「Cintiq 16」と海外産の廉価液タブを徹底比較 人気プロ絵師が描き心地をチェック(2/6 ページ)

» 2019年01月08日 14時00分 公開
[refeiaITmedia]

表示性能比較

 次に表示性能をチェック。

 せっかく他機種横並びですので、今回は画面の性能も少し見ておきたいと思います。ColorMunki Display (i1 Display Proと同等のセンサー)を使って、色バランスやガンマ、色域を見ていきます。

 今回使ったセンサーは何年も校正していないので、きっちりした結果とは見ないでください。以後は、特に断りがない限りはディスプレイ設定で色温度6500K、明るさの設定で白の輝度を約130cd/m2に近づけた状態の結果と考えてください。

補正曲線とグラフ

 黒浮きのチェックもしておきます。各機種の白の輝度を合わせた状態で、黒画面を表示して、デジカメの露出設定を一定にして撮っています。

黒浮きのチェック

 グラフは、左側がDisplayCALというアプリで表示させた補正曲線、右側がColorACというアプリで表示された色域です。大小の面三角がAdobe RGBとsRGB、線三角がそのディスプレイの色域です。

 Cintiq 16は、補正曲線がきれいにそろっていて色温度も設定値の6500Kに近くなっています。色バランスも素直で、色域もsRGBに近くて、sRGB目標の標準的なディスプレイとして使えると思います。

 残念なのは、一見して分かるほど黒浮きが強いことです。コントラスト比は仕様表には1000:1とありますが、測ると200:1程度しかありませんでした。これは後ほど、実描テストの時点でひっくり返るので、保留とさせてください

 Artist 15.6は、補正曲線が離れていることからも分かる通り、画面が青っぽいです。また、青が急に曲がっていることからも分かるように、白色近辺で急に色が転びます。色域はsRGBよりやや狭いです。色転びは制作にはあまり使いたくない特徴ですが、キャリブレーションすればsRGB目標のディスプレイとして使うことができると思います。

 Artist 16 Proも画面が青っぽいです。補正曲線各色にそれぞれの揺らぎがあるので、明るさによって色バランスが変わってしまう特徴があることも分かります。色域はsRGBよりは広く、Adobe RGBより狭いです。また、設定で「sRGB」を選んでも、色域を制限してくれるわけではありませんでした。光沢パネルなためとても鮮やかに見えますが、赤色などがキツかったりして、そのままでは標準的なディスプレイとしては使いづらいです。青っぽかったり色バランスの不安定であったり、発色を訴求するにはちょっと無頓着かな、というのが正直な感想ですね。

 Kamvas Pro 13は周辺のバックライト漏れがやや目立つものの、色温度はほぼ合っていて、補正曲線も素直です。色域はsRGBより広く、面積もAdobe RGBに近いほどあります。バランスの良い広色域ディスプレイだとは思いますが、キツい色もあり、これも標準的なディスプレイとしては使いづらいです。

 まとめると、XP-Penは全体的にやや残念、Kamvas Pro 13はぜいたくを言えばsRGB色域シミュレーションが欲しかった、Cintiq 16はこの中では唯一、追加の調整なしで標準的なディスプレイとして使える可能性がありますが、保留です

「広色域=高級」問題

 ここで少し説教くさい話をさせてください。短く言いますね。

「色が濃いディスプレイで調整した絵は、みんなの画面では意図したより薄く表示されてしまう」

 です。Adobe RGBが偉いんだ、広色域が高級なんだと思って何も考えずに使うと、必ずこのトラップにはまります。

 誰も、大きいからといって長さが40cmある30cm定規を買ったり、速いからといって針が1.2倍早く回る時計を買ったりしないと思いますし、何らかの必要で買ったならば、換算する方法を用意するはずです。それと同じことですね。解決は、勉強してカラーマネジメントをするか、みんなと近い標準的なディスプレイを選ぶことです。

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