米Intelは4月29日(現地時間)、PC市場での厳しい情勢を受け、大幅な構造改革を含む新戦略を発表した。中でも、スマートフォンやタブレット向けSoC(System on Chip)の製品投入予定をキャンセルしたことは話題になっている。同社のこの戦略変更はWindowsの世界にどのような影響を与えるのだろうか。
Intelによるプロセッサ戦略の変更は、Moor Insights & Strategyのパトリック・ムーアヘッド氏がForbesに寄稿した4月28日の記事で判明したもので、後にIntel側がこの事実を認めている。
具体的には、スマートフォンやタブレット向け製品を大幅に縮小し、「Atom x3」シリーズに属するSoC「SoFIA」の「SoFIA 3GX」「SoFIA LTE」「SoFIA LTE2」、および「Atom x5/x7」シリーズ後継として投入されるとみられていた開発中のSoC「Broxton」がキャンセルとなった(SoFIAとBroxtonは開発コード名)。
なお、SoFIAの市場拡大のためにRockchipと共同で発表された「SoFIA 3G-R」は継続となり、Rockchipとの提携も続いていくようだ。
SoFIAはAtomコアのプロセッサとモデムをセットにしたソリューションで、Qualcommなどのチップセットを提供するライバルに対抗する製品と位置付けられていた。主なターゲットとしては、成長中の新興国市場を狙ってローエンドからミドルレンジの層に向けた製品ラインアップとなっており、前述したRockchipとの提携も中国や周辺市場での拡大を狙ったものだ。
LTEの先端技術も取り込み、2年以上に渡って続けてきたSoFIAだが、激化するミドルレンジ以下の価格帯での競争にさらされ、最終的に選択と集中の視点からIntelは撤退することとなった。以後、同社は通信系のリソースを「5G」関連の開発に集中させる。
一方のBroxtonは、スマートフォンや低価格なタブレットでの利用を想定した次世代SoCの名称だ。現在は「Surface 3」などに搭載されているCherry Trailベースの製品が最新だが、Cherry Trailを構成する14ナノメートル製造プロセスの「Airmont」コアからマイクロアーキテクチャを変更した「Goldmont」コアが、Broxtonの世代ではサポートされる予定だった。結局はBroxtonがキャンセルされたことで、低価格製品向けAtom SoCの系譜はCherry Trail世代で終了となる。
ただし、Goldmontコア自体の開発がキャンセルされたわけではなく、他の製品向けに提供されるという。Goldmontコアが最初に登場するのは、低価格PC向けの「Pentium」または「Celeron」の製品ラインアップとしてであり、「Apollo Lake」(開発コード名)というプラットフォームになる。
Apollo Lakeの特徴は、HEVCやVP9といった新しいビデオコーデックのハードウェアデコーダーを搭載するほか、Gen 9世代のグラフィックコアをサポートする点だ。このGen 9は、Coreプロセッサでは第6世代(Skylake)に相当する。つまり、Broxtonが当初想定していたよりは幾分かハイパフォーマンス寄りのノートPCや小型デスクトップ、あるいは2in1型タブレットがターゲットとなる。
登場時期は2016年後半を予定しており、恐らく5月末〜6月初旬に台湾で開催されるComputex Taipeiでさらに新情報が出てくるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.