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ソニーを飛び出して会社設立 SREホールディングス西山和良社長に聞く不動産テックの展望経験に頼るビジネスを効率化(3/5 ページ)

» 2021年10月14日 09時18分 公開
[中西享ITmedia]

物件の査定時間を短縮

――実際にはどのような手法を使って不動産業界を変えようとしているのでしょうか。具体例を教えてください。

 1つの事例としては、不動産物件の査定があります。これまでは戸建て住宅やマンションの不動産価格を査定する際は、担当者が場所、最寄り駅からの距離、築年数や間取りなどを手入力して、経験と勘に基づいて価格を出していました。このために要する時間は査定書の作成も含め3時間ほど掛かっていたのです。しかも、査定結果と実際に売れた価格との誤差が7〜8%くらいありました。

 一方AIを使えば、たったの10分ほどで査定価格を出してくれます。しかも、入力は不動産の知識のない事務員でもできるので、コストも半分以下で済み、実際の成約価格との誤差も少なくなり査定価格の精度も高くなります。

 査定のベテランも高齢になればできなくなりますが、AIは歳を取りません。AIは最新の成約価格の情報も学んでいきますから、常に市場の最新情報がインプットされています。AIが出した適正価格より高く売ろうとしても、結局のところAIの出した価格が正しいことが分かってきて、最終的にはAIが出した価格の近辺で決まります。

――そうしたAIを使ったテックツールの仕組みはどうやって作ったのですか。

 社内にいる不動産プロと、60〜70人いるAIエンジニアが同じフロアに同居していて、商品企画の段階からどういうものをつくれば実務で使えるかを協議し、作ったものはまず現場で使ってもらいます。さらに現場の意見を踏まえて改修して、どの会社でも使える形にして外販しています。

――しかし、1億円以上もするような高額物件の場合は、売主はどんな人が買うのかを見ておきたいといったウェットな面がまだ残っているようですが。

 不動産取引の全てがデジタルに変わるのは短期的には難しいと思います。FAXを使って手続きをしていた世界から、ようやくITやAIを使う世界に移行してきた段階です。そこである程度の成熟期間をおいて、AIやITを使うのが当たり前の世界になってくるとかなり違ってくると思います。

 確かに高額物件ではそういう傾向がありますが、Z世代と呼ばれる20代の若い世代は対面で会わなくても、スマホやインスタグラムでコミュニケーションができてしまうので、そうした人たちが購買層の主役になってくれば、次第に変わってくると思います。そういう意味で、不動産DXはまだ幕が開けたばかりという状況です。

同社のAI不動産査定書サービスのイメージ

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