ではなぜ僕はAllegretto M70を手に入れて、こうしてニヤニヤしながら写真を撮影しているのか。欠点はたくさんある。けれど憎めないこのクラシックデジカメにやられてしまったのだ。
写真機材の世界は、もともと閉鎖的だった。光学機器、つまりレンズとカメラを作る技術は何か特別なものとして捉えられていた。そこに家電メーカーが参入するのはかなりハードルが高かった。
ところが写真がデジタルになった瞬間、家電メーカーが色めき立った。「あ、自分たちもカメラ作れるな」と。ソニーがデジタルビデオカメラの経験を生かして派手に製品を投入したが、東芝も負けてはいなかった。それがこのAllegretto M70なのだ。
Allegretto M70の魅力は、徹底したオリジナリティだ。ネーミングも、アルミダイキャストボディも、けなすのは簡単だが他にない個性だ。この時代に皆が採用したソニーのCCDだが、Allegretto M70だけはシャープの1/1.8型CCDを搭載している。この素子は発色がとてもやさしい。この色はたぶん他のメーカーでは出せない、とても日本人的な色だ。
僕はずっとカメラマンとして生きてきたから、カメラメーカーの主張で洗脳されていたのかもしれない。もっと家電メーカーからのアプローチも聞くべきだったのかもしれない。写真はできあがったものがすべてだから、その過程の機材などはどうでもいいことなのだ。
Allegretto M70の撮って出しのJPEG画像はなかなか心地よい絵だ(ときどき失敗するが)。広角側より近接撮影のほうが画質がよいようだ。
好きになったものは仕方がない、これからも多分ときどき取り出して、アルミの質感を愛(め)でながら撮影をするのだろうと思う。
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