理想的な上司と部下の関係とは――部下の育成方法:何かがおかしいIT化の進め方(17)(4/4 ページ)
IT業界でも“人の育成”が問題になっている。しかし、一部で話題の能力向上自己責任論は現実的ではない。独力で力を付けられる人間はごくわずかだ。部下の育成は「上司・管理者の大切な業務の1つ」だと考えるべきである。今回は、上司と部下の関係や部下の育成方法などを考える。
もう1つ、大切なことがある
例えば、外国人と仕事をしていて、同じ問題に対して同じことをお互いにいいながら、「相手の考えていることと、自分の考えていることが何となく違う」と感じることがある。これはその問題の背景にある概念(コンセプト)に違いがある場合によく起こる。
IT・情報システムというものに対する概念も、米国と日本では、また会社や業種によって何か違いがあるように感じることが時々ある。
当人にとっては、新しい概念(考え方や価値観、全体がどんなことか、どんなものか……)の把握や理解は、分かってしまえばなんでもないようなことでも、そこへ至るまでには大変苦労する場合が多い。世の中の多くの具体的な事象は、ある概念の上に構成されている。概念は全体と個の関係からいえば全体に相当するものであるが、抽象性が高いために言葉の説明だけでは理解や納得が難しい場合が多い(概念について関連記事:本シリーズ 8、9、10回)。
自分にとって新しい概念を理解しようとするときにも、自分の持っている既存の概念で新しいものを理解しようとしている。そのため、聴いたことや書いてあることは知ることができたが、理解できない・納得できないといったことがよく起こる。
自分の既成の概念との間で合理性に反するものであったり、そもそも自分の中になかったものであったりするからである。合理性に反するものは、“その新概念は間違っている”とそのものを否定するか、新概念に対する“自分の理解が間違っている”と思ってしまうかのいずれかになる。いずれの場合も、結果的に理解できなかったことになる。
話を聴く、会話やディスカッションの相手をするなど、分かっている人の助けの有無が新しい概念理解のスピードを大きく左右する。また、ここでの会話の中では、比喩が理解の助けになることがよくある。
まず、身近なところで、自社の経営戦略を部下に理解させることなどを考えてみてはどうだろうか。経営戦略を、言葉として知っているだけでは役に立たない。自分たちの日常の仕事に具体的に反映されるようになって、初めて本当に理解できたことになる。
皆でいろいろ議論してみると良い勉強になるはずだ。“経営”という自分たちの日常とは異なるレベルでの問題を理解する“戦略”とはどういうことか、また、経営改革を進める会社では、従来の常識にはない考え方があったりするはずだ。
なお、会社の方針、自分の管理する組織の方針を部下に理解させることは、管理者のリーダーシップの重要な要件でもある。
profile
公江 義隆(こうえ よしたか)
ITコーディネータ、情報処理技術者(特種)、情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる
- IT関係者は、原発事故から何を学ぶべきか
- 優れたシステムを作るための“思考力、人間力”とは?
- “影”から目を背けてきた原発とIT
- 他山の石――政治を顧みて学ぶマネジメントの在り方
- 「想定外」から脱却できる、真の対策を
- 失敗は成功のもと、成功は失敗のもと
- いまあらためて確認したい、情シスのイロハ(後編)
- いまあらためて確認したい、情シスのイロハ(前編)
- 持続可能社会とITシステムはどう在るべきか(後編)
- 持続可能社会とITシステムはどう在るべきか(前編)
- 新型インフルエンザ対策に学ぶ組織の在り方
- 変化の中で、自らを制御できるものが生き残る
- “変化”を模索する世界(後編)
- “変化”を模索する世界(前編)
- “変化”は外からやってくる(後編)
- “変化”は外からやってくる(前編)
- その考え、本当にあなた自身のものですか?
- 事の本質を見極めよう
- 適材適所の人材育成をしよう
- コンプライアンスを語る前に考えてみること
- “シックオフィス”で健康を損なっていませんか?
- ゆでガエルになる前に情報子会社は経営の見直しを
- ディスカッションテーマのおもちゃ箱(2)
- ディスカッションテーマのおもちゃ箱(1)
- 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(3)
- 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(2)
- 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(1)
- SOX法とコンプライアンスとIT
- リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(後編)
- リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(前編)
- 情報システム部は、もう役割を終えてしまったのか?
- 阪神大震災10年目に考えること、するべきこと(後編)
- 阪神大震災10年目に考えること、するべきこと(前編)
- “気付き”のコミュニケーション――機能や仕組みの説明は理解に結び付かない
- JR脱線事故からマネジメントを学ぶ
- 羽田空港の管制はなぜ止まったのか?
- IT徒然草――コストと利便性を追い求めて失うもの
- 理想的な上司と部下の関係とは――部下の育成方法
- 続・いまのIT組織でいつまでやっていきますか?
- いまのIT組織でいつまでやっていきますか?
- ITの動向や他社の状況を、気にし過ぎていませんか?
- IT化と投資の“正しい”関係とは?(後編)
- IT化と投資の“正しい”関係とは?(中編)
- IT化と投資の“正しい”関係とは?(前編)
- ブレークタイムでの話題製品と情報化のコンセプト
- “誰にでもやさしい”ITは良いことなのか?
- ブレークタイムに“設計思想”を語り合おう
- 仕事への取り組み方は最初の数カ月で決まる!
- 優秀なスタッフを育てる職場環境とは
- 全社IT最適化のカギは「データ体系の統一」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.