フルブラウザを実現するために必要な技術にはいろいろあるが、スコットランドに本社を置くPicsel Technologiesは、超高速なズームとスクロールを可能にする同社のレンダリングエンジンがフルブラウザに新しい可能性をもたらすと見る。
米サンディエゴで開催中のBREW 2005 Conferenceで展示されているPicselの最新技術は、これまでの携帯アプリケーションの常識を覆す可能性を感じさせる物だった。
上の写真は、Picselがα版として開発中のフルブラウザだ。超高速スクロールとズームが特徴で、携帯の小さな画面でも全体像を把握でき、見たい部分を簡単に拡大して閲覧できる。ブラウザとしての最適化はこれからだが、Vodafone 702NK上で既に動作している。
「縦スクロールだけでWebを見られるよう、ジャストフィットさせる技術も備えている。携帯キャリアなどにライセンスしていく方向で、商用化を予定している」と日本法人ピクセルテクノロジーズのアリ・アドナン代表取締役は話す。
斬新なフルブラウザを見せてくれたPicselだが、同社のコアテクノロジーは超高速なレンダリングエンジンにある。「このエンジンの上に、さまざまなアプリケーションを供給している。うち1つが、KDDI端末などに搭載されているファイルビューワだ」(アドナン氏)
携帯向けアプリケーションとしては、PicselはWord、Excel、PDFなどの各種ファイルを閲覧できる「ドキュメントビューアー」の開発元として知られている。ドコモ向けのシャープ「SH901iS」や、KDDI向けのカシオ「W31CA」への搭載が有名だ(5月23日の記事参照)。
「こうした上に乗っているアプリケーションは他社に作ってもらってもいい。オープンなものだ。戦略的に供給していきたい」(アドナン氏)
例えば、メールクライアントソフトを開発しているメーカーが、Picselのレンダリングエンジンを利用すれば各種添付ファイルをシームレスに閲覧できる環境も作ることができる。「例えば、ブラウザソフトはどんどんコモディティ化して収益が出なくなっていくだろう。そうしたソフトメーカーに、付加価値としてPicselのエンジンを供給できる」
レンダリングエンジンは既に各種プラットフォームに移植済みだ。BREWプラットフォーム向けの第1弾となるカシオ「W31CA」をはじめ(2004年3月25日の記事参照)、Linux、Symbian、Palm、PocketPCや各種リアルタイムOSにも対応している。
アドナン氏は、Picselのレンダリングエンジンを使うことで、全く新しいユーザーインタフェースの可能性が拓けることも示唆した。
上の写真は、カレンダーをベースに各種情報にアクセスするというイメージビデオだ。画面いっぱいに表示されているカレンダーから目的の月をズームアップ。するとその日の予定が現れてくる。さらにズームを続けると、その日の天気や会う予定の人の写真も表示される。さらにズームすると、待ち合わせの場所の地図(Wordドキュメント)が現れ、チェックできる──。
「PCをあまり使っていない人。そういった人にもリッチにコンテンツを見せるニーズが出てくるのではないか」。アドナン氏は、ズームとスクロールを基礎とした、これまでにないユーザーインタフェースの可能性をこう話した。
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