イー・アクセス、モバイル事業の2つのモデル

» 2005年03月30日 21時57分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 新しく携帯向けに開放される1.7GHz帯を使い、携帯電話サービスを目論むイー・アクセス(2004年11月4日の記事参照)。従来の携帯電話サービスとの違いはどこにあるのだろうか。

 3月30日のセミナーで、イー・アクセスCEOの千本倖夫氏が、モバイルブロードバンドについて講演した。同社の携帯電話事業について2つのモデルを構想していること、そしてMVNOを積極的に活用していくことを明かした。

「データ通信重視型」と「生活エンジョイ型」

 もともとADSL事業者であるイー・アクセスは、モバイルでもデータ通信を重視したサービスを主眼に置く。

 「データ通信重視型のサービスをしたい。これまでの事業者は閉じたネットワークでやっているが、ADSLと同様、制約のないオープンなネットワークとしたい。モバイルをPCと並ぶ情報端末に変えていきたい」と意気込む千本氏。

 PCのデータ通信トラフィックは、ADSLの登場で飛躍的に増大した。ところがモバイルのデータ通信は未だ黎明期だ。ADSLよりも一桁大きい8兆5000億円の市場が、手つかずのまま残っていると千本氏は見る。

 「モバイルデータ通信は、PDC時代からわずか数倍のトラフィック増にしかなっていない。今後飛躍的に伸びる、潜在マーケット。今は、2000年のADSLマーケットと全く同じ」(千本氏)

 もちろん、固定系通信サービスを提供している事業者の例に漏れず、モバイルと固定の融合“Fixed Mobile Convergence”(FMC)も推し進める。

 「Wi-Fi端末の検討も進めている。家庭内ではADSLと無線LAN、屋外では公衆無線LANと次世代通信方式(HSDPA)を使う」(千本氏)

 一方で、単なるデータ通信に限らず、端末機能の強化を中心としたもう1つのサービスも構想中だ。

「モバイル家電」で身近なデバイスをモバイル化

 「“生活エンジョイ型端末”。ユーザーがニーズに合わせてフレキシブルに、機能やデザインを選べる端末へ」

 こう千本氏が表現するのは、ドコモやKDDIなど既存の携帯キャリアが推し進めるような高度化した端末を使うサービスだ。音声通話やEメール、Webブラウジングなどの電話の基本機能から、生活密着型の道具として電話以外の機能を取り込んだ端末が重要になってくるとした。例として挙げた機能は、テレビチューナーや音楽再生、FMラジオ、カメラ、非接触ICなど。

 さらに、ポータブルオーディオプレーヤーやデジカメ、ポータブルゲーム機など、身近なデバイスに通信モジュールを組み込み、「モバイル家電」として利用を拡大させたいとする。

 「オーディオ機器などに通信モジュールを埋め込んで、通信を使って新しい機能を提供したい。もちろん通話機能も提供する」(千本氏)

MVNOを積極検討〜通信インフラに特化

 またビジネスモデルの面では、従来の携帯事業者とは異なるモデル──MVNOモデルを構築する考えだ。これは、イー・アクセスは通信インフラのみを用意し、他社に通信インフラを提供する。端末やコンテンツ、サービスなどは他社が提供するというもの。

 欧米では例が多く、有名なものとしてはVirgin Mobileが他社から通信インフラを借り受けてサービスを行っている。国内ではウィルコムから通信インフラを借り受けて、データ通信サービスを提供している日本通信が例として挙げられることも多い。

 「通信インフラのみを水平展開する、MNVOのモデルも積極的に検討したい。これまでほとんど存在しないビジネスモデルであり、新しいモデルが展開できる」(千本氏)

周波数と通信方式〜HSUPAも

 同社はこれまでW-CDMAの進化形であるHSDPAの採用を明かしていたが(2月10日の記事参照)、今回ある程度の詳細を話した。

 通信ネットワークはHSDPA/HSUPAを採用する(3月24日の記事参照)。HSUPAは上り通信速度を向上させる新通信方式。「HSDPAの導入により、理論上下り14.4Mbps、上り2Mbpsという高速なサービスを実現し、極めて快適なモバイルの環境を実現したいと考えている」(千本氏)

 コアネットワークは、当初からIPベースのネットワークとする。「オールIPのネットワークを実現したい」(千本氏)

 「2006年度中にサービス開始したい。全国の主要都市から初めて、津々浦々までサービスしたい。これまでの経験からいうと人口カバー率90%を超えると普及期に突入するが、早期に95%を達成したい」

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