ついに最終回となったシャッツキステの本紹介連載。ミソノ、エリス、レイラ、サヤが全員集合です。
ゆっくりと季節が移り変わり、緑の葉が眩しく輝くころ、メイドが営む図書館の一角で、ひとり本を手にした私設図書館シャッツキステの司書メイド・ミソノがいました。ミソノは何の本を開いているのでしょうか……。
…………。
何を読んでいるんですか?
あら! ぱらぱらとめくるつもりが、つい夢中になってしまったわ。
児童書ですか?
『クローディアの秘密』というの。初版は1975年になっているから、翻訳されてからもう40年も経っている本なのねぇ。
40年前!? そんなに昔の本なの!
わ、エリスさん!
まったく、エリスさんったら大げさなんだから。絵本や児童文学に限ってみても、40年前の作品ってそんなに珍しくないでしょうに。
レイラさんも!
うふふ、そうですね。ずいぶん前のような気がしますが、この作品の魅力はちっとも衰えていないような気がしますよ。冒頭……主人公のもうすぐ12歳になる少女、クローディアは家出を計画します。でも彼女は、無計画に飛び出たりなんてしない! どうせ行くなら気持ちの良い場所、その上できれば美しい場所がいいわ、と行く場所を選定します。
美しい場所に家出? 自然いっぱいの湖畔とかかしら?
いやいや、この子「遠足さえも、虫がいっぱいいたり、カップケーキのお砂糖が太陽でとけたりして、だらしない、不便な感じです」って思っちゃうんですよ! 大自然で野宿派ではないみたい。なかなかイマドキっぽい感じ。
クローディアは弟を連れて家出をするのですが、これがまた計算高い! 弟は貯蓄が好きなので、こっそり賭けトランプでひと儲けして、お小遣いをためているんです。弟は財源!
ちょ! 賭けトランプって、かなりワイルドな子じゃないですか!
うふふ。その辺りはちょっぴり時代掛かっているかしら。弟のジェイミーは機転の利く少年なんですよ。そんな姉弟が向かったのは、気持ちよくて美しい……メトロポリタン美術館です。クローディアは、バイオリンのケースの中に着替えを詰めて、トランク代わりにして出発です。
バイオリンケースをトランクにするって、なんだか少し憧れるわよね。
その上、こっそり美術館に隠れ住んでしまうんですよ! もちろん見つかっちゃいけませんもの。あれやこれやと工夫をします。夜は展示品のルネサンスの豪奢(ごうしゃ)なベッドで眠ったり、秘密の暮らしをしていくわくわく感!
ふふふ。守衛さんを巻くのにがんばってるなんて、ほほえましいスリルですね。
彼女たちの家出は、冒険のよう! でも、ここからがこの本の真骨頂です!
クローディアたちは、やがて美術館内でひとつの展示品に魅かれます。その展示品、小さな天使の像には、とある秘密が隠されていることに彼女たちは気付き、それを解き明かそうと謎解きをはじめます。やがてその謎の鍵を握る人物にクローディアたちは接触し……。
黒幕登場なのかしら?
そうですね……とても素敵な黒幕ですよ。でも、その素敵さに気いたのは、大人になってからかしら。謎解きをする会話のひとつひとつが、ふと胸にしみるんです。「秘密は人の内側で力を持つ」……そういう言葉が、自分の中の心の引き出しを開けて、ストーリーに関係のないことなんか思い出したりして。
本を読むって、孤独な作業よね。文字と向かい合っている時は、たったひとりだもの。
そうですね。ストーリーの面白さに身をゆだね、長い時を得た物語を味わってうっとりとしながら、ふと、全く違う事をひとしきり考えてみたり。そして、一呼吸を置いて、また物語の中にダイブする……ちょっとくらい思考があっちこっちしても大丈夫。そこは児童書ですもの! どーんと分かりやすく、物語に戻ることができます。
さっきの「秘密は人の内側で力を持つ」に少しだけ似ていますね。同じ本を読んでいても、傍で見ているだけじゃ、その人がどう思っているかまでは分からない。その人の内側で、読んだものが力になったかどうかは、その人次第ですよね。
だから、ついついお勧めの本を持って、「聞いて聞いて! この本ね……」とやっちゃうのよねー。こんなにわくわくしました! って。
自分の信じるものをそっと胸の奥にしまって置くも良し、分け合うも良し……クローディアたちと黒幕は……秘密をどう取り扱うんでしょうね。私は、この図書館でメイドたちがお勧めの本を語ってくれるのは、とっても楽しく思いますよー。うふふ。
秘密を胸に、気持ちも行ったり来たり。『クローディアの秘密』は小さな、でも、たくさんのわくわくと、大人になったからこその思いが読み取れるのではないでしょうか。
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