続・いまのIT組織でいつまでやっていきますか?:何かがおかしいIT化の進め方(16)(4/4 ページ)
今回は前回に引き続き、IT組織体制を考える。前回は、多くの企業が現在抱えるIT組織の問題を俯瞰(ふかん)し、将来への組織体制を「立場が持つ競争力」と「人材開発投資の回収の可否」の2点から考えることの必要性について説明した。今回はIT部門の機能の将来を中心に考える。
(3)アウトソーシング業務の管理、システム管理と開発・保守
アウトソーシングの進む中では、業務のくくりを開発と運用・保守という機能で分割するより、アプリケーションシステム(分野)の単位で分割し、この中に開発、運用管理、保守機能を位置付ける考え方の方が、“質”の向上に対する知識蓄積に有効であるように思う。また、意識すれば保守業務は、ユーザー業務の理解、実際的なシステム構成法を会得するうえでの絶好の機会になる。
なお、ユーザー部門の業務現場のスリム化が進む中で、業務プロセスの実態を把握した要員も、全容を記録した資料もなくなりつつある。情報システムは業務プロセスの写像である。失われていく現場情報に代わる情報源として、多少手間が掛かっても正統的な方法でのシステム保守と、ドキュメント内容のメンテナンスを正確にやっておく有用性と必要性が増してくる。
これがシステムの陳腐化を防ぎ、長い目で見るとシステム費用の節減につながり、さらに次の段階での問題発見のための地図になると思う。
また、分散体制を取る場合、企画や設計の上流工程は統括ルールを基に自律分散化を進め、下流工程のアウトソーシングは集中して一本化した窓口からアウトソーシング先に当たる形にする方が、システムの整合性の保証のためにも、また取引上も有利になると思う(世の中ではなぜかこの逆の形のケースが多い。それではコストは膨らみ、内容はバラバラになって当然だ)。
(4)情報子会社の役割と位置付け
そもそも情報子会社とは、“親会社の事情に精通しており、外部のSIerより優れた内容の仕事をスムーズにできる”という前提で、さらに“独立した会社になることにより意識改革が進み、専門性が高まってより効率的な運営ができるようになる。うまくいけば外部からの収入も期待できる”といったことが、各社の期待であったと思う。しかし、実態はそのように進んだであろうか。
親会社の業務を請け負うサービス子会社の運営は相当難しい問題である。“別会社になったために、業務知識や業務への関心や理解力が失われてきた。親頼みの甘い体質はなかなか改善できない。外販の位置付けがなかなかは安定しない……”、こんなことにはなっていないだろうか。
子会社ならではの仕事の質的内容と、効率面では競合相手であるSIerに対する競争力の確保が必須条件である。いま一度、初心に帰り、役割と位置付けを見直す時期ではないだろうか。
おわりに
IT部門の大切な役割の1つは、事業・業務部門への実業務を通じた啓蒙(けいもう)である。IT化がうまく進むほど、社内の理解が進むほど、IT部門の役割は限定されてくる。人と仕事に質が問われてくる。それが支援機能組織の宿命である。
profile
公江 義隆(こうえ よしたか)
ITコーディネータ、情報処理技術者(特種)、情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる
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