2画面は見送り? 低価格モデルは出る? 次期Surfaceの行方鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2018年07月09日 16時00分 公開

 2018年6月下旬から7月にかけて、米Microsoftが「Andromeda」の開発コード名で準備を進めているというプロジェクトが、「ポケットサイズの2画面折りたたみ型Surface」なのではないか、というウワサが注目を集めた。

 6月27日(米国時間)、Windows Insider ProgramのFast Ringユーザー向けに配信された最新のWindows 10 Insider Preview「Build 17704」に、ディスプレイの“開き具合”を取得するAPIの搭載が確認されたことに加えて、米The Vergeのトム・ワーレン氏がMicrosoftの内部情報として「ポケットサイズの折りたたみ型デバイスを2年以上開発している」と報じたことで、話題が一気に盛り上がったのだ。

 また、ワーレン氏が把握しているデバイスの形状として、デザイナーのデビッド・ブライヤー氏が以前作成してTwitterに投稿した2画面Surfaceのコンセプトアートを挙げており、これもガジェット好きなユーザーの好奇心をかき立てる情報だった。

 ところがその後、Andromedaを構成するOSや、それを搭載する新デバイスは2018年内に登場せず、もしかすると2019年以降も登場することがない――「既に“死んだ”プロジェクトだ」という報道が出てきている。これにより、Andromedaのウワサはトーンダウンしつつある状況だ。今回はこの辺りをフォローアップしていきたい。

「Andromeda」はMicrosoftの組織改編で見直されたのか

 米ZDNetでMicrosoftの動向を追っているメアリー・ジョー・フォリー氏は、自身の情報源を基に次のように報じた。

 Microsoftが開発中といわれる「折りたたみ型デバイス」と、同デバイス向けの「Andromeda OS」について、少なくとも2018年秋に「Windows 10(1809)」としてリリースされる大型アップデート「Redstone 5(RS5)」でのサポートはなく、その理由としてスケジュールと品質に問題があるとしている。

 同氏によれば、そもそもMicrosoftは折りたたみ型デバイスに関するプロジェクトについて公式に語ったことは一度もなく、Andromedaというキーワードが騒がれるようになった1年以上前の段階においても、いわゆる「Surface Phone」のようなコンシューマー向け携帯電話を志向したことはないという。

 そして、このデバイスの運命は2018年時点で既に終了していたというのが同氏の結論だ。米Microsoftは2018年3月に大規模な組織改革を発表し、それまで「Windows and Devices Group(WDG)」と呼ばれていたWindows OSとデバイスの開発を担当する部署を解体し、「Experience & Devices」という新設部署の下で再編することにした。

 結果として、WDGを率いていたテリー・マイヤーソン氏はMicrosoft退社の意向を示し、Surface担当だったパノス・パネイ氏が「デバイスの開発」を、かつてWindows 10 Mobile(Windows Phone)の顔だったジョー・ベルフィオーレ氏が「Windowsの開発」を引き継いだ。

Surface Windowsデバイスの開発は、Surface担当だったパノス・パネイ氏が引き継ぐ(写真は日本におけるSurface発表会での同氏)

 この際に多くのプロジェクトに手が入り、方針転換、または日の目を見ることなく消えていったとみられる。この犠牲の1つがAndromedaだというのがジョー・フォリー氏の見解だ。

 ただ、この時点でプロジェクトに手が入ったのはデバイスの計画のみで、「Windows 10を搭載したポータブルなマルチスクリーンデバイス」というAndromeda当初のコンセプトに基づいたソフトウェアの開発は続いているという。2019年以降にリリースされるOSに新機能として搭載されるかどうかは不明なものの、サードパーティー製品登場の可能性はにおわせている。

 一方で気になるのは、2017年から米Windows CentralでAndromeda関連の情報発信に熱心だったザック・ボーデン氏の動向だが、この件に関してはポッドキャストでの定期発信以外でフォローアップを行っていない。

 ただ、WindowsやMicrosoft関連情報の発信で実績があるThe Vergeのワーレン氏も7月6日(米国時間)にTwitterでジョー・フォリー氏の報道を支持しており、「2018年にはリリースされない」「OEMデバイスはリリースされる可能性があるが、Andromeda OSは搭載しない」「アプリのエコシステムが存在しないため、現在プロジェクトは再検討段階にある」と締めている。

Microsoftが公表していないプロジェクトの署名運動も始まったが……

 一連の報道の影響か、署名サイトのChange.orgでは見直し段階にあるとみられるAndromedaプロジェクトを救うための嘆願署名が集められており、7月9日(日本時間)時点で1万人に到達する勢いだ。

Andromeda Change.orgでの「Surface PhoneまたはAndromeda」の助命嘆願を求める署名ページ

 とはいえ、Xbox関係を除くコンシューマー向けデバイス戦略を大幅に後退させてクラウドに注力しつつある現在のMicrosoftにとって、デバイス込みのAndromedaプロジェクトは本軸から外れたものだ、という見方も確かだろう。

 ジョー・フォリー氏は、最近になりAndromeda関連のリーク情報が立て続けに出てきた背景として、Microsoft内部のスタッフが中止されつつあるプロジェクトの成果を外部にアピールするため、わざと情報を積極的に出しているのだと推察している。

 比較的最近の例では、キャンセルされたプロジェクトである「Surface Mini」のスペックや製品画像が多数流出して話題となったが、これも関係者が開発した製品を死蔵させたくないとの思いで意図的に流出させた可能性があると考えられている。

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