリストが表示されるので、その一番上の詳細設定にある「編集する」より入力が可能だ。デフォルトでは「公衆無線LANアクセスポイント」になっているため、「通常の無線LANアクセスポイント」へと切り替えて、ホテルより配布(指定)されたSSIDと暗号キー(パスワード)、そして「接続先の通称」を適当に入力すれば完了だ。

 なお、この項目は“公衆無線LAN”とあるように、街の公衆無線LANサービスへの接続も同じように共有できるのにお気づきになっただろう。公衆無線LANスポットではWi-Fi接続設定のほかに、ユーザー認証のための自身のID・パスワードの入力も必要なことが多い。日本で展開するすべての公衆無線LANサービスで使用できるわけではないのに注意したいが、ともあれその項目も一緒に登録しておけば、同じように通常は設定したPC、あるいはスマートデバイス1台しか使えない公衆無線LANサービスも所持する複数台のWi-Fiデバイスで使えるようになるというわけだ。

 動作モードには「ローカルルータ」と「ブリッジ」の2種類があるが、普段はローカルルータモードのままでよい。もし自宅や会社のネットワークにモバイルルータを接続して、そこにあるプリンタを共有したり、サーバ/NASのファイル共有を行いたい場合は、これらデバイスに接続できないことがあるのでブリッジモードに切り替えるとよい。

photo 本機は5ボルト/500mAのUSB給電で動作する。PCのUSBポート、スマートフォン・タブレット用のUSB充電器、汎用USB充電器などが使用できる

 電源はどうするか。本機は5ボルト/500mAのUSB給電で動作する仕様のため、PCのUSBポートからの給電、あるいはおそらく出張には別途持って行っているであろうスマートフォン/タブレット用のUSB充電器/モバイルバッテリーを併用できる。

 本機には専用充電器が同梱されない(USBケーブルは付属)ので初心者には少し不安かもしれないが、普段からUSB端子での充電に慣れている人であれば「それなら大丈夫」と思う。筆者としては専用充電器部分の余計な荷物が必要なくなるので、少しでも荷物を少なくしたい出張/旅行用途に導入する機器として、合理的な選択と評価したい。

ホテルルータがあると便利なシーンを考察

photo  

 では、改めてホテルルータがあると便利なシーンを考察しよう。

 1つめは「有線サービスしかない」場合。もちろん、有線のみではスマートフォンやタブレットは使えない。そして有線LAN端子のあるPCであっても、使う場所に縛られず、好きな場所で作業できるようになる。有線LAN端子を備えないノートPCには、USB−有線LAN変換アダプタなどを用意する手段もあるにはあるが、それを携帯するならホテルルータのほうが合理的だと思う。最近は無線サービスと併設していたり、あるいは逆にWi-Fiのみというホテルのほうが比率としては高くなっているが、それでも「転ばぬ先の杖」という意味で旅行バッグに忍ばせておくと助かるはずだ。

 2つめは「無線サービスはあるが、電波が弱い」場合だ。ホテルにはWi-Fiでのインターネットサービスが用意されているので安心していたが、肝心の部屋でWi-Fiの電波が弱く、満足して使えない例──が、経験上たまに、というか意外とある。Wi-Fi電波は意外と微妙で、部屋の作業机では無理だが、ドア付近に行くと大丈夫になったりする。ホテルのWi-Fi無線サービスは、廊下などにWi-Fiアクセスポイントを複数置いてフロア全体をカバーする仕組みで実現することが多い。このため、部屋の位置によってはどうしても穴になるつながりにくい場所ができてしまうことがある。

 こういった場合に「ホテルルータ」が役立つ。本体を比較的つながりやすい場所に置いておくことで「Wi-Fi電波中継器」のように活用できるようになる。USBバスパワーで動作するので、仮に電源コンセントがない/ケーブルが届かない場所ではUSBバッテリーなどを使ってもよいはずだ。

 3つめは「宿泊あたりの接続機器台数が制限されている」場合。有線サービスはたいていは1台のみ、無線Wi-Fiサービスもホテルのチェックイン時に認証のためのID/パスワードを渡され「同時に使えるのは、1人2台まで」といった制限が課せられることが多々ある。

 この点、ホテルルータにより、形としてはホテルのサービスに直接接続している1台である──という扱いでインターネット回線を共有できるわけである(ただし、ホテルサービスの提供条件によりこう使ってはならない例はあるかもしれない。この点は都度ご注意願いたい)。

 最後に「荷物にならない」こと。筆者は国内外問わず1カ月の半分は何らかで出張機会がある。最近、飛行機では持ち込み荷物のサイズや重量制限が厳しく、荷物の軽減にとても苦労している。

 大げさなようだが、スーツケース(バッグ)単体あたりで十数キロ、これを機内に持ち込むのであれば2つのバッグがトータルで12〜13キロ以内に収めないといけないことがある(特に欧州が厳しい)。筆者は、仕事上PCとカメラ類が必須であり、そんなPC機器だけでケーブル類と合わせて7〜8キロに達してしまう。これに着替えなどを合わせると余分な荷物を入れる余裕が本当にない。実際、従来より同様の機能を持つポータブルルータをすでに導入していたが、こちらはACアダプタ一体型のタイプのため少し大型で、重量は200グラムほど。最近はそんな理由で、このルータを省いてさえいた。

 この点、本機は少し大きい消しゴムほどのサイズで、重量はほぼ無視できる20グラム。USB充電器は複数ポート搭載の汎用型をスマートデバイス類の充電のためそもそも用意していたことも含め、これを本機に換えるだけで差し引きACアダプタ1つ分の重量とスペースが浮くようになる。

何より「超小型」 Wi-Fiデバイスを複数台所持する人のための「出張/旅行」必携機器

photo 出張/旅行バッグに1つ忍ばせておくと便利な「ホテルルータ」

 AtermW300Pは、何より「超小型」であることがメリットだ。携帯しておくのにほとんど苦にならず、ホテル滞在時や公衆無線LANサービスのある場所でサッと取り出してWi-Fi接続できるようになる。価格も実売3000円台前半から(Amazon調べ 2013年12月現在)と導入しやすい価格帯であり、汎用性のあるUSB給電で動作するのもとても手ごろだ。

 Wi-Fi化のメリットは言うまでもないが、所持する複数台のデバイスを、好きな場所で、好きなスタイルで作業できる利便性が得られる。有線サービスのみというホテルは最近は少なくなっているが、それ以外に“Wi-Fiはあるけど、遅いな……”という場合に役立つ「Wi-Fi中継器」としての利用もかなりアリだろう。この機能は出張時以外に、階上でWi-Fiが届きにくい……という自宅用途にも向くかもしれない。

 LTEモバイルデータ通信サービスに課せられる通信量上限を気にせず、固定回線が使える場所ではその安定性や速度を望む出張/旅行機会の多い人に向く新しい「出張必携ツール」として、出張バッグ、あるいは普段のバッグに忍ばせておいてほしい1台だ。


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