リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(後編):何かがおかしいIT化の進め方(26)(3/3 ページ)
前編に引き続き、今回もITマネージャがリーダーシップを発揮するための諸問題を考える。特に今回はリーダーシップの要素に関する問題を中心に取り上げる。
ティータイム
人間には「人を動かしたい」「何かを成し遂げたい」「人と仲良くしたい」という基本的な動機があるとされており、その欲求の強さの個人差が大変大きい。これらの特性は先天的なものか、あるいは幼少期に形成されるといわれている。しかし、人間には眠っている能力も多い。たたき起こせばカリスマのレベルは無理でも、そこそこのレベルには到達できる可能性もあるだろう。
筋肉でも頭脳でも人間の機能は使えば高まる。意識して行動してみる。その行動を続けているうちに、だんだん抵抗感がなくなってきて、あまり意識しないでもできるようになる場合もよくある。習慣化された状態にまで至れば、やらないと気になるようにまでなる。
リーダーシップが「人を動かしたい」という基本動機に起因するように、顧客指向は「人と仲良くしたい」に起因している。「ありがとうございます」と大声でいって何度も頭を下げているうちに、本当にお客さんがありがたく思えるようになったという話がどこかに書いてあった。
暇があれば引き出しをそっと開いて、「辛抱」としたためた色紙を見ているという人がいた。これを始めてから、(しゃべりたい自分を抑えて)部下の話を聞けるようになったという。
意欲の高まらないときには、意識して少し早く歩くようにしていると元気が回復してくる場合がある。消極的な特性の人は、例えば、セミナーに参加したときに最前列に座るようにしてみたり、必ず質問をするなどといったことから始めてみる方法がある。こんなことでも続けていると少しずつ何かが変わっていくものだ。
意識も行動も脳の中で起こっている。脳の神経回路では、使用した機能を担う神経細胞同士のつながりが使うほどに強化され、神経回路の中を流れる情報が流れやすくなる。まず「意識」を引き金に、新しい行動を行う機能の神経回路を動かし、これを繰り返すことによって、意識を引き金にしなくても、この新しい行動の回路が自然に作動するようになることもある程度期待できそうだ。
おわりに
京都大学と神戸大学において、計5回のヒマラヤ遠征隊に加わり、その中で隊長を3回務めた平井一正氏(神戸大学名誉教授)が、自身のこれまでの経験を踏まえて「リーダのあり方」を下記の(10+1)の項目にまとめて語っておられる。
「リーダのあり方」平井一正
(http://home.kobe-u.com/cs-club/teacher/index.html)より:
なお、( )の中の文章は、筆者が特に印象深かった本文中の言葉や文章をピックアップしたものである。
1.困難な中でやりとげる執念をもつ
(……いったんゴーサインを出したら、目標にむけて全力投球をしなければならない。……弱音を吐かないこと、……自分自信の星を信じること……。)
2.次の世代を育てる
(……未知の世界に挑む人間の行為が、いかに次代の若者に夢と希望を与え、大きな影響を与えてきたかを考えると、……。)
3.リーダは非情であるべき
(……理屈と感情にはギャップがある。隊員の不満を上手にカタルシスし、そこを納得させるのがリーダシップ……。信念をもち、人格、経験などで隊員の信頼を勝ち得ることが重要である。)
4.リーダはつらい
(……万一の場合は、不成功の場合も含めて、結果に対してはすべてに責任をとる覚悟をする)
5.カンとツキ
(……ツキとカン、このふたつは理論的に解明できるものではないが、表裏一体であり、知識、努力そして経験によって獲得できるものであると思う。)
6.チームワークをはかる
(……笑いは、困難を乗り越える原動力……きびしい環境からのストレスに耐え、個々のわがまま、功名心など自分をおさえること、これがチームワークの原点であり、これを引き出すのはリーダの役割である。)
7.重要なサブリーダ
(リーダは孤独であり、決定に対して相談する相手がいると気分的に非常に楽になる。……リーダが気がつかないことをリーダに進言できる器量のあること、イエスマンでないことなどが重要である。)
8.国際センスをもつ
(……いかなる国でも決してその国の人を下に見下ろすような態度は厳に慎むべきである。……視線を相手のレベルにあわせて、相手の身になって対処すれば、相手を理解できるし、うち解けた交流ができる)
9.夢をもつこと
(……リーダは夢をもつことが大切である。夢の実現に努力する姿勢は人を惹きつける。……自分の信念を表現する言葉を発することなしに人はついてこない。)
10.リーダの人柄
(……登山隊のリーダは、登山家としての力量とリーダとして皆をまとめる力量の両方を持たなければ、隊員の信頼を勝ちとることはできない。そのどちらに欠けても信頼は薄れる。)
11.付録:生と死の分岐点
(……リーダはいざというときの決断ができるかどうかで真価が問われる。……行動中の一瞬一瞬に起こりうる可能性を常に予測して、頭に中にその状況をイメージして考えておくことが必要である。)
profile
公江 義隆(こうえ よしたか)
情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる
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