蓋然性でもうける方法樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」(2/2 ページ)

» 2010年08月19日 13時45分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]
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 打ち合わせをしていたのは夜で、その後で食事にでも行こうかとしていた時だった。すでに人が少なくなった廊下を歩き、わたしたちはトイレの横にある自動販売機のところに行った。「この自動販売機の下には、きっと何枚かのコインが落ちているはずです」

「本当ですか」

「じゃ、賭けましょうか。ビール1杯」

「了解しました」

 わたしはかがみ込んで、持参してきた長いプラスチックの定規を使い、自動販売機の下の床を横に強く削り取った。そこに長年積もり積もったゴミとホコリを全部前にかき出した。

なぜ自動販売機の下にお金が落ちているのか?

 出てきたのは、500円玉1個、100円玉2個、50円玉1個、10円玉1個、1円玉2個。自動販売機の下に、762円のお金が眠っていたのだ。

 「わあー、こんなに出てきた!」と驚いたのは、編集者だけではない。わたしもびっくりした。こんなに収穫があるとは!

 「すごい。自動販売機の下に、なぜこんなにたくさんお金が落ちているのですかね?」わたしたちは、ホコリまみれの硬貨をトイレできれいに洗ってあげた。「それは毎日、何十、何百という人たちが、ここでポケットから財布を出すからです。ときには財布を取り出すときに硬貨を落とす人、投入口に硬貨を入れかけて落とす人もいます。リノリューム貼りの床だと音もしませんから気づかないでしょうね。しかも長い年月の間、会社の自動販売機は移動しないで置いたまま。溜まるのは当たり前ですね。外の道の横の自動販売機はだめですよ。自動販売機の下には、硬貨が落ちている可能性が非常に高いというのは、知れ渡ったことです。しかし、社内の自動販売機は、盲点なんですね。ほとんど放置されたままです。それだって日本全国で見れば数百万台あるかもしれません」

 これが蓋然性の知恵の証明だった。そこの出版社のビルには、各フロアーに自動販売機があったが、それ以上は調べに回らなかった。しかるに旨いビールは飲んだ。おつまみも付いてきた。

 なお、いくら社内であっても、自動販売機の下の小銭は、誰かが落としたものである。拾った場合、拾得物として取り扱うべきであることは注意してほしい。

今回の教訓

 (蓋然性を)信じる者は救われる。

お知らせ

 誠 Biz.IDの連載・樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」は次回で終了になります。本連載に代わり、8月から誠ブログで「読むBizワクチン」がスタートしています。樋口健夫さんの記事はブログで読めるようになりますので、引き続きご愛読いただけますよう、よろしくお願いいたします。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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