――時間の使い方で、一番大切にしていることは何ですか?
何があっても、私の中で最も優先するのは「家族」です。第一に家族がベースにあり、それ以外の時間で何をできるのかを考えます。
私はライフネット生命保険でIPO(新規株式公開)の準備にも携わっていたのですが、そんな忙しい状況でも子どもの出産時に有休を消化することで、しばらく週休3日の生活をしていました。もうすぐ2人目の子どもが生まれるんですが、今度はまとまった休みを取ろうと思っています。
独身時代は、時間が欲しければ取りあえず睡眠時間を削れば良いと考えていました。しかし家族がベースになると「どうすれば時間を作れるか」と考えます。良い意味で制約が生まれることによって、発想が広がっていくものです。結婚や出産が、私にとって時間の使い方を考えるキッカケになりました。
――家族との時間作りで工夫していることはありますか?
家族との時間は限られます。子どもが産まれたことで、特に妻と2人きりの時間は取りづらくなりました。そこで、私は「一点豪華主義」な時間の使い方をしています。
時間が限られているからこそ、一緒に過ごせる時間は少しぜいたくに。時間は午前休を取ったり、昼休みを一緒に過ごしたりするなど工夫しています。少しきれいな服装をして、おしゃれなお店で食事をする。それだけでも、夫婦にとっては大切な時間になります。
またできるだけ、私が保育園へ子どもを送るようにしています。帰宅時間は仕事の状況によって読めませんが、朝の時間なら決まっていますから。子どもと一緒に笑顔で1日をスタートすると、その日は自然と楽しいムードで1日を過ごせるんです。
――仕事以外での時間を作り出すために、どんな取り組みをしていますか?
まず、夜に予定を入れてしまうことですね。別に特別な用事ではなくても「子どもをお風呂に入れる」「食事に行く」「勉強する」といったことで十分です。オシリを決めると、仕事のパフォーマンスが1.3倍にはなりますよ。
また「やらなくて良いこと」を決めるのも、大切ですね。何もかも全てに対応していたら、時間がなくなるのは当たり前です。定期的に仕事の仕分けをすることで、本当に必要なことと、そうでないことを明確にします。必要ないことをなくせば、その分だけ時間が生まれます。知らないうちに必要のない仕事が生まれてしまうので、あくまでも「定期的に」行うことが大切です。
重要なのは、情報のインプットとアウトプットの仕方ですね。どういう仕事の仕方が合っているのかは、人それぞれ異なります。いつ、どんな方法で、何をするのが良いのか。無理やりいろいろなことをやろうとせず、自分の特徴を見極めることが第一ではないでしょうか。
――「働きやすい職場作り」に取り組まれているとのことですが、会社として実際に行っている工夫を教えてください
まだ定着したものではないですが、テスト的に新入社員に「朝メール」を送ってもらっていました。これは朝一で、「今日は何をやって、何時に帰るのか」を事前報告させるんです。もし予定通り帰れなければ、何が原因かを考え、見直すことができます。結果的に無駄を省いたり、効率性を上げたりすることにつながるわけです。
何をすべきか。あるいは何ができるのかは、個人によって異なる。堅田さんは「人生のステージの中で、何が必要かは違う」と語ってくれたが、これもまたその通りだろう。ときには、がむしゃらに仕事に打ち込む時期も必要かもしれない。
もちろん、堅田さんの取り組みを必ずしも誰もができることではない。しかし意識や考え方は、貴重な参考情報になるはずだ。1つの実例としてエッセンスを読み取り、現在の状況や価値観、求めるワーク・ライフスタイルに応じて、皆さんにも自分に合った働き方を見い出してほしいと思う。
私が特に共感したのは、「やらずに後悔したくない」という点だ。あきらめる理由を探すのはたやすいが、それでは何も始まらない。どんなに困難に思えても、やりたいのならやってみる。あきらめる理由ではなく、やるための方法を考える。
友人の誘いなど小さなキッカケから興味を持ち、始めたものが、いつしか大切な趣味になったということも良くあるだろう。子どもが補助輪を外した自転車にまたがり、何度も転びながら「もう無理だ」と言いつつ、いつの間にか平気な顔で片手運転までしている。
そんな経験だって、誰もが1度や2度はしているはずだ。そう考えれば、今から抜け出すには「やってみる」ことが非常に大切なポイントになりそうだ。次回は、その点をもう少し深く考えてみたい。
1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。
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