スクエニは販売本数の内訳も公表している。国内の20年4〜6月期の販売本数は218万本で、このうちパッケージ版は134万本、ダウンロード版は84万本だった。世界全体でみると、全体の販売本数は621万本で、パッケージ版が273万本、ダウンロード版は348万本と、ダウンロード版のほうが約1.3倍も上回った。現在では店頭や通販でわざわざディスクを取り寄せる客は少数派になったというわけだ。
スクエニ2020年4〜6月期の販売本数内訳。国内の販売本数は218万本で、このうちパッケージ版は134万本、ダウンロード版は84万本だった(スクウェア・エニックス・ホールディングスのWebサイトより)欧米では元よりダウンロード版のほうが上回っていたものの、日本や欧米以外の世界各国でその現象が起こった形だ。新型コロナによる都市封鎖などの影響で、物理的に外を出歩けない地域もあったため、こうした要因がダウンロード販売を押し上げたとみられる。価格が低下しにくく、原価もかからないダウンロード版のほうが一般的に利益率が高いため、ダウンロード販売の好調がソフトメーカーの過去最高益に結びついたのだ。
予想外とされるソニーの“躍進”は今後も続くのか。業界に詳しいジャーナリストの河村鳴紘氏はこう分析する。
「今回の決算を見る限り、次の20年7〜9月期(2020年度第2四半期)も好調が続きそうです。現在、元寇を舞台に侍の活躍を描いたゲーム『Ghost of Tsushima』がヒットしていますが、同作は7〜9月期に計上される数字です。そこに『PSプラス』の数字が乗り、さらなる会員数の増加も望めそうです」
さらに、年末にはPS5の発売も予定されている。ソニーは5月に発表した20年3月期の連結決算では20年度の業績見通しについて、新型コロナウイルスによる感染拡大を理由にPS5発売の発表を見送っていたものの、今期の決算で公表した。
PS4やPS5を担う「ゲーム&ネットワークサービス部門」の20年度業績見通しは、売上高を2兆5000億円、営業利益を2400億円と予想している。予想売上高に対して、営業利益が約10分の1の9.6%しか見込んでいないのが特徴だ。ソニーはこの理由に「PS5導入にかかる販売費及び一般管理費の増加」と「ハードウェアの売上原価率上昇」を挙げている。河村氏がさらにこう解説する。
「シンプルに言うと『PS5の利益が薄い』ということです。既にPS5の価格と目標計画数が、内々では決まっているわけですね。いずれにしても、PS5発売までの売上高と利益の見通しも立ったため、今年度は乗り切れるでしょう。むしろ、PS5抜きでも、それなりの数字を作れてしまえそう……と思えるほどです。今後のポイントは、巣ごもり需要がどこまで続くかというところですね」
PS5登場前でも好調な業績を作れてしまったソニー。年末の発売後はどのような業績をあげるのか。ソニーの“倍返し”はいままさに始まったばかりだ。
河嶌太郎(かわしま たろう)
1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「DANRO」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌やWebで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。共著に『コンテンツツーリズム研究〔増補改訂版〕 アニメ・マンガ・ゲームと観光・文化・社会』(福村出版)など。
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