「LCCはただ低コストなだけじゃない」 ピーチ流のユニークな働き方とは?LCC“ピーチ流”の働き方(3/3 ページ)

» 2012年07月17日 12時30分 公開
[上口翔子Business Media 誠]
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社内物品はオークションで安く入手

 社内物品の調達も、LCCのピーチらしい。社内の電話や机、椅子などは中古ショップでの購入や社員からの寄付、さらにインターネットオークションでの購入でまかなっているのだ。確かに社内を見渡すと、机も椅子もすべてバラバラのものを利用していた。

 「MOMOYAを運用しているPCも、ある会社がリニューアルをすると言うので安く譲ってもらった。先方が郵送しますか、と言ってくれたが、その郵送代がもったいないので、また来ますと言って置いておいてもらい、再度訪問したときに持って帰ったほど」(野村部長)

手作りのチェックイン機

 「これこそピーチ流」(野村部長)なのが、手作りのチェックイン機(発券機)だ。

 「空港に行くと、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)といった航空会社の立派な自動チェックイン機が置いてあるが、ピーチの場合は見ると分かる通り、いかにも手作りといった感じ。PCとプリンタなどを組み合わせてラックに入れたんだなあと。まさにその通りで、自分たちでお店に売っているものを買って組わせて、設定して、設置した。ラックも近所の家具屋さんにちょっとお願いして作ってもらって。そんな感じで、自分たちの中でいかに内製化の率を上げていくかにこだわった」(野村部長)



 簡単な仕組みにすることで、内製化でき、結果として1台当たりの単価も下がった。手作りのチェックイン機は、ピーチが目指す回答の1つかもしれない。

 ただ1つ強調したいのは、先ほどのネットオークションの件もそうだが、コスト削減をするためにピーチは楽しみながら工夫をしているという点だ。チェックイン機を作った際も、実際に設置をして搭乗客がそれを利用している姿をしている際には皆で「やったーやったー」と言いながら喜んだという。「空港で片や何百万するチェックイン機とピーチの手作りチェックイン機がならんでいるのを見ると、あーLCC実践しているなあと実感する」(野村部長)

 仕組みと一緒で、機能についてもシンプルだ。例えば、搭乗前に席を選択できる機能はピーチのチェックイン機には備えていない(予約時には選択可)。これについて野村部長は「好きな席が取れた方がいいのもあるが、それは予約時に選択できるので、むしろ発券時には少ないステップで手続きができるメリットがある。ピーチとしてもお客さんが早くチケットを取れるのでチェックイン機の台数が減り、その分作成費や賃貸スペースを抑えられる。シンプルにするだけでさまざまなコストの連鎖が生まれる」と話している。

ピーチ流の働き方を現場はどう思っている?

 ではこうしたピーチ流の働き方について、現場のスタッフはどう思っているのだろうか。

 野村部長は「ピーチ(LCC)だから、こんなもんだろうと思っている。恐らく普通の会社だったら1人1台電話があって、皆が同じPCが支給され、袖机で座席が決まっている。ピーチの場合は設立当初から働き方も含めてピーチらしくやろうね、と言ってきた文化があるので、清掃も皆でローテーションしてやっているし、電話も数が少ない分、社内コミュニケーションは直接の会話も増えている。コスト削減しているからこその価値の大きさも理解していると思う」としていた。

 人事・イノベーション統括本部としての今後の方針については「組織を超えてさらにさまざまな環境作りを目指す」という。具体的には、イントラネットの機能をさらに充実させ、営業のことは営業だけにおまかせとかではなく、顧客から吸い上げた意見を皆で共有できたり、逆にこういう提案をしては、部署や役職をまたいでコミュニケーションができる仕組みを設ける方針だ。

 「日常の、既存のコミュニケーションももちろんサポートするが、それだとどうしても組織が固まってしまうので、それを壊すようなコミュニケーションの仕掛けを作りたい。人数が増えて業務の形が整ったことで、せっかくのピーチのよさがなくなるのは避けながら、スタッフからいろんなアイデアが生まれるような土壌を作っていければ」(野村部長)


 2012年7月にフォートラベルが実施した「格安航空会社(LCC)の利用」に関する調査で、利用してみたいLCC、1位に選ばれたピーチ。評価される背景には、こうしたピーチ流の働き方があるようだ。日本初のLCCとして、今後も日本ならではのLCCモデルを確立していくことだろう。

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