Wi-Fi対応の「ScanSnap iX500」、スマートデバイスからのワイヤレススキャン機能を試してみた(後編)仕事耕具(3/3 ページ)

» 2012年11月30日 09時00分 公開
[森田秀一,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3       

整理機能も充実! 外部アプリ連係でクラウドへのアップロードも

 原稿をファイル化した後の整理・処理機能についてはどうだろうか。「ScanSnap Connect Application」のメイン画面では、ファイル名がサムネイルとともに並ぶ。ファイル名を対象としたフリーワード検索も可能になっている。ソート順の切換やフォルダ管理ができれば、さらに便利だったろう。

 地味ながら効果的なのが、ファイル名を後からでも変更できること。スキャナの多くはファイル生成時に日付や時刻を自動割り当てするのが一般的で、iX500でも同様。スキャンする原稿の数が多いときは名前付けの手間を省けて重宝するが、画一的過ぎて目的のファイルを探しにくくなるデメリットもある。そのために各種の整理機能もあるわけだが、なんやかんやでファイル名を変更できさえすれば、一番汎用性が高いし、効果的だ。


キーワードでのファイル名絞り込みが可能。ファイル名を後から変更できるので、なにかと便利

 取り込んだファイルの細部を、ピンチイン/アウトで拡大縮小表示することも「ScanSnap Connect Application」単体で可能だ。もちろん、外部アプリとの連係機能も用意されているため、印刷、メール添付、各種クラウドへのアップロードなどもできる。


左は生成したPDFを開いたところ。外部アプリと連係すれば、メール添付やクラウドアップロードも可能だ

PCからもワイヤレスで使いたかったけれど、スキャン速度は大いに魅力

A4用紙はもちろん、名刺読み取りも高速なiX500。「自炊まではちょっと……」という人にとっても十分便利に使える

 以上、前後編の2回に渡ってiX500の使い勝手を調べてみた。今回のレビューは製品発売前に実施したので、機能やドライバの更新も今後あり得る。ただ、それでもやはり、現状において「PCからワイヤレスで使えない」「PCからの利用にはUSBケーブルが必須」である点が残念だ。

 競合製品との比較で言えば、ブラザーの「ADS-2500W」が、PCどころかスマートフォンも使わずにすむスキャナ単体でのクラウドアップロードを実現している。ただ、PFUは「ScanSnap N1800」というビジネス向け高級機で同様の機能を提供しているため、その製品と差別化するという狙いがあるかもしれない。

 これらの製品は価格帯や同梱ソフトがまったく違うため、比較するのもナンセンスかもしれない。だが、iX500はWi-Fi機能をせっかく載せているにも関わらず、PCからワイヤレスで使えない点が非常にもったいない。

 一方、ドキュメントスキャナとしての着実な進化は、現時点でも十分実感できる。書籍の自炊を積極的に行うユーザーであれば、100ページ超のスキャンは日常茶飯事のはず。従来機から約25%の向上となったスキャン速度、消耗部品の高耐久化は、長く使えば使うほど、じわじわ効いてくる部分だろう。

 「ScanSnap Connect Application」による、スマートデバイスからのワイヤレススキャンは速度面での不利がほとんどないため、PCとはまた違った気軽なスキャン用途にも向いていそうだ。例えば結婚式の案内状をスキャンしておき、当日の式場道案内に使ったらサッと削除するか、あるいは思い出として大切に保存しておくか、その時になって決めるといった用途などはどうだろう。簡単に、しかしスマートフォン内蔵カメラを遙かに超える品質でデジタル化できるのは、スキャナの強みだ。

 基本性能の向上につれて、スキャンに関するユーザー意識も変わってくるかもしれない。例えば「捨てる前に念のためスキャンしておくか」という価値観の醸成だ。

 机の上に書類があふれかえっていても、捨てるに捨てられない。捨てれば机の上が広くなる。そもそも、書類の保存には物理的な限界があり、いつかは捨てなければならない。それならいち早く捨てたほうが精神衛生上もいい。しかし、そうはいっても……という悪循環がある。

 iX500級のスキャン速度であれば、それこそ廃棄書類をシュレッダーにかける感覚とでも言おうか、とにかく気軽にスキャンできる。読み取り設定も「自動」任せにし、ファイル保存先をクラウドにしてしまえば、PCの空き容量の心配は減る。あとは、電車での移動中にスマートフォン経由でそのファイルを閲覧し、必要・不必要を改めて判断するのもいいだろう。

 もちろん、iX500なら名刺の複数枚連続スキャンも万全。スキャナ一体型のプリンタ複合機では、ADF搭載でなおかつ厚口名刺を連続スキャンできる機種はそうそうない。この分野はドキュメントスキャナの独壇場と言える。

 名刺は仮にOCR処理が正しく行われていなくても、管理ソフト側で“名刺スキャンをした日時”が間違いなく記録される点は非常に大きい。「今年の春ぐらいに会ったA社の人、名前なんて言ったっけ?」というような場合でも、名刺をもらってすぐスキャンするクセさせつけていれば、時系列で名刺を簡単に発見できる。

 ドキュメントスキャナ市場は、PFU、キヤノン、エプソン、ブラザー、パナソニックなど、大手だけでも5社が入り乱れる混戦模様。メーカーにとっては厳しい戦いかもしれないが、ユーザーから見れば、こんなに理想的な状況はない。今後、各社が競い合って、性能やコストパフォーマンスがより高まっていくことをいちユーザーとして期待したい。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ