Windows 10の最新ビルド番号が跳ね上がった理由とは?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2016年01月30日 11時30分 公開

 2016年1月に入ってすぐに、旧Internet ExplorerとWindows 8のサポート終了や、Skylake(開発コード名)プロセッサ搭載PCのWindows 7/8.1サポートに関するポリシー変更など、Microsoftのにぎやかな話題が続いたが、1月後半はやや小休止になった感がある。今回はまとめとして、1月中に出てきて本連載で紹介していない新トピックを幾つかピックアップしてみた。

ビルド更新のペースが上がったWindows 10 Insider Preview

 Microsoftは1月27日(米国時間)、Windows Insider Program参加者のFast Ring設定ユーザーに対して、Windows 10開発プレビュー版である「Windows 10 Insider Preview」の最新ビルド「Build 14251」を配信した。

Build 14251 「Windows 10 Insider Preview」の最新ビルド「Build 14251」

 同社は「TH2(Build 10586)」と呼ばれるWindows 10初の大型アップデート「November Update(1511)」を2015年11月に提供して以来、「Build 11082」「Build 11099」「Build 11102」と3つのWindows 10 Insider PreviewをFast Ringで配信しており、今回のBuild 14251は4番目となる。

 Build 11102ではWebブラウザの「Edge」関連で若干の新機能が追加されているものの、基本的にはどのビルドもバグの修正や内部的な変更が中心で、一般ユーザーの目に見える進化はほとんどない。Microsoftでは現在の状況を「OneCore」戦略を実現するための調整期間と位置付けており、これまで分離していたWindows 10 Mobileなど他のプラットフォームも含めた統合作業を優先しているようだ。

Build 11102 「Build 11102」では、Webブラウザ「Edge」の戻る/進むボタンに履歴メニューを追加した。Insidersからリクエストが多かった機能で、それぞれのボタンを右クリックすると、最近表示したページを表示してジャンプできる

 さて、これまで小刻みにビルド番号を進めてきたWindows 10 Insider Previewだが、ここにきて一気に番号が11102から「14251」まで飛ぶことになった。新機能がないにも関わらず、ビルド番号が大きく進んだのはなぜだろうか。

 米Microsoftのエンジニアリングシステム担当コーポレートバイスプレジデントであるガブリエル・オウル氏によれば、下記のように「the next release(つまり“Redstone”のこと)」へ向けたコード共通化に伴い、モバイル向けのWindows 10 Mobile Insider Previewと「ビルド番号を統一すること」に決めたという。

 ここでは、モバイル向けのビルド番号のほうがPC向けのものよりも高かった(higher)ため、「11105〜11107」から「14251」まで一気に番号を引き上げる結果になったという発言に注目したい。

As part of our work getting the common codebase ready for the next release, we decided to complete that work and sync the build numbers between mobile and PC. Because the mobile codebase used higher build numbers than PC, we needed to jump ahead a bunch of build numbers to ensure updates to future builds will continue to work. So that’s why build numbers went from 11105, 11106, and 11107 to 14251.

 まず前提として説明すると、PC向けに直前まで配信されていたWindows 10 Insider Previewの最新ビルドはBuild 11102で、モバイル向けWindows 10 Insider Previewの最新版は「Build 10586.63」だった。つまり、先ほどの発言とは逆でPC向けのほうがビルド番号が進んでおり、11105〜11107というビルド番号が見当たらない。

 ちなみに、ビルド番号の小数点以下は「累積的アップデート(Cumulative Update)」による差分だ。モバイル向けもTH2ことBuild 10586を経て「Build 10586.36」となり、現在のBuild 10586.63、そして間もなく「Build 10586.71」の配信がスタートするとされている。

 ただ、これは現在既に「Lumia 950」「Lumia 950XL」「Lumia 550」などで提供されているプリインストール版のWindows 10 Mobileと同じビルド番号で、Windows 10 Insider PreviewでFast Ringとは言っても特別早く最新ビルドを先行して受け取れているわけではない。推測ではあるが、「Windows 10 Insider Previewにも配信されていない(モバイル向けの)内部ビルド番号は14000番台まで進んでいる」のかもしれない。

“Internal Ring”と“Fast Ring”の関係

 オウル氏の発言で気になる11105〜11107というビルド番号は、どこから出てきたのだろうか。

 以前にもWindows 10の次期大型アップデートと見込まれる「Redstone」の解説で紹介したが、Windows Insider Programでの配信グループにあたるFast RingとSlow Ringの前段階には、Microsoftが社内テスト用に用いているInternal Ringが存在する。

 さらにその前段階では、開発チームがほぼデイリーでビルドの更新を行っており、順番としては「開発チームの最新ビルド」の一部がまずInternal Ringに配信され、次にある程度問題がないことを確認してからFast Ringへと提供される。

 これは安定性の検証だけでなく、配信に用いるサーバの負荷分散の意味合いもあるだろう。多少配信ラグはあるものの、Fast Ringへの配信ペースを速めることでInternal Ringの配信タイミングに近づくことになる。ただ、Fast Ringでの配信は一定間隔を置くため、次のビルドが配信されるまでの間に内部ビルドにあたるInternal Ringでは数ビルド先の最新版が配信されている状態だ。

Windows 10のアップデートプロセス Windows 10のOSアップデートプロセス。MicrosoftのWindows OS開発チームが更新したビルドは、Microsoft社員によるテスト(Internal Ring)を経て、Windows 10 Insider Previewとして配信される

 ここで、Microsoftの動向を追っている米WinBetaの記事に、興味深い内容が記されているので紹介したい。Microsoft内部でテストされている最新のWindows 10ビルド番号を掲載する「BuildFeed.net」というサイトがあり、現在の最新内部ビルドと提供開始日が一望できるようになっているというのだ。

 最初は信頼に足る内容か疑問を持っていたのだが、Build 14251が予告されて実際に出てきたことで、結果的に正しいことが分かった。Fast Ringとこのサイトにおける各ビルドの配信日には2〜3日ほどのラグがあり、これがWindows 10 Internal Ringを介してFast Ringに到達するまでの所要時間だと考えられる。

 Build 14251とBuild 11102の間には、11103〜11107のビルド番号が存在し、これが前述のオウル氏の示した11105〜11107のビルド番号と一致している。Build 14251の先のビルド番号も既に出現しており、1〜2週間程度で最新ビルドが再びFast Ringに配信されると予想される。

BuildFeed.net BuildFeed.netというサイトでは、現在の最新内部ビルドと提供開始日が一望できるようになっている

 さて、問題はいつまで「新機能追加のないOneCore改良を優先したビルド」の配信が続くかだ。ビルド番号の大幅ジャンプが直接OneCore改良の終了を意味しないとはいえ、この改良フェーズが一段落つくのも時間の問題だと筆者は考える。

 特に2016年3月末には開発者会議の「Build 2016」(ややこしいが、これはOSのビルド番号ではなく、開発者会議のイベント名だ)が控えているため、このタイミングまでにある程度Redstoneにおけるロードマップを示す必要がある。2〜3月中のMicrosoftからの公式発表に注視しているといいかもしれない。

 また残念な情報だが、Build 10586より後のモバイル向けWindows 10 Insider Previewの配信はLumia 950/950XL/550が優先され、それ以外のWindows 10 Insider Program対応機種の配信は後回しにされるというウワサも出ている。PC向けとは異なり、モバイル向けは比較的古いハードウェアが切り捨てられる方向にあるのかもしれない。

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