「アクセス解析」の楽しさに心をうばわれていた頃のこと

» 2016年12月14日 06時00分 公開
[上田啓太ITmedia]
オレの知ってるネットと違う

 前回は「アクセスカウンタ」について書いた。ホームページ制作の初期、カウンタの数字に一喜一憂していたという話である。そして今回は「アクセス解析」について書く。そこには、カウンタとは別次元の「楽しさ」があったのだ。

過去の“ホームページ”に関する話

ライター:上田啓太

上田啓太

1984年生まれのブロガー。京都在住。15歳のときにネットに出会い、人生の半分以上をネットとともに過ごしてきた男。

個人ブログ:真顔日記 Twitter:@ueda_keita


アクセス解析を見ることは楽しい

 アクセスカウンタはあまり見かけなくなったが、アクセス解析は現在でもバリバリ使われている。日々の訪問者数が分かる。アクセスの多いページも分かる。リンク元、検索ワード、ブラウザやOS、画面の解像度も分かる。最近は訪問者の性別や年齢まで分かるようになってきた。

 これらの情報を分析し、Webサイトの改善のために利用すればよい……のだが、当時の私は、たんに「見るのが楽しい」という理由で使っていた気がする。趣味でやっているページだからだろう。

 改善うんぬんを考えなくても、アクセス解析は見ているだけで面白かった。ついつい見てしまう面白さがあった。家に帰るとひとまずアクセス解析を見る。朝起きたときもひとまず見る。一時期の私は、それくらい夢中になっていた。一体、アクセス解析の何がそんなに楽しかったのか?

「検索ワード」を見る楽しさ

 まず、「訪問者の検索ワード」を見ることが楽しかった。といっても、ページ名で検索されるのは普通のことである。たまにある「訳の分からない検索ワード」が楽しかったのだ。

 例えば私の現在の個人ブログには、“金玉綱引き”という謎のワードで検索してきた人がいる。アクセス解析でそれに気付いて笑う。こんな訳の分からない下ネタで検索している人がいる事実に笑い、そんなワードで自分のページが引っ掛かってしまうことにも笑うのだ。それが楽しい。

 ほかにも私のブログには、

 “ターバン 接客業”

 “寝てばかり 酒ばかり”

 “京都でロン毛の半ズボンの男の人!?誰!?”

 こんなワードで検索してきた人がいる。どれも、まったく身に覚えがないわけである。そこが楽しい。

 “ターバン 接客業”も良いし(巻いて接客したいんですかね?)、“寝てばかり 酒ばかり”から醸し出される演歌的世界観も良い。“京都でロン毛の半ズボンの男の人!?誰!?”に至っては、「ワード」と言っていいのかすら分からない。京都でロン毛の半ズボンの男の人を見かけたのか。それですぐさま検索したのか。とにかく検索者の興奮だけは伝わってくる。

 そして、こんなふうにアクセス解析で見つけた変な検索ワードに言及することは、当時の鉄板ネタだった。私もやっていたし、いろいろなページでもよく見かけた。「検索ワードいじり」というのは、ページ制作者が一度は通る道なのである。

「リンク元」を見る楽しさ

 「リンク元」を見る楽しみもあった。訪問者がどこのページから飛んできたのかを教えてくれるわけだ。例えば当時の私のページは、友人のページの「リンク集」から来ている人が多かった。これ自体は別に楽しくない。しかし毎日アクセス解析を見ていると、たまに「見知らぬリンク元」から人が来ていることがある。これを見つけた瞬間が、ものすごく楽しかった。

 それに加えて、「その日のアクセス数が跳ね上がっている」こともある。こうなると大興奮である。「知らないページからたくさん人が来ている!」と気付いたときのワクワク感と、すこしの恐怖感(ネガティブなリンクの可能性もありますからね)。これが癖になる。変な検索ワードは「笑い」だが、見慣れないリンク元は「興奮」だったのだ。

「グラフがブッ壊れる」ことの興奮

 考えてみると、アクセス解析の面白さの秘密は、「突然たくさんの人が来る」ことにあったのかもしれない。私はこれを「棒グラフがブッ壊れる」と表現していたんだが、これがいちばん楽しかった。つまり、日々の訪問者が102人、95人、111人、85人……と推移していたところに、突然、「5532人」みたいな日がおとずれて、それ以前の棒グラフがペッタンコになる。それを「棒グラフがブッ壊れる」と表現していた。このときの「うわーッ!」という感じがたまらなかった。

 もちろん、そんなことはめったに起こらないんだが、だからこそ、起きたときの快感はすさまじい。私はグラフがペッタンコになっていることを期待して、日々、アクセス解析を見ていたのかもしれない。なんだかばかみたいな表現だが、アクセス解析の魅力の秘密をつかんだ気がする。グラフのペッタンコ。これである。

思い出のアクセス解析たち

 1999年から2005年まで、私はいろいろなアクセス解析を使っていた。しかし2006年にGoogle Analyticsを導入し、それ以降はいろいろと試すのをやめてしまった。Google Analyticsはその名の通りGoogleが提供するアクセス解析で、無料のうえに高機能、バナー表示の必要もなく、まさに「決定版」といった雰囲気があったのだ。

 ということで、それ以前に使っていたさまざまなアクセス解析のうち、とくに印象に残っているものについて書いて終わりたい。具体的には「CGIBOY」と「忍者ツールズ」である。

 「CGIBOY」は2001年頃、高校生のときにはじめて使ったアクセス解析なので非常に印象深い。私にアクセス解析の楽しさを教えてくれた存在である。CGIBOYにはその他にもいろいろお世話になった。「掲示板」や「日記帳」も使っていたと記憶している。

 「忍者ツールズ」は2004年頃に使っていた。こちらはバナーが印象深い。よくある長方形の画像ではなく、「手裏剣がクルクルまわって消える」という不思議なものだったのである。それが妙に印象に残っている。当時、忍者ツールズのアクセス解析を多くの人が使っていて、あちこちのページで手裏剣バナーが回転していた。「ここでも手裏剣が回ってる!」と思っていた。忍者だらけのインターネット。なかなか不思議な思い出ですね。

 調べてみたところ、「CGIBOY」は既にサービス終了してしまったようだ。しかし「忍者ツールズ」はいまも健在。変化の激しいインターネットの世界で、これはすごいことですね。さすが忍者!

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