――21年3月期の決算を見ると、大手商社5社の中で住友商事だけが赤字を計上し、ほかの商社との違いが鮮明になりました。22年3月期には2300億円の最終利益を予定していましたが、これまでのDX推進がターンアラウンドにむけての成果が出てくるのでしょうか。
昨年度は、コロナ禍の影響や産業構造の変化、自らの構造改革による撤退案件の影響などにより赤字決算となりましたが、その後、21年度第2四半期は、上半期実績としては最高益の2410億円となりました。通期見通しも、期初に予定していた2300億円から3800億円に上方修正しています。
ただし、内容はまだ市況好転など外部環境による部分が大きく、構造改革の成果は相当程度出ているものの、道半ばです。これからだと思います。
事業戦略の分類による事業ラインの位置付けの明確化と次世代戦略テーマを特定する中で、DXが進んでいる事業の足腰は強くなってきているので、中期経営計画「SHIFT 2023」の取り組みを通じて下方耐性のある年間3000億円以上の最終利益が安定的に出るように取り組んでいます。その活動の中でほぼ全事案に関係するDX施策が業績面にしっかり貢献することが重要だと考えています。
――DXの効果が見込めそうな分野はどこでしょうか。
一丁目一番地としては多様なデータを有するB2Cの分野で、スーパーのサミット、調剤併設ドラッグストアのトモズ、携帯代理店のティーガイア、不動産、米国で手掛けているタイヤ販売、農業関連分野などですね。
さらにエネルギー分野では電気の小売り事業も手掛けているJ:COMなどが挙げられます。B2Bでは米国における建機レンタル・販売事業など、またこの4月から立ち上げたEII(エネルギーイノベーション・イニシアチブ)の新エネルギー分野でもエネルギーの最適供給の仕組みなどDX活用が必須だと思っています。
――エネルギー分野の話が出ました。オーストラリアなどで手掛けてきた石炭事業は強い逆風にさらされていますが、今後はどのようなスタンスで臨みますか。
当社は、「気候変動緩和」を重要社会課題の一つと捉え、21年5月に「気候変動問題に対する方針」を開示し、より環境負荷の低い発電ポートフォリオへのシフトの加速を明確にしました。
ゼロエミッション化に向けて石炭火力発電事業は新規の発電事業・建設工事請負には取り組まず、2040年代後半には全ての事業を終え、石炭火力発電事業から撤退します。一般炭の鉱山開発事業については、今後新規の権益取得は行わず、2030年に持分生産量ゼロを目指します。
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