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月給13万円 障がい者が、生き生きと働けるエスプールプラスの農園「わーくはぴねす」全国に30カ所開設(2/4 ページ)

» 2021年12月01日 15時57分 公開
[中西享ITmedia]

企業の半数が法定雇用率に未達

 従業員が43.5人以上いる事業主は、法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用する義務がある。3月1日からこの比率が、民間企業は従業員数の2.2%から2.3%に、国、地方公共団体は2.5%から2.6%に、都道府県の教育委員会は2.4%から2.5%にそれぞれ引き上げられた。

 法定雇用率を達成している企業の比率は、20年6月1日現在48.6%だった。比率は徐々には増えてはいるものの、半数にも届いていない。特に従業員100人以下から43.5人以上の中小企業では、障がい者雇用ゼロのところが93%もある。障がい者雇用についての経営者の意識の低さが浮き彫りになった。

 未達成企業で従業員100人を超える企業はペナルティとして、雇用不足1人に対して年間60万円を納付しなければならない。納付金額の合計は20年度で369億円になっている。一方、障がい者雇用人数が法定人数を上回る場合は、調整金として1人に対して年間32万4000円が支給される。

 障がい者雇用は企業にとっては達成しなければならない課題ではあるものの、半数の企業が未達成であり、納付金でしのいでいる実態があることは以前、指摘した(松屋フーズ、ヤマト、KDDI、第一生命 先進企業に探る「障がい者雇用」の本質)。大企業の多くは障がい者雇用のための特例会社を設立して、一括して雇用しようとしているものの、それでも職場の確保が難しい。各企業での仕事内容は、郵便物の仕分け、清掃、不用品や不良品の選別などといった単純労働が多く、そこで働いている障がい者は飽きやすく長続きしない傾向がある。

 最近はこうした仕事は外部業者に外注することも多く、オフィスはペーパーレス化やテレワークが進み、なおさら障がい者に適した仕事を見つけづらくなっている。中でも精神障がい者は、自宅に引きこもりがちで、働ける場所が見つけられない実態がある。

月給13万円

 農園で働いてもらった場合の企業における経費負担は、どうなっているか。例えば重度障がい者1人、軽度障がい者2人を雇用した場合、月に支払う給料や利用料、障がい者使用の養液栽培装置などを含めて1人当たりの費用負担が月23万円になる。月別の経費として計算すると企業内で障がい者を雇用するよりも費用が抑制されるという。

 一方、農園で働く障がい者は、東京都内の場合は最低賃金を上回る月額約13万円の給料を受け取ることができ、さらに福利厚生も付いてくるという。障がい者の就労継続支援B型施設で働いても月額1万〜1万5000円程度しか受け取ることができない。そのため、これに比べるとはるかに多い金額で、本人や家族にとっては、大きな喜びと同時にやりがいにもつながる。

 農園で採れた野菜をどうするかについては、多くの会社の社員に福利厚生として配ったり、社員食堂で使われたりしている。レストランなどの市場に販売する計画もあったものの、安定供給の面で難しさがあるため、現状では有料販売に至っている企業は少ない。

エスプールプラスで最大規模の貸し出し農園「さいたま岩槻ファーム」

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