セルフイメージを高める“承認のシャワー”を「タレント発掘ゲーム」で30代、V字回復への道

あなたは普段、ほめられていますか? もしほめられていないならお勧めのゲームがあります。それが「タレント発掘ゲーム」です。なれないと恥ずかしいかもしれませんが、ほめられっていいものですよ。

» 2012年04月18日 12時10分 公開
[千代鶴直愛,Business Media 誠]

 突然ですが質問です。あなたは普段、上司や先輩あるいは同僚たちからほめられていますか?

 もしあまりほめられていないとしたら、ちょっと(もしくは相当)フラストレーションが溜まっているかもしれませんね。


承認欲求に不満があると自己実現欲求が湧かない!?

 管理職研修や中小企業の経営者向けの講演会などで、私はたまに「この中で、普段から部下に対して面と向かってほめている方、どれくらいいらっしゃいますか?」と質問することがあります。すると、参加者が20人ならせいぜい1人か2人、100人なら数人しか手が挙がりません。場合によっては1人も手が挙がらない時もあります。

 ということを前提に単純計算すると、上司や先輩からほめ言葉を投げかけてもらっている人は全体の10%にも満たないことになります。恐らく、3〜5%というところではないでしょうか。ひょっとすると、日本の管理職の人たちは「ほめたら成長が止まる」とでも思っているのではないでしょうか。あるいは単純に、そういう「ほめる文化」がないので、気恥ずかしくて、自分だけできないということかもしれませんが……。

 マズローの「欲求段階説」では「承認欲求」を「生理的欲求」「安全の欲求」「愛と所属の欲求」に続く4段階目の欲求と定義し、その上に「自己実現欲求」があるとしています。つまり「承認欲求」が十分に満たされないと、最も高次の「自己実現欲求」が湧いてこないというわけです。

 現代の日本のビジネスパーソンは、圧倒的にこの「承認欲求」が満たされていません。誰もが人から「認めてほしい!」と渇望しているのに、認めてもらっていないのです。それでは、やる気が起きないのも無理はありません。

 私の知る限り、特にエンジニアはほめられる機会が少ないようです。いつも納期に追われて開発し、いざ納品という段になってバグ発見。それがたった1つであっても、上司から叱責されてしまいます。細かいところにまで気を配って、クライアントの無理難題にも応じ、納期が迫ると徹夜までして完成させたにも関わらず、そこをほめたり、認めたりはしてもらえず、たったの1つのミスを叱られてしまうのですから、いつも叱られている気分になってもおかしくありません。

 そんな環境の中でずっと働いていると、フラストレーションはどんどん高まっていき、やがて、心身共に疲弊し切ってしまいます。当然、健全なセルフイメージを保つことなどできなくなってしまいます。そんな状況が長く続くと、うつ病などメンタル面での問題を抱えてしまう場合も少なくありません。

 では、そんな状況の中で、どうしたら、私たちは健全なセルフイメージを保つことができるのでしょうか?

 「うちの上司はほめてくれない」とか「ちゃんと認めてくれていない」と言ってみたところで、上司を変えるわけにはきませんから、その置かれた環境の中で、自分自身でセルフコントロールをしなければなりません。そんなときにお勧めなのが、気の合う友人と「承認のシャワー」を浴びせ合うということ。ゲーム感覚でやってみるといいでしょう。

会社でやるならオススメ!――「タレント発掘ゲーム」

 私は企業研修の中でよく「タレント発掘ゲーム」というチーム対抗戦をやります。やることは至ってシンプルで、他者の「才能」や「強み」「長所」「貢献してもらったこと」などを見つけて、それを本人に向かって言ってあげるのです。

 最初は中身までは分からないので、外見をほめることから始まります。「そのネクタイ、センスいいですね!」「笑顔が素敵ですね!」「よく通る声ですよね!」といった具合です。

 大抵の人は、人を面と向かってほめたり承認したりという習慣がないので、最初は、ぎこちない感じで始まりますが、才能や長所を見つけようという視点で人を見て、会話をしているうちに、どんどん相手のことが分かるようになってきて、次々と内面的なほめ言葉が出るようになってきます。

 「一見クールに見えるけど、実はすごい情熱を持ってますよね」「みんなが思いつかないような視点を持っていますね」「リーダーシップがありますね」「場を盛り上げる力がすごいですね」「人へのさりげない気遣いが素敵ですね」「みんなから意見を引き出すのが上手いですね」「洞察力がすごいですね」そんな具合に、どんどん出てくるようになります。

 そのフィードバックした数をポイントとしてつけてもらい、どのチームが一番たくさんのポイントを稼げたかを競うのです。

 所詮ゲームだからと分かっているにも関わらず、強みや長所を指摘してもらえると、誰でも無条件にうれしくなるのが不思議です。それにこのゲームは、他者の良いところを常に意識していないとポイントが稼げないので、ちゃんと的を射たほめ言葉が出てくるようになります。これがとても効果があるのです。「そこをほめてもらえるのは、すごく嬉しいな!」という感想が出てくるのです。

 これをやると、とにかくみんなのモチベーションが俄然上がります。そして、自尊心を持つようになり、セルフイメージが上がります。「オレもまだまだできるぞ!」「私にもちゃんと人から認められる価値があるんだわ」と感じるのです。こういう時の人間は、案外単純ですね。そして、お互いがけっしてウソをついているわけではないので、本当の自信にもつながるのです。

居酒屋でもできる

 これは研修でやっているゲームですが、これをあなたの気心の知れた友人と二人でやってみるのです。辛口の友人やアナライザータイプの友人よりも、できるだけ優しく、思いやりのある友人を選びましょう。

 喫茶店で男同士見つめ合ってお互いにほめ合っていると、まわりの人たちから怪しまれる可能性がありますので、居酒屋など少しにぎやかなところで、ワイワイと笑い飛ばしながらやるのがポイントです。

 「お前、よくそんなところに気がつくよな。そんな視点オレにはないよ」「お前、理想がメチャメチャ高いよな。その志の大きさは半端ないな」「お前といると、いつも必ず元気が出てくるんだよな。人を元気づけるオーラを持っているよな」「人に何と言われようとも、軸を絶対にぶらさないお前の信念は本当にすごいよ。そこがお前の強さだよな」

 こんなふうにお互い「承認のシャワー」を浴びせかけるのです。すると、何とも言えない穏やかで、どっしりとした気持ちになるはず。たったこれだけで、自信や自尊心を取り戻すことができるのです。心に十分な栄養を与え、セルフイメージを高めたい時にはぜひお試しください。効果の大きさに驚くことでしょう。

筆者紹介:千代鶴直愛(ちよづる・なおよし)

 リード・コミュニケーションズ代表取締役。ビジネスパーソンの内なるパワーを解き放つ人材育成コンサルタント。業績不振に喘ぐ大規模事業部を半年でV字回復させたり、低迷していた中堅企業をわずか2カ月で成長軌道に乗せたり、400店舗中ワースト20の店舗2店を全店舗中ベスト5に導くなど、V字回復のプロフェッショナル。キャリア開発、意識変革、コミュニケーション、リーダーシップ、部下育成等のテーマで研修を行い、常時、受講者満足度95%以上のパフォーマンスを維持してきた。中でも特に、40代管理職の人材育成を得意としており、業績の低迷に悩むマネジャーやミドルを、これまでことごとく蘇らせてきた。2度に渡って人生のどん底からはい上がった自らの経験が、ビジネスパーソンに勇気を与える要因の1つとなっている。

 著書に『自分の値段がズバリわかる』(かんき出版)、『ビジネス・バカを極めろ』(ビーケイシー)、『「豊かさ王国」への完全移住マニュアル』(徳間書店)、『成功と幸せの法則 最終ハードル』(徳間書店・訳書)、『自信の作り方・持たせ方』(アイ・イーシー・通信教材)がある。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ