営業三年目のWさんは会議室に入るなり、「GTDにぴったりのフォルダを見つけましたよ!」と教えてくれました。Wさんはデジタルツールよりも紙で管理するほうが得意なようです。紙でリストを管理したかったので、いくつもの仕切りがあるクリアフォルダにそれぞれのリストを保管しています。
さらにIn-BOXとして数枚の白紙も常に持ち歩いているということでした。「気になること」があったらすぐにこの紙をだしてメモする習慣がつきました、と彼女はうれしそうに話してくれました。
初回からこのヒアリングまで二回、週次レビューを行う機会がありました。どのように週次レビューを行ったのでしょうか。
「最初の週次レビューは日曜日の午前中、次の週次レビューは土曜日の午前中に行いました。初回は本当は土曜日にやりたかったのですが寝坊しちゃって(笑)」
「週次レビューの作業自体は思ったより簡単でした。初回で『頭の中の気になるもの』をすっかり出しきる気持ちよさがわかっていたのでむしろ楽しみでした。その週に気になっていたことを全部書き出して、最初にやったように全部を適切なリストに移動させました。全部終わると『あ、来週はこれだけやれば大丈夫』ということが分かってすっきりしました」
「それから私はリストの紙を捨てずにもっているのですが、それを週次レビューの時に眺めると『今週これだけたくさんのことができた!』と達成感を味わうことができました。おかげで週末を安心して楽しむことができましたね。そういう意味では今後も日曜日ではなくて、土曜日に週次レビューをやろうと思います。そうすれば土曜日から安心していられますから(笑)」
WさんのGTDはすっかりうまくいっているようです。逆にうまく行かなかったところはなかったのでしょうか。
「そうですね、うまくいかなかったのは……。ずっと『次にとるべき行動』リストに居座り続けた項目があったことでしょうか。これはよくよく考えてみたら『プロジェクト』リストにあるべき項目だったと途中で気づきました」
「例えば『○○社への提案書を書く』というものがあったのですが、これがずいぶんと長い間『次にとるべき行動』リストにありました。最初はすぐにできると思っていたのですが、よくよく考えてみれば次にとるべきアクションはもっと違ったものだったことにしばらくしてから気づきました。提案書を作る前にヒアリングする人がいたり、調べることがあったり、ということです。そこで今ではこの項目は『プロジェクト』リストに移しています」
「こうした『次にとるべき行動』リストと『プロジェクト』リストのどちらにいれるべきかが最初よく分かっていなかったような気がします」
GTD歴数年の筆者も友人にGTDを薦めていると、この「どのリストに何をいれるべきか?」問題によく出くわします。簡単にいってしまえば、「ぱっと考えて物理的な次の行動が簡単に(=気軽に)思いつくもの」が「次のとるべき行動」リストに、逆に「ぱっと考えてみて何だか面倒だなぁ……と思えるもの」は「プロジェクト」リストに入れると使い勝手がよいようです。
しかしどちらにしろ間違えたとしても、週次レビューさえ行っていればWさんのように軌道修正がいつでもできます。細かいところはあまり深く悩まずに、週次レビューをとにかく続けることを目標にしてみてください。
それからWさんは「あるリストに長く居続ける項目がある」問題に関して次のようにもコメントしていました。
「それからこれは逆にいいことなのですが、『次にとるべき行動』リストに長く居座りつづけるものは本当は必要なかったのかな、と気づくきっかけにもなりました。最初は『家の表札を買う』というものがあったのですが、ずっと手をつけられなくて、ある日ふと、『表札、よくよく考えたらそんなに欲しくないかも』と思い至りました。そこでリストからそれを削除してさらに気分をすっきりさせることができましたよ」
WさんはGTDを通じて「ストレスフリーの仕事術」を手に入れつつあるようです。筆者的には「うまくいきすぎなのでは?」と半分疑っていたのですが(笑)、実にすっきりしたWさんの笑顔を見ていたらそうした疑いも晴れてきました。最後にここ二週間の全体的な感想を伺いました。
「週次レビューはやっぱり1時間から1時間半かかりますけど、やり終えると気分がいいですよね。近くのカフェでコーヒーを飲みながらゆったりとした気分で実践しています。それからGTDですっかり気分がよくなったので、今、二人の友人に薦めているところです。彼らは本を読んで勉強している最中ですが、近いうちにGTDのプロセスを一緒にやってみたいものです」
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