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月給13万円 障がい者が、生き生きと働けるエスプールプラスの農園「わーくはぴねす」全国に30カ所開設(3/4 ページ)

» 2021年12月01日 15時57分 公開
[中西享ITmedia]

自治体も評価

 エスプールプラスは行政とも連携して農園を展開している。連携協定を締結した自治体は東京都板橋区、さいたま市、愛知県豊明市、大阪府枚方市など9自治体で、自治体に本社を置く企業などが農園を利用し、自治体に在住する障がい者を雇用している。自治体からの誘致によって初めて開設した愛知県豊明市にある農園は16年11月に3000坪の広さでオープン。現在21社の企業から114人の障がい者が働いている。豊明市の小浮正典(こうき まさふみ)市長は「障がい者の法定雇用率を達成したい企業と障がい者の就労ニーズをマッチさせる事業だ」と評価している。

 エスプールのような障がい者雇用のやり方について、厚生労働省の小野寺徳子障害者雇用対策課長は以下のようにコメントした。

 「全ての農園の実態を把握しているわけではなく、現時点において、法的な問題は確認していない。しかし、障害者雇用促進法では、共生社会の実現のため、障がい者が能力を発揮できる雇用の場を提供し、その職業的な自立を目指しており、企業に対しても、障がい者自身の努力に協力し、適切な雇用管理を行うことを求めている。こうした理念に照らし、本事業に関しては、関係者などからも疑義が呈されているところであり、農園を利用する企業側も含め、障害者雇用促進法の趣旨について十分に説明していきたいと考えている」

ソーシャルファーム わーくはぴねす農園 Plus 東京板橋

ノーマライゼーション

 実際に農園を利用している企業の声を聞いてみた。SMBC日興証券の特例子会社、日興みらんの松川治取締役は語る。

 「農園を利用する目的は2つある。一つは、障がい者にそれぞれの能力を発揮できる就労環境を提供し、雇用を促進すること。障がい者の方々が『持続的に生き生きと働ける企業』『働く喜びを実感できる企業』を目指している。もう一つは、農園でSMBC日興証券の社員と障がい者が一緒に1日作業をすることで、社員がさまざまな心身の特性を持つ人と相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う『心のバリアフリー化』を目的としたノーマライゼーション研修を実施することだ」

 研修目的の農園での作業は16年から実施しており、これまでに合計658人のSMBC日興証券の社員が千葉県・市原の農園で一緒に働いた。この結果、得られたことは、自分とは異なる条件を持つ多様な他者とのコミュニケーションを通して障がいの有無に関係なく、互いに助け合いが必要だと体験したことだという。

 農園では現在25人(知的障がい14人、精神障がい9人、身体障がい2人)が就労していて、SMBC日興証券の障がい者雇用率は2.6%を超え、法定雇用率を超過達成している。「今後はコロナ禍なので、地方の社員もズームなどを使って参加者を広げるなど、この活動を続けていきたい」(松川さん)という。

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