スマートフォン普及のカギは「つながり」の提供――「Windows Mobile 6.5」の戦略(2/2 ページ)

» 2009年10月14日 16時23分 公開
[日高彰,ITmedia]
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最も重要な要素はサービス連携

 新UI、パフォーマンス向上、サービス連携の3点のうち、越川氏はサービス連携こそが最も重要な特徴であると強調し、説明にも多くの時間を費やした。ただ、My Phoneは既にWindows Mobile 6.0および6.1にも対応しており、Marketplaceも今年中に6.0、6.1用のクライアントソフトが提供される予定(いずれも、OSが電話回線を制御できないClassic版を除く)と、サービス連携はWindows Mobile 6.5だけの目玉機能というわけではない。

 越川氏は「ユーザーから見ればOSのバージョンが6.1なのか6.5なのかは一切関係ないこと」であり、「Windowsの入った電話機で何ができるか」をアピールしたいと話す。「ユーザーは、Webサイトが見たい、携帯のメールもGmailも会社のメールも1台で確認したい、写真や動画を再生したいといった、ある程度明確な“やりたいこと”を持っている。しかし、やりたいことを実現するための道にはさまざまな壁がある。それを、面倒な作業や制約なく実現できるのが、マイクロソフトの考えるスマートフォン」(同氏)

 例えば、旅先で美しい風景を目にして、それを誰かに見せたいと思ったとき、通常の携帯電話を使うならばカメラ画像をメールに添付して送信することになるが、撮影→保存→メール機能を起動→宛先を入力し送信といったステップが必要で、しかも、カメラ自体は何百万画素もの高解像度撮影に対応しているのに、携帯メールの仕様上画像サイズを縮小せざるを得ないことも多い。

 それがスマートフォンなら、撮影と同時にネット上のサービスにフルサイズでアップロードし、大勢で共有できる。PCからは高解像度のまま写真を見られるし、ネットワーク機能付きのデジタルフォトフレームや、Xboxのネット接続機能などを使ってテレビからでもアクセスできる。マイクロソフトでは、このような利用シナリオを実現するのがWindows phoneであるというスタンスで、今後のWindows Mobile搭載スマートフォンをプロモーションしていく方針だ。

豊かな「つながり」を提供するサービスの充実がカギ

photo 例えば、この無線LANの設定画面などはあまり使いやすいとは言えず、Windows Mobile 5.0のころと比べてもこれといった進化がないように思われる。多くの製品では端末メーカーが追加した独自の設定ユーティリティなどによりユーザーの直接的な不便は解消されているが、Windows XP→XP SP2→Vista→7で無線LANの設定が初心者にもわかりやすく進化しているように、このような部分の使いやすさはOSで提供するほうがスマートではないだろうか

 Windows Mobile 6.5は、UIや性能に改善の加えられた新バージョンのOSとはいえ、今回新しく搭載されたUIからも、何階層か奥へ進めば、数年前の製品と比べてもあまり進化の見られない部分が多く残っている(もちろん、安定性やセキュリティ機能などで着実に進化を重ねてきたことは間違いない)。

 そんな中、ユーザーに対していかに新しい価値を提供するかは、まさしくサービス連携によってどれだけ魅力的な使い方を提案できるかにかかっていると言えるだろう。越川氏はデータ共有機能の説明をする中で、今後のスマートフォンの使われ方で重要なキーワードになるのが「つながり」であると指摘した。

 SNSやTwitterへのアクセスにPCよりもむしろ携帯電話が好まれ、若年層の間で「リアル」と呼ばれるミニブログを中心としたコミュニケーションツールが盛んに利用される昨今、スマートフォンがそれらのサービスと連携すれば、より便利で、なおかつ“いつもつながっている感”の高いコミュニケーションが実現する。あらゆるメールアカウントを1台でサポートできるし、PCのインスタントメッセンジャーで行っていた会話をそのままモバイルに引き継いで移動しながら続けるといった使い方もできる。専用アプリでアクセスするSNSはWebブラウザを使うより便利だ。「つながり」がスマートフォン拡大の牽引役になるという見方には説得力がある。


photo 強力なアプリやウィジェットなどを用意できるスマートフォンは「つながり」の提供には最適なデバイス

 しかし逆に言えば、優れた使い勝手を実現するサービスが十分に提供されなければ、せっかくのWindows phoneも輝かない。アメリカを中心に世界で多数のユーザーを持つFacebook、MySpace、Flickrといったサービスでは比較的Windows phoneとの連携が進んでいるが、それらはいずれも、日本国内で多くの人々によってアクティブに使われているサービスとは言い難い。日本のユーザーにもなじみのあるサービスとの密な連携や、マイクロソフト自身およびサードパーティによる魅力的なサービスの投入などが求められる。

 越川氏も「新しい機能をOSの発表のときだけではなく、定期的に届けていきたい」「携帯電話の買い換えサイクルが2年半〜3年に長期化する中、アプリケーションを追加することでいかに陳腐化させないかを考えていく」と話しており、この冬の新機種発売以降、どれだけ継続的にサービスの充実を図っていけるかがWindows phone普及のカギになると考えられる。

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