Appleの世界開発者会議「WWDC 2016」が終わりました。初日の基調講演では一般向けですごく目立つ発表がなかったので、見終わった瞬間は物足りない気がしましたが、まとめ記事を書いていたら、「いろいろすごいかも」とじわじわ思い始めました。
前回のコラムで、「Siri搭載のGoogle Home的な何かも出るといいなぁ」と書きましたが、そういうものは出てきませんでした。
でも、スマートホーム関連に限れば、Appleの「HomeKit」で「Google Home」よりもいろいろ便利なことができちゃいそうです。
HomeKitというのは、Appleのスマートホームプラットフォームです。対応するアクセサリー(スマート電灯とかガレージのスマートシャッターとか)を、iPhone、iPad、iPod touchで制御できます。アクセサリー側が対応していれば、例えば「明かりを消して」とSiriに命令すると家の照明を消す、というようなこともできます。
発表されたのは2014年のことですが、その後対応するサードパーティー製アクセサリーがあまり増えず、日本では電灯と室内環境センサーくらいしか使えないこともあり、ピンときませんでした。
今回のWWDCの基調講演とHomeKit専門セッションでは、HomeKit関連で以下のようなことが発表されました。
順番に説明してみます。
Homeアプリは、iPad、iPhone、Apple Watchで使える新しいHomeKitアクセサリー操作用アプリ。同じApple IDでログインしていれば、どのデバイスからでもアクセサリーの操作が可能です。また、HomeKitを登録した「オーナー」は、他の家族(招待すれば他人でも)を招待できるので、招待された人も自分のiOSデバイスのHomeアプリでアクセサリーを操作できます。
HomeアプリにHomeKit対応アクセサリーを登録して、このアプリから全部操作できます(これまでアクセサリーごとにアプリを起動してたというのが不便すぎる)。「おはよう」とか「ただいま」とか「パーティー」とかのパックを作って1タップ(またはSiriへの一声)で複数のアクセサリーを同時に操作することも可能です。例えば「ただいま」で部屋の明かりとエアコンをつけて、ガレージのシャッターを開けるとか。
基調講演ではクレイグ・フェデリギさんが、照明のアイコンを長押しして大きくし、上下にスワイプすることで明るさを調整するという小技も披露しました。
Homeアプリでお気に入りに登録したアクセサリーは、iOSデバイスのホーム画面で上にスワイプすると出てくる「コントロールセンター」からも操作できるようです。
ここで言う「リモートアクセス」とは、Apple TVをハブとして、外出先からアクセサリーを操作する機能です。Apple TVとアクセサリーをBluetoothやWi-Fiで接続しておいて、そのApple TVとHomeアプリ搭載デバイスを同じiCloudにサインインすればOK。もうすぐ家に到着するというときに、「ただいま」パックを外から命令できます。
リモートアクセスに加えて、オートメーション(自動化)もできるようになります。イベント(例えばHomeアプリが入っているiPhoneが家から○キロ範囲に入った、とか)やタイマーをトリガーに、「ただいま」パックを実行できるわけです。
さらに、これは基調講演では説明しなかったのですが、WWDCのサイトで公開している「What's New in HomeKit」セッションの動画で、「Apple TVに加えてiPadもハブにできるようになりました」と説明していました。
Apple TVを持っている人は少数派かもしれませんが、iPadが2〜3枚家にごろごろしている人は少なくないのではないでしょうか。ただ、iPadもApple TVと同様に電源につなぎっぱなしにしておかないとだめみたいなので、現役で使っている1枚しか持っていない場合は、Apple TVを買った方が安いです。
Apple TVはこれまで、Siriを使うにはリモコンに向かって話しかけなくちゃいけませんでしたが、iPhoneやiPadをリモコン代わりにするアプリ「Remote」からSiriでApple TVを操作できるようになります。
Google Homeは据え置き型で、家族の誰もが話し掛けて利用するものですが、HomeKit+Homeアプリでは(スマートホームだけなら)同じようなことが、家族みんなが持っているそれぞれのiOSデバイスあるいはApple Watchからできるわけです(でもやっぱりジョナサン・アイブさんにかっこいい「Apple Home」を作ってほしい気も)。
そして、いくら便利になっても対応するアクセサリーが少ないと魅力がないわけです。今回新たに、空調、ホームカメラ、ドアベルが加わりました。
ホームカメラは、ズームしたり、動画や静止画を録画したり、と細かく操作できそうです。
カメラとドアベルとドアロック(鍵)を組み合わせた通知設定もできます。例えばドアベルが鳴ったらiPhoneのロック画面に玄関のカメラの映像と「通話」「鍵を開ける」ボタンが表示される、とか。映像がいつもの宅配便の人だったら、iPhoneの画面で鍵開けながら玄関までハンコを持って行けばいいわけです。
このくらい今どきのドアホン(iPhoneじゃなくて、アイホンとか)でもできそうですが、Homeアプリで全部できるところがポイントです。
Googleのスマートホームは「Project Brillo」というプラットフォームでNestのチームがやっているはずなんですが、いまだに連係できるアクセサリーがあまり増えていないのはAppleと同様です。本当だったらもう随分先を行けたはずなのに、ごたごたしていたせいで、なんだか停滞しています。この分野ではAppleがリードするかもしれません。
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