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» 2019年12月05日 05時00分 公開

「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相マシリトが行く!【中編】(5/7 ページ)

[伊藤誠之介,ITmedia]

「監修全停止」の非常事態から生まれた『ドラゴンボール改』

平氏: このような苦労があって、現在の『ドラゴンボール』の成功につながっているというお話でしたが。その他にも内山さんから見て、鳥嶋さんには印象的なエピソードがいくつかあるとのことで、それをお話しいただこうと思います。

 今回は事前に内容をお聞きして、スライドにまとめてありますので。まずは「『ドラゴンボール』の監修全停止事件」と、タイトルからしておそろしいですね。

phot 『ドラゴンボール』の監修全停止事件(マレ提供)

内山氏: さっきも話に出ましたけど、人が入れ替わって、「これはやっていい」「これはダメ」といったルールができてくると、少し甘いところが出てくるタイミングが、何年かに一回はあるんです。そのときに鳥嶋さんから「『ドラゴンボール』の商品は監修を全部停止するから。バンダイだけじゃなくてバンダイナムコもバンプレストも、グループ全部を止めるから」という話が来るんですね。これは強烈ですよ(笑)。

 5年に一度ぐらいあるんです。逆に言うと5年に一度ぐらい、積み重なった何かが出てくるので。そのときはもう大変ですよ。グループ全体で大騒動。ただ、そこでネジは巻き直されますね。真剣さのネジというか、キャラクターとの向き合い方のネジはかなり巻き直されるので。その結果、クオリティーが上がると。

phot バンダイでは全事業部を含めた大事件に発展していた

鳥嶋氏: これもですね、内山さんの理解が不十分なので補足しますが(笑)。

 これは、バンダイの『ドラゴンボール』のカードゲーム「データカードダス」が当初は売れていたんだけど、KONAMIの『遊戯王』のカードが出てくると、『ドラゴンボール』のカードが売れなくなってくるわけです。理由は簡単で、これはバンダイの特徴なんですが、間口を作るのはうまいんだけど、奥行きを作るのがヘタ。スタートダッシュは良いんですけど、持続性がない。カードも、分かりやすいんだけど戦略性がない。

 それで『遊戯王』の事例を出して、「ちゃんとカードゲームを設計してほしい」という話をしたんだけど、相手に響かないんですね。だったら本気を出させるしかない。監修をいったん全部止めて、一切商品を出させない。その間に対案を考えてきて、と。

 一応、ヒントは出したんですよ。当初バンダイはカードとゲーム筐体を連携させたものを出していた。当時バンダイナムコができ、そこにはちゃんと内製の技術があると。カードゲームのルールを考えられる技術者を抱えているはずだから、「グループとして、ちゃんと『ドラゴンボール』のカードダスのゲームを構築して」と。もういいかげんな言い訳は許さないから、という理由で止めたんですね。

phot 『ドラゴンボール』という作品にいかに真剣に向き合うかが問われていた

内山氏: みなさんどうですか。大変でしょう?(笑) 本当に大変なんですけど、でも今のお話はごもっともで。それで実際、次にお持ちしたときは次に進むことができたんですね。

鳥嶋氏: このときの担当者は、今はバンダイにいる古澤君(古澤圭亮氏)という人なんですが、僕が感心したのは、改善案をすごくよく考えてきたんですね。新しいカードを出すにしてもすぐに対応するのは無理で、バンダイナムコの技術を使ってもちょっと時間がかかります、と言うんです。一方で、「その間はこういう対応をさせてほしい」という対案を出してきたんですが、彼の持ってきた対案が面白くて。

 『ドラゴンボール』は今、TVアニメが流れていないので、商品を売るのは苦しいと。「そこで、こういう案はいかがでしょうか」と古澤君が持ってきました。『ドラゴンボール』のアニメはいつも連載に追い付きそうだったので、原作だと数ページの内容を強引に引き伸ばしていて、そういう意味ではテンポが悪かった。「だからオリジナルで伸ばした部分を全部カットして、原作通りのアニメにしませんか? それをリマスターしてTVで流すのはどうでしょうか」と。その話を東映アニメーションのプロデューサーの森下孝三さん(現会長)にしたら、「それは面白い」と。これが『ドラゴンボール改』【※】につながるんです。

phot ※『ドラゴンボール改』: 本文中にもあるように、過去に放送された『ドラゴンボールZ』のアニメを再編集し、16:9のハイビジョンサイズに改編して放送した。2009年4月から11年3月まで放送された後、14年4月から15年6月まで第2期が放送されている(東映アニメーションのWebサイトより)

 その結果、もう一度子どもたちに『ドラゴンボール』のアニメを見てもらえました。それでしばらくしたら、ちゃんと設計した『ドラゴンボール』のカードゲームがグループ全体の戦略の下に出て、それでもう一回カードが売れるようになった。そういう経緯があったんです。

phot マシリトは本気で対案を考えさせるために監修を止め、一切商品を出させない状況を作った

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