マナーモードの“そもそも論”(2/2 ページ)

» 2004年01月14日 15時21分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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 そして何より、あまりにも多くの“モード”が秩序なく追加されたため、シーンに応じて使い分けるのが実質不可能だという理由もある。細かなボタンを押して設定するのが難しいであろう高齢者の方などが、電車の中で盛大に着信音を鳴らしているのは、よく見かける光景だ。いくら専用のモードが用意されていても、使いこなすのは至難の業。現在、モードの乱立は混乱を極めている。

微弱電波でマナーモードの自動切り替えを

 こうした混乱を解決する方法もなくはない。私が考えるのは、Bluetoothなどの微弱電波を使って携帯電話のモードを自動的に制御させてはどうかということだ。もちろん、ユーザーが端末側でオン/オフを設定できるようにして、である。

 例えば電車の優先席付近に「セルフモード信号」を出すアンテナを設置する。優先席付近にある携帯は、その信号を受け取ると自動的に電波を出さないセルフモードに切り替わる。

 劇場や映画館では、信号を受けて、着信音もバイブレータも作動しないサイレントモードに切り替わる。信号が届かない会場の外に出ると、元の設定に戻る。

 カメラ撮影が禁止されている研究所などでは、カメラの撮影だけを禁止する信号を発信する。学校など、携帯利用事態が好ましくない場所では、信号の届く教室内では携帯のほとんどの機能を制限するよう設定するのがいいだろう。

 機能を制限するモードに限らず、オフィス内では携帯からのWebアクセスが自動的にイントラネットに切り替わるとか、普段はマナーモードでも自宅では盛大に着メロが鳴り響くといったモードを自動設定させることもできるだろう。ユーザー自身がメリットを感じられるようにすることで、この自動制御機能を端末側でも常時オンにしてもらうのも狙いだ。

 もちろん自動車内では、設定が自動的にハンズフリーに切り替わり、メールの送受信が行えないよう、画面が一切表示されないモードに移行する──。

Bluetoothの可能性

 こうしたことは、別に技術的にはそれほど難しくない。Bluetoothのバージョン2では、自動車向けの新プロファイルが定義され、「車に乗り込んでエンジンをかけると、自動的に通話が車載システムに切り替わる」といった動作が想定されている(2002年1月の記事参照、これはあくまで1対1の話だが)。

 Bluetoothの電波到達範囲も、こうした用途に具合がいい。アンテナからの送受信距離はほぼ10メートルであり、小さな会議室や電車内ならうまくカバーできる。また増幅器を使うことで100メートル程度まで電波を飛ばすこともできる。

 Bluetoothが利用する電波は2.4MHz帯のISMバンド。ISMとはIndustrial, Scientific and Medical Bandの名の通り、工業、科学研究、医療などに免許不要で利用される帯域だ。病院内での利用も(混信の可能性はあるが)基本的に問題ない。また出力電力が小さく、人体への影響もないとされている。

 Bluetoothの電波を出す機器自体が、技術的にこなれてきており、チップ自体は数百円と安価なのもポイントだ。オープンスタンダードをうまく活用することで、急速な普及が見込め、公共の場所に限らない利用が可能となるからだ。

 このための技術はBluetoothである必要はないし、現在のままのBluetoothでは難しいだろう。しかし技術的に不可能なわけではない。

 こうした“モード”の自動設定機能は、通信キャリアの直接の利益には結びつかない。ただし、日に日に携帯電話利用への風当たりが強くなる中、ユーザーが安心して携帯を利用できる環境を作り出すことは、キャリアの義務であると共に、携帯が人々の日常に溶け込むためには絶対に必要なことだ。

 あちらでもこちらでも「携帯電話の電源はお切りください」──。そんな世の中になる前に、キャリアには積極的な対応を期待したい。

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