世界を席巻する「GAFA」 Google、Apple、Facebook、Amazonの2018年まとめITはみ出しコラム(1/4 ページ)

» 2018年12月30日 08時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 「GAFA(ガーファ)」とは、Google、Apple、Facebook、Amazon.comの頭文字を並べたもので、2012年ごろからまずフランスで使われるようになった結構古くからある言葉です。今年ヒットしたスコット・ギャロウェイ氏の書籍でタイトルになったこともあり、最近は日本でも取り上げられる機会が増えました。

 GAFAという言葉は、広告や検索(Google)、スマートフォンとそのアプリ(Apple)、SNS(Facebook)、ショッピング(Amazon)というネットの「プラットフォーム」で大きなシェアを持つ「プラットフォーマー4傑」という意味で使われています。また、「個人情報は集めるわ、市場独占で自由競争を阻害するわ、税金はごまかすわ、のずるくて巨大な米国企業」という、あまり良くないニュアンスでも使われている言葉です。

 実際にこの4社は、2018年もITmediaに記事が載らない日はないくらいでした。今年最後のコラムでは、この4社の1年を振り返ります。

Google──「AI」と「Don't be evil」の間で揺れる

 Googleは検索サービス企業から、すっかりAI企業にシフトした印象です。同社の使命は「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」です。

Google Googleの使命

 もちろん検索ツールにもAIが採用されているし、「Googleアシスタント」はスマートスピーカーの「Google Home」やAndroidデバイスに載ってユビキタスな存在になってきています。

 米ベンチャーキャピタルのLoup Venturesが12月20日(現地時間)に発表したAIアシスタント対抗知能テストの成績では、Googleアシスタントの正解率が88%でダントツでした(ちなみにAppleの「Siri」は75%、Amazonの「Alexa」は73%、Microsoftの「Cortana」は63%)。

 Googleが2012年にユーザーデータをサービス横断で収集することにしてから6年以上がたち、「データ+AI」でいろいろ便利になっています。

 例えば、今年の新機能ではありませんが、「Googleカレンダー」の予定に入れた目的地が「Googleマップ」に表示されたり、「Gmail」で受信したホテルからの予約確認メールがGoogleカレンダーに表示されたりーーその便利さは不気味なくらい。これを悪いことに使ったらどうなるか。当然そういう不安も高まります。

「Project Maven」ーーGoogleのAIを軍事目的で利用か

 そんな中で4月に発覚したのが、「Project Maven」の契約。これは、米国防総省によるドローン撮影した画像・動画解析のためのAIアルゴリズム開発プロジェクトで、それにGoogleが協力しているというのです。Googleは、このAIの目的は人命救助だと説明しましたが、何にせよ軍事目的でGoogleのAIを使うというきな臭さに、内外から批判が噴出しました。

 これに対してGoogleのスンダー・ピチャイCEOは6月、「AIの倫理原則」を公開して火消しに走り、「契約は更新しない」と約束することで一応は収まりました。

 このプロジェクトを推進していたGoogle Cloudのダイアン・グリーンCEOは、これが直接の理由ではないようですが退任し、アグレッシブな仕事ぶりで知られる元Oracleのトーマス・クリアン氏が後任になりました

 この1件で、「Googleはかつて掲げた(非公式な)スローガンの“Don't be evil(邪悪になるな)”を忘れたか」と批判されました。

「Project Dragonfly」ーー中国ならGoogle検索も検閲あり?

 Don't be evilを忘れたのか、というもう1つの火種は8月に発覚した「Project Dragonfly」。こちらは、中国市場に再参入するために、中国政府による検閲や危険クエリのフィルタリングを可能にした検索サービスを提供するプロジェクトです。

 ピチャイ氏は米下院の公聴会で、「Googleのミッションは全ての人に情報へのアクセスを提供することなので、中国でもできるだけそうしたいと思っているが、このプロジェクトはまだ初期段階」と説明しました。

Google 公聴会で証言するGoogleのスンダー・ピチャイCEO

 この件をずっと追っているThe Interceptによると、公聴会の後、このプロジェクトは実質的に終了したそうです。

セクハラ問題はGoogleでも

 今年は「#metoo」でのセクハラ抗議が拡散しました。Googleも例外ではなく、10月に「Androidの父」として知られるアンディ・ルービン氏がセクハラ発覚後に高額の退職金をもらった、とNew York Timesにすっぱ抜かれた後、不満の声があふれました。

「#GoogleWalkout」ーーそして立ち上がった従業員たち

 Googleの2つのプロジェクト(Maven、Dragonfly)を難航させたのは、外からの批判よりもDon't be evilを信じる従業員たちの力でした。プロジェクトに反対して多数の優秀なエンジニアが去り、残った従業員は署名運動をし、世界中のオフィスで抗議デモを行いました。

 11月に行われたGoogleWalkoutのハッシュタグで拡散した全社デモは、セクハラへの反対だけでなく、2つのプロジェクトへの抗議も掲げたものでした。

GoogleWalkout デモのために従業員が開設したTwitterアカウントは今も問題提起しています

 このデモを受け、Googleはさまざまな改善を約束しました。デモを主催した従業員は今も社内運動を続けています。主催した6人の従業員へのRecodeのカーラ・スウィッシャー氏のインタビューを読むと、社内でGoogleのコミュニケーションツールを駆使して世界中の問題意識のある従業員がつながり、運動を進めていった様子が分かってなかなか感動的です。

 同社のDon't be evilを信じて入社し、真剣に考えている優秀な従業員がいる限り、Googleは何とかダークサイドに落ちないで済むのではないか、と感じます。

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