ボタンなどの配置に無理がなく、使い勝手がよいのも本製品の見逃せない魅力。メニュー画面などの操作は、おなじみのFUNC.ボタンと十字キーによるインタフェースを継承しており、同社製品を使ったことがあれば迷わず操作できる。
また、今回新たにレンズ下部に「カスタムキー&ダイヤル」が取り付けられた。これは露出、フォーカス、マイクレベルなど5つの項目から1つを選び、ダイヤルでマニュアル操作できるというものだが、オン/オフを行なうボタンの位置やダイヤルのトルクが適切で扱いやすかった。画面の白トビを警告する2種類のゼブラパターンや、ピント合わせを容易にするピーキングなど、マニュアル操作を補完する表示機能を併用して、じっくり画を作りこんでいくのも楽しいだろう。
ただし、肝心の液晶モニターが2.7型21.1万画素とやや粗めなのは惜しく、表面に施された特殊コーティングによる映りこみが気になる場面もあった。さらに欲を言えば、レンズ鏡筒部のフォーカスリングや、2007年の秋モデル「iVIS HG10」で採用されたきりのシーソー式ズームレバー、モードダイヤルに占領されてしまったビューファインダーなど、フラッグシップ機だからこそ実現してほしかったギミックもないわけではないが、逆に言えば、こんなマニアックな要望を出したくなるほど、基本的な画質の完成度は高い。
マニュアル機能にばかり注目していると、一部のマニア向けカメラのようにも思われそうだが、本製品の最大の魅力はフルオートの優秀さにあるといっていい。マニュアル操作をいっさい受け付けない簡単モードである「デュアルショット」にモードダイヤルを固定していても、多くの場面で不満を感じることはないだろう。
なかでも、外部AFセンサーを併用したオートフォーカスの精度は特筆もの。ピント合わせが高速で、しかも安定している。ついに搭載された顔検出機能も高精度に追従しており、被写体が画面中央から外れた場面でも的確にピントを合わせてくれる。オートフォーカスに関しては、今回取り上げた5台の中でトップの気持ちよさだ。
ただし、照明の少ない室内や夜景といった暗めのシーンだけは、カメラ任せにしないほうがよいかもしれない。というのも、フルオートの状態では、写っているものをなるべくはっきり見せようとするため、感度アップによるノイズが盛大に乗ってしまうからだ。こうした場合は、感度アップを段階的に抑える「AGCリミット」の機能を使えば、ノイズを抑えつつ、夜景を自然な明るさで撮影することができる。夜景を数多く撮るユーザーは積極的に使いたい。もちろんAGCリミットをカスタムダイヤルに割り当てることも可能だ。
レンズや撮像素子といった、画質を決定づける要素は、サイズを大きくすれば画質は向上するが、当然カメラ全体のサイズも大きくなってしまう。本製品は携帯に不満のないサイズを見極め、可能な限りの高画質化を突き詰めるという、カメラとしての王道をいくモデル。フルオートの安定性も抜群で、だれでも手軽にフルHDの高画質を堪能できる。コンパクトさを最重要視するのでなければ、広くおすすめできる1台だ。
作例はビットレートを約24Mbpsとする「MXP(高画質++)モード」にて撮影した。設定のカスタマイズは行わず、フルオートで撮影している。静止画はL(3264×2456ピクセル)にて撮影したものだ。動画キャプチャの関係上、動きの速い部分でインターレース特有の荒れが散見されるが、動画での画質には影響ない。
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