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ボッシュのクラウス・メーダー社長を直撃 ソフトウェアエンジニアを増やし「AIoT先進プロバイダー」へ急速に進むEV化(4/5 ページ)

» 2021年11月30日 05時00分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

急速なEV化への見解

――欧州では自動車のEV(電気自動車)化が加速しています。日本はEV化で大きく遅れているといわれています。トヨタ自動車の豊田章男社長は「急速なEV化は失業を招く恐れがあるので好ましくない」と発言しています。ボッシュは急ピッチのEV化をどうみていますか。

 (車の動力を推進力として伝える、エンジン、トランスミッション、クラッチなど)パワートレインの分野で働く場所と人数を比較すると、ディーゼル、ガソリン、EVの3つでは、それぞれ10人、3人、1人の違いがあります。(この人数の違いで分かるように、EV化が進行すれば失業問題が起きると指摘する)豊田社長の発言はその通りだと思います。

 一方、パワートレイン以外の分野では、すでに話したようにソフトウェアなど大きく伸びる分野があります。技術者の能力に違いはありますが、パワートレインからほかの分野への移行が必要になります。これを急速にすると複雑な問題が起きます。

 ドイツではいま、この移行を「もっと早く進めるべきだ」という意見と、「もう少し緩やかにすべきだ」という見方で議論が起きています。ソフトウェアエンジニアの教育、育成には時間がかかりますから、段階的に進める必要があると思います。政治家や政策決定者に対しては、もう少し時間をかけてほしいと要望しています。

――世界的に達成が求められているカーボンニュートラルに向けての取り組みはどうですか。

 ボッシュグループでは日本を含めた世界にある400拠点で、2020年に自社の燃料などにより排出する二酸化炭素のスコープ1と、電気の使用などにより排出するスコープ2を合わせた二酸化炭素排出量330万トンについては、省エネ、グリーンエネルギーの導入などによりカーボンニュートラルを達成しました。

 今後はこの取り組みの質を高めていきたいと思います。また、購入する外部製品や市場に出す製品など、上下流部分のスコープ3の部分(二酸化炭素排出量4億4800万トン)についても、30年までに15%減らす計画です。

 EV化により、われわれは25年までにEV関連商品の売り上げを現在の5倍に相当する50億ユーロ(約6500億円)に増やす計画を立てています。EVはグリーンなエネルギーを使うので二酸化炭素の排出量をさらに減らせます。また暖房器具の燃料にガスではなくて例えば水素を使うことで、私たちの販売する製品からの二酸化炭素の排出量を減らし、スコープ3の排出量を徐々に下げていくことになります。

ボッシュがカーボンニュートラル施策を進めているドイツのホンブルク工場(ソーラーパネル設置)
ボッシュの電力を供給するメキシコのドミニカ風力発電所。メキシコにあるボッシュの拠点全体に必要な電力の80%以上をまかなっている

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