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» 2019年12月05日 05時00分 公開

「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相マシリトが行く!【中編】(4/7 ページ)

[伊藤誠之介,ITmedia]

編集者は原作者を背負っている

鳥嶋氏: 内山さんが今言ったように、1つの作品を作るにはものすごい苦労があるわけです。『ドラゴンボール』は相当に苦労して作って、連載が始まってからも天下一武道会で(主人公である)悟空のキャラクターを立てるまでは人気アンケートが低迷していたし(関連記事「『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか」を参照)、アニメーションも会社の中でいろんな相談をできる人間がいないなか、孤軍奮闘をしてここまでたどり着いて、という経緯が自分の中にあるんですね。

phot マシリトは20代から前例がない中で「孤軍奮闘」をしながらマンガ、アニメ、ゲームの地平を切り開いてきた

 というなかで、連載が終わってアニメが終わったからといって、いいかげんなものを出されると、(それまで築いてきた)ブランドが壊れるわけです。子どもからすると、『ドラゴンボール』はいつまでも大好きな悟空の話なんですね。だからそれと違うものが出されると困るんです。一気にイメージが崩れるわけです。発売元がバンダイでも、クレームが来るのは『ジャンプ』編集部なんですよ。午後3時過ぎに、子どもから電話がかかってくるんです。「このゲーム、キャラクターが似てないね」って。だから僕ら編集者は、キチッとやらなきゃいけない。原作者を背負っている以上、最終判断は僕らですから。

 ただ一方でバンダイさんは、『ドラゴンボール』に限らずいろんな『ジャンプ』の作品を、アニメで支えてくれているスポンサーですから、そこは大事にしなくちゃいけない。

 実は、これは内山さんには言ってないんだけど、8月に発売を予定していたのがボツになって流れて、そうすると次にバンダイさんが言ってくるのは、11月か12月のクリスマス商戦だろうと。そこで出させないわけにはいかないので、さすがにOKして出させようと。だからそこでヘンなものを持ってこられたら困るな、と思っていたんですね。

 おまけに、集英社が『ドラゴンボール』の完全版【※】を12月に出すので、キャンペーンをいろいろやると。だから12月にゲームを出すなら、集英社もバックアップできるというのが読みとしてあったので。それでOKしたというのがあります。

phot ※『ドラゴンボール』の完全版 通常のジャンプコミックスとは異なり、A5判サイズで連載時のカラーページも忠実に再現されている。全34巻が発売中(集英社のWebサイトより)

内山氏: 結果的にゲームだけじゃなくて、『ドラゴンボール』のいろんな商品、コミックスの完全版だったりDVDのボックスだったりのタイミングがバッチリ、狙ったかのように合ったんですよ。まさに神タイミングで、ゲームがめっちゃ売れたんですね、おかげさまで。

 結果的に、そのボツからつながるタイミングだったり、作り方の真剣さだったりっていうことから、現在の『ドラゴンボール』ゲームの最新作まで、毎年途切れることなく、世界中のお客さまに何百万本とお届けできているんです。

鳥嶋氏: でもあのときは、ちゃんと生産してくれなかったよね? たしかすぐに品切れを起こしたんじゃなかったっけ。

内山氏: そうなんです。これもよく覚えているんですけど、予約特典で(ドラゴンボールの1つである)「四星球(すーしんちゅう)」を作ったんですよ。それもあって調子が良くて、最初の受注が18万本だったんです。

 それで鳥嶋さんのところに「18万本も受注が取れたんですよ」って報告に行ったら、鳥嶋さんから「50万本作っとかなきゃダメだ。バンダイは覚悟がないんだ」とご指導をいただいて(笑)。それで発売してみたら、国内で55万本ぐらい売れまして。鳥嶋さんが言った通りの数字でバッチリ売れたんですが、確かに品切れを起こしました。スイマセンでした。

phot マシリトはどんな「本質」を見ていたのか

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