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ソニーを飛び出して会社設立 SREホールディングス西山和良社長に聞く不動産テックの展望経験に頼るビジネスを効率化(2/5 ページ)

» 2021年10月14日 09時18分 公開
[中西享ITmedia]

テクノロジーツールの外販が不動産を上回った

――ソニーが不動産業界に進出することは業界内部から警戒されませんでしたか。

 最初はAIやITを使って消費者利益を追求したいと思い、スマートな不動産事業をしようと考えていました。各社の社長と話してみて感じたことは、ソニーが不動産のシェアを奪うことを警戒していることです。社長さんたちから言われたのは「ソニー不動産のAI・IT技術を私たちにも使わせてほしい」ということで、そうしたニーズがあることに気付きました。

 もともとソニー不動産の狙いは、不動産業界をデジタル化して活性化することでした。このツールを活用して業界全体がWIN-WINになれば良いかなと思い、内部向けに開発したツールを18年ごろから既存の不動産会社に外販をし始めました。

 19年になると不動産業界だけでなく、銀行や証券会社にも売るようになり、テクノロジーツールの外販事業による利益の方が不動産事業よりも多くなりました。このため、もはや事業は不動産事業だけではなくなったので、同年6月に社名をソニー不動産からAIとITを使って事業展開するSREホールディングスに変更しました。

――SREの不動産仲介の特徴は、売りか買いのどちらかに専任することにしているそうですが、業界の大半は両方を手掛けて両方から手数料をもらう「両手取引」です。なぜ貴社は、こういうやり方にしたのですか。片方しかやらないと手数料収入が大幅に減るのではないでしょうか。

 売りと買いを同じ会社がすると、利益相反になる恐れがあるので、片手だけの取引に専念する選択肢があってもいいのではということで始めました。このやり方だと、手数料は半分になります。ですが、減った分を開発したテックツールを使って改善を進めることによって、利益を出せるよう努力してきました。

 その中で訪問して契約を取る獲得率を高めることができました。片手取引をしている企業が少なかったので、「お宅にお願いしよう」という依頼もあり、3年くらいで黒字化できました。そのツールを外販できるようにもなり、業績も拡大していきました。

 万が一、SREの社員がある不動産物件の売りと買いの両方の仲介依頼を受けた場合は、売主と買主との間で覚書を交わして、お互いが利益相反にならないことをあらかじめ確認しておくようにしています。片手取引だけをしている不動産仲介は、まだあまりないです。

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