高年齢者雇用安定法が改正されて、企業は4月から70歳までの社員の就業機会を確保するよう努力しなければならなくなった。企業にとっては継続雇用と定年延長・廃止に加え、個人事業主として業務委託契約を結ぶなどの対応を迫られている。「70歳の働く場」の前編【定年後に「新天地」で挑戦する高齢者 中小企業の支援で新たな生きがい見つける】、中編【ホンダ「アシモ」の開発者がハサミメーカーを支援 定年後に「新天地」で挑戦する高齢者】では、シニア層が実際に活躍している事例をお届けした。
後編ではミドル・シニア層の実態について考えてみたい。組織の高年齢化が進めば、会社としての活力が低下するリスクがつきまとう。働かざるを得ない中高年層が増え続ける中で、企業の「お荷物」にならない働き方を考えてみたい。改正された高年齢者雇用安定法などに基づいて、管理職をはじめとした中高年の社員が社内にとどまり続けると、どんなことが起きるのか。シニア層が「働かないおじさん」と呼ばれないためにはどうすればよいのか。
多くの企業の実態を見てきたパーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員に聞いた。
40代、50代のミドル・シニア層を多く抱えると、当然ながら企業の人件費を圧迫します。大企業だからといって現行の雇用制度を維持したままでは将来が見えない状況です。一方で、この状態を企業が是正しようとしてしまうと、組織内のミドル・シニア層は昇進・昇格の可能性に行き詰まり、あるいは行き詰まったと本人が感じて、モチベーションの低下、ひいては能力の低下までも引き起こしてしまう可能性があります。
賃金やポジションの限界を組織が是正しようとしてしまうと、個々の社員のモチベーションや能力の低下という別の問題が浮上することになります。
こうした中でクローズアップされるのが、戦力として活躍している社員と、戦力外となってしまっている社員の二極化です。パーソル総研の調査においては、ミドル・シニア社員において、ジョブパフォーマンスを発揮している社員の割合は全体の20%程度にすぎないという数字が出ています。高処遇であるにもかかわらずジョブパフォーマンスを発揮できていない、いわば”お荷物”と見なされつつあるミドル・シニア人材の姿があります。
いま個人々が、社内での自らの役割や適性を見直し、再構築することが求められています。
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