作品名 | 珈琲時光 |
監督 | ホウ・シャオシェン |
制作年・製作国 | 2003年日本作品 |
この作品は、公開中の映画です。映画を見る予定の方は、見終わってからこの記事をお楽しみください
小津安二郎監督の生誕100周年を記念して製作させた本作品。台湾のホウ・シャオシェン監督が、小津作品からインスパイアされた世界観で、現代の東京を描いています。
主人公は、都電が走る東京の下町で一人暮らしをしている陽子。フリーライターの陽子は、台湾出身で日本でも活躍していた音楽家・江文也(コウ・ブンヤ)について今は調べています。台湾での取材旅行から帰ってきたところ、陽子の携帯電話が鳴り出します。
「もしもし、うん、ただいま」
旅行の話から始まって、夏の予定、そして最近見た不気味な夢まで伝える陽子。相手は、古書店を営む友人の肇でした。肇とは、仕事の資料を探すため古書店街を訪れているうちに親しくなったのです。恋人ではないけれども、不思議と自分の考えていることを何でも話せる特別な相手。陽子はさっそく、肇の店を訪ねます。
肇は江文也についての資料を取り寄せておいてくれたのでした。陽子はそんな肇への御礼も含めて、台湾のお土産を渡します。
その足でお墓参りのため、実家の高崎へと向かう陽子。駅に着くと父親が迎えに来てくれていました。久しぶりに実家でのんびり過ごす陽子の姿を、両親は微笑ましく見守っていました。しかし陽子は突然、そんな穏やかな空気をかき乱す告白をします。妊娠している、と。両親はあまりの驚きに言葉も出ませんでした。そのボーイフレンドとの結婚は考えられないという陽子。
彼からも時折連絡はありますが、時間があると電話してしまうのは肇のほう。他愛もない夢の話を真剣に聞いてくれる肇。
「それが伝えたくて、電話しちゃった」
夢の既視感の原因を肇に伝え、陽子はそれだけで満足して電話を切ったり。また、ある時は仕事中に電話をして
「今、高円寺だから、御茶ノ水で待ち合わせしようよ」
と、肇と会う約束を取り付ける陽子。こんなふうに陽子と肇はしょっちゅう、携帯電話で連絡を取り合っています。電話が通じない時には
「どこにいるかと思って電話しました。これを聞いたら電話ください」
と肇の携帯の留守電にメッセージまで残して。でも、恋人同士ではない二人。陽子の妊娠という現実を抱えながら、二人の関係はどのように変化していくのでしょう。淡々とした日常に、静かに波紋を落としながら物語は続いていきます。
陽子を演じたのは、デビュー曲「もらい泣き」で有名な一青窃さん。映画初出演とは思えない堂々とした演技を見せています。数多く登場する携帯電話での会話の場面はとても自然で、一人暮らしの女の子の普段着の生活を覗いているよう。台湾人のホウ・シャオシェン監督が、そんなリアリティのある東京の風景を見事に映し出した作品です。
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