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噴出する「働かないおじさん」 識者に聞く「“お荷物”と呼ばれない中高年の働き方」70歳の働く場【後編】(2/2 ページ)

» 2021年08月26日 12時20分 公開
[中西享ITmedia]
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一社にとどまることの弊害

 法律も改正され70歳になっても働ける時代になりました。雇用先があり、収入源があるということは、人生100年時代を迎える日本社会に生きる私たちにとって喜ばしいことのように思えます。ですが、これから働く社員に待ち受ける現実は、右肩上がりの賃金でもポジションの段階的な上昇でもありません。

 少なくとも賃金は55歳前後でピークを迎えます。定年延長やジョブ型雇用の導入に伴い、若手、中堅世代においても担っている仕事によっては、賃金も従来に比べると引き下げられてしまう可能性もあるのです。

 こうした中では同じ組織にとどまり、明示されたままに働き、異動を繰り返すことで賃金・ポジションが上昇するイメージでいると、長期滞留(キャリア・プラトー)の落とし穴にはまって抜け出せなくなってしまいます。キャリア・プラトーとは、キャリアが高台に乗り上げて停滞期に入った状態のことを指します。組織内で昇進・昇格に行き詰まり、モチベーション低下や能力開発機会を失うとして問題になっています。

シニア人材に対する具体的な課題感(出所:パーソル総合研究所)

 実際に、相対的な序列でしかキャリアを意味づけられていない人は、長期滞留に伴ってモチベーションや能力が低下します。それによってパフォーマンスも低下します。こうなると会社からは「お荷物だ」と揶揄(やゆ)されながらも、会社にしがみつかざるを得ません。

 確かに彼らにしてみれば、入社した時に約束されていた年齢上昇に伴うアップキャリアがほごにされたために、契約不履行だと愚痴もこぼしたくなるのかもしれません。ある意味では、時代の変化に伴う犠牲者ともいえるからです。とはいえ、その状態を嘆いても状況は変わらないことも確かです。

 そのために必要となるのがリカレント教育、つまり学び直しです。まず自分のスキルや経験が、ほかの会社だったらどんな賃金なのかを調べることから始めると良いでしょう。いまは賃金比較サービスサイトもありますし、単純に求人票を見比べてみてもいいです。その上で年収比較など、自分の気になった会社がどのような業務や仕事ができるのかを関心を持って見てみるのもいいですね。まずは自分自身の棚卸しをしたうえで、そこに対する市場価値に興味を持つことが重要です。

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