調和と美しさを追求した「OS X Yosemite」林信行から見た最新OS Xの魅力(4/4 ページ)

» 2014年10月17日 04時41分 公開
[林信行,ITmedia]
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iPhone/iPadと連携して魅力を倍増させるOS

 OS X Yosemiteで心地よさを実感できる機能といえば、やはり目玉でもある「Handoff」、つまりiPhone/iPadとのシームレスな連携だ。

 iPhoneで途中までメールを書いた後、Macを起動するとドックの端にiPhoneの絵が上書きされた「Mail」のアイコンが表示される。カーソルを合わせる「iPhoneから」の文字が現れるので、それをクリックするとすぐにMailアプリに切り替わり、さきほどまでiPhoneで作業していた新規メールの画面が現れる。

iPhoneでメールを書きかけている状態で、Macをスリープから起こすとドックにHandoffのメールアイコンが表示される。クリックするとMailが起動して、iPhoneで書きかけているメールが表示される


Safariで開いていたWebページも、ドックのHandoffアイコンをクリックするだけですぐにMacでも開ける

 この動作、WWDCのデモでは、もう少しサっと心地よく動いていた気がするが、アメリカより通信状況がいいはずの日本でも少しもたつく感じはある。とはいえ、iPhone、iPad、Macの3つのデバイスで作業を連係させられる心地よさは何事にも代えがたい。一度、この連携の心地よさにハマってしまうとHandoffに対応していないアプリは使用頻度が減ってしまいそうな気がしている。現にWebブラウザだけは、絶対にGoogle Chrome派だった筆者が、このHandoff機能のおかげでSafari利用率がかなり高くなった。

 自分のそのとき置かれた境遇にあわせてiPhone、iPad、Macという3つのデバイスを行ったり来たりする「ギア・スイッチ」を行なって、それでいて同じ作業の続きができるというのはやはりすばらしい。

 もちろん、Handoffといえば、Wi-Fiのメニューから直接、iPhoneを操作してテザリングをオンにできる機能、これもすばらしい。さらにカバンの中に入れっぱなしで出し忘れることも多くなったiPhone 6/6 Plusへの電話を、Macで受けられるというのも、ちょっと新鮮で楽しい(マイク付きヘッドフォンの利用頻度がこれまでより圧倒的に増えそうだ)。これで留守番電話もMacから確認できれば最高なのだが……。次のバージョンでは、ぜひともビジュアル・ボイス・メールに残されたメッセージを選択し再生する機能も搭載してほしい。

iPhoneが近くにある場合は、MacのWiFiメニューからiPhoneを遠隔操作してテザリング機能をオンに切り替え。iPhoneを鞄から出さずにインターネット接続ができる

iPhoneにかかってきた電話をMacで受けたり、MacからiPhone経由で電話をかけたりすることが可能に。これが使ってみると便利!マイク付きヘッドフォンが手放せなくなる

ついにiPhoneとMac間で写真などをAirDropで送受信できるようになった。ファイルを選んでメニューからAirDropを選んで、送りつける先を選ぶだけ。送りつける先が自分のデバイスの場合は、「受信しますか?」の質問なしでいきなり送信可能になったのも地味ながら便利な改良だ

MacにLightningケーブルでつないだiPhoneやiPadの画面をQuickTIme Player「新規ムービー」の映像ソースとして選べるようになった。iPhone/iPadでの操作をQuickTime Playerで録画することができ、iOS機器の使い方を教える動画マニュアル/教材づくりなどに便利

 iPhoneやiPadの利用者と比べると、まだまだMacのユーザーは少ないかもしれない。しかし、OS X Yosemiteが、iOSデバイスとここまで心地よい連携ができることを知ったら、それにひかれてパソコンもMacに買い替える人がかなり増えるのではないかと思う。ただし、そのためにはアップルが、この連携の心地よさを体験できる場なり、機会なりを作り出していかなければならないだろう。

パソコン新時代への貴重な一歩

 OS X Yosemiteは、見た目的にも、「スマートデバイス連携で、真価を発揮する」というコンセプト的にも、これまでのOS Xからかなり大きな飛躍をしている。まさに13年半のOS Xの歴史の中でも最大規模のアップグレードと呼ぶにふさわしいOSだろう。

 もちろん、こうした大きな跳躍をするときには、それなりに課題が生じることもある。だからこそ、今回はかなり長期間にわたって開発途上版(β版)を早めに公開し、ユーザーや開発者からのフィードバックを募りながらブラッシュアップを重ねてきたはずだ。ただ、それでもまだブラッシュアップが足りていない部分もあるかもしれない。技術関係の知識にあまり自信がない人は、それほどあわてずTwitterなどで回りのがインストールして問題が生じてないかなどを確認してからアップグレードをしても失うものはないはずだ。

 なお、Yosemiteでは、アプリケーションのアイコンの再デザインにあわせて「システム環境設定」のアイコンも一通り見た目が手直しされたが、こちらのデザインはアイコンによってやや方向性にバラツキがある印象がある。いい感じに暑苦しさを抜いてフラット化したアイコンもあれば(言語と地域やスポットライトなど)、Mountain Lionのアイコンから影を取っただけのアイコンもあるし(マウス、キーボード、トラックパッド)、分かりやすさが増したもの(通知、デスクトップとスクリーンセーバー)、確かにこれまでとは変わったがやや立体的で暑苦しくないか? と思わせるもの(サウンドやセキュリティーとプライバシー)などもある。

システム環境設定のアイコンも一通り新しくなっているが、少し方向性が統一されてない印象も

iOSの機能拡張解禁にあわせて、Macのシステム環境設定にも「機能拡張」という項目が追加された。MacApp Storeから、アップルがきちんと承認した安心して使える機能拡張が購入可能になる模様だ

 とはいえ、これはOS Xの新しい船出の最初の一歩。今後のアップデートで、こうした点もさらに少しずつ磨きがかかっていくことを期待したい。個人的には「機能拡張」の管理機能が「システム環境設定」に組み込まれるなど、パソコンの分かりにくい仕組みをiOSと基本デザインを共通化することによって分かりやすく(しかも、互換性やハッキングなどの問題も起きにくく)改良している点も評価したい。

 OS X Yosemiteは、スマートデバイス時代におけるパソコンのあり方を再定義する歴史的OSになるはずだ。

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