次世代Windowsデバイスの話題が騒がしくなってきた。本連載でもこの1カ月で、次世代Surfaceにまつわる3つの開発コード名「Carmel」「Libre」「Andromeda」や、次世代HoloLensの開発コード名「Sydney」を紹介してきたが、こうした新たな波はいわゆる「Windows on Snapdragon」にも到来している。
先日はWindows on Snapdragonのプラットフォームで開発中と目される新製品のベンチマークテスト結果がリーク情報として出てきたばかりだが、そのコアとなるSoC(System on a Chip)を提供するQualcommでは立て続けにハイエンドのSnapdragon製品を市場投入している。
しかも明確に「PC市場ターゲット」をうたうSnapdragon新製品を発表するなど、まだ世界で立ち上がりの鈍い製品カテゴリーへの注力を強めている状況だ。
Snapdragonの最上位にあたるSoC「Snapdragon 850」は、6月5日(台湾時間)にCOMPUTEX TAIPEI 2018に合わせて開かれたQualcommのプレスカンファレンスで発表されている。
2017年12月に発表された「Snapdragon 845」は、PC対応をうたいつつもモバイルを含む幅広いデバイスへの適用を訴えていたのに対し、Snapdragon 850では明確に「PC対応」をアピールしてきた。この点が従来のハイエンドSnapdragonと大きく異なるところだ。
Microsoftは、LTEを搭載しつつ、瞬時の起動や、長時間のバッテリー駆動も実現するWindows 10デバイスのことを「Always Connected PC(常時接続PC)」と呼び、今後の普及を狙っている。
特にこれを具現化する新たな仕組みである「Windows on Snapdragon」のデバイスは、MicrosoftとQualcommの両社肝いりで2017年12月に発表されたものだが、展開地域とモデルのバリエーション不足が理由で、多くの地域ではその存在が希薄なままだ。日本市場にもいまだWindows on Snapdragonデバイスは投入されていない。
また、既に発売されている米国においての評価は、バッテリー駆動時間とLTEによる常時接続の仕組みでPCの使い方が変化したものの、性能面では搭載するSoC「Snapdragon 835」の力不足により満足のいく水準には達していないという声が多いようだ。
その後継SoCにあたるSnapdragon 845ならびに、今回発表されたSnapdragon 850はこの評価を改善するものとして期待される。少なくとも、周囲のそこまで芳しくない評価に対してMicrosoftならびにQualcommでは新製品の投入を続行する意向があるわけで、SnapdragonをベースとしたAlways Connected PCに「PCの未来」ならびに「収益拡大の期待」があるとみているのだろう。
Qualcommによれば、Snapdragon 850は前世代と比較してシステム全体のパフォーマンスが30%向上し、AI系の処理で最大3倍の処理能力向上が期待できるという。バッテリー駆動時間は最大25%、LTEはCategory 18の下り最大1.2Gbpsをサポートする。
この“前世代”がどの製品に該当するか不明だが、恐らくSnapdragon 835を指していると考える。微細化技術は835の第1世代10nm製造プロセスから、850の第2世代10nm製造プロセスと進化しているが、どちらかといえば内部のプロセッサ設計を見直した部分が大きいのではないか。
対応製品は、まずは既存のパートナーであるASUS、HP、Lenovoから登場する予定だ。また時期は明言していないものの、Samsung Electronicsが新たなパートナーとして対応製品を投入する意向を示しており、最速で2018年のホリデーシーズン商戦、遅くても2019年初頭には製品が発表されるとみられる。
Windows on Snapdragonデバイスが日本国内に投入される段階においては、この辺りに留意して製品選びをするのがよいだろう。
なお、ウワサのレベルではあるが、Microsoftが「Andromeda」の開発コード名で準備を進めているという折り畳み型の新PCについて、WinCentralによれば、SoCにSnapdragon 850を採用しているという。これが本当かはともかく、Snapdragon 850が2018年末のWindows関連デバイスを賑わせる存在であることは間違いない。
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