KDDIとパワードコム合併で気になる、3つのこと

» 2005年10月13日 20時00分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 既報のとおり、KDDIはパワードコムを吸収合併すると発表した(10月13日の記事参照)。これによりKDDIはパワードコムのFTTH網を手にし、NTTグループへの対抗軸として強力な通信事業者に進化することになる。

 発表会場で各社代表の話した内容を中心に、合併の意味を読み解いてみよう。

3社の思惑は?

 今回の合併で、KDDIの目的がパワードコムが持つFTTH網にあったことは明らかだ。パワードコムは関東一円に10万キロ、それ以外でも全国のネットワークと連携した、各通信事業者の中でも最大規模の光ファイバーインフラを持っている。KDDIの小野寺正社長は、ダークファイバをNTTから借りるビジネスモデルでは限界があったと話す。「NTTにダークファイバの利用を申し込んでから、開通するまでにそれなりの時間がかかる。また借りる料金はNTTの設定した料金で決まっており、この部分のコストは企業努力で下げられない」

 逆にいえば、パワードコムの子会社であるISPのドリーム・トレイン・インターネット(DTI)やフュージョン・コミュニケーションズはKDDIが狙う対象ではなかった。今回の合併ではDTIやフュージョンは切り離されており、東京電力の方針に沿って「東京電力に帰属するか、もしくは第3者に譲渡される」ことになる。

 パワードコムから見ると、今回の吸収合併は一連の“再生”プランの一環となる。同社の中根滋社長は、「2700億円の有利子負債を抱え、50億〜70億円の赤字を連続していた頃はM&Aの対象になんてとてもならなかった」と感慨深げに振り返る。

 「今では毎月黒字化している。社員と一緒に歯を食いしばってやってきたことが、KDDIに評価され嬉しい」。KDDIが1に対してパワードコム0.032という合併比率にも、満足しているとした。「法人営業と広域イーサを(合併後の企業の)ダイヤモンドとして、世界をリードするネットワークカンパニーになっていきたい」

 東京電力は今回の合併で、本業である電力事業以外の“通信事業”分野を大幅に手放すことになる。会場では東京電力の勝俣恒久社長に、「通信など新規事業を大幅縮小するということか」と問う質問も飛んだ。

 勝俣氏は今回の取引が売却ではなく、統合・合併だと指摘。パワードコムの大株主だった東電は、合併後の存続会社であるKDDIの株式のうち4.81%を保有することになる。「電力の設備管理などに通信を加えて、トータルソリューションを提供できる。PLC(電力線通信)にしても、これは言ってみれば我々の得意分野だが、通信事業に活用していく」

パワードコムと付き合いのある企業はどうなる?

 今回の合併は、通信業界に新たな動きをもたらす。例えば前述のとおり、フュージョンとDTIはパワードコムではなくほかの事業者に属することになる。詳細は未定だが、東京電力は「これから応募する企業による」と、買収に動いている企業の存在もにおわせている。

 パワードコムのFTTH回線を卸売りで使用しているISPがどうなるのかも、未定だ。KDDIがDIONというISPを持つだけに、ほかのISPとの距離感が疎遠になることも考えられる。会場ではこの点は、「今後方針を決める」としか話されなかった。

 パワードコムの回線を利用している事業者の1つに、ライブドアが挙げられる。同社は今秋から提供している公衆無線LANサービスで、パワードコムのネットワークを基幹網に利用している。KDDIも固定と移動体を融合させたサービスに力を入れるだけに、ライブドアが競合することは必至だ。

 ただパワードコムの中根社長は、「ライブドアは(KDDIの)競合というより、ワイヤレスという第3のアクセスインフラを提供する事業者」とこの見方を否定。むしろこの合併で、よりライブドアを支援できるのではないかと穏やかに発言した。

ほかの電力会社との関係は?

 もう1つ、気になるのが東京電力以外の電力事業者とKDDIの関係だ。今回、KDDIは東京電力との交渉を優先し、ほかの地域電力会社との話し合いはその後にする方針をとった(9月21日の記事参照)。パワードコムが電力系通信事業者の中核的存在であり、全国にエリア展開しているのが同社だけであることからも、これは妥当な判断といえる。ただし、この姿勢が東電以外の地域事業者の反発を招いているのではないかとの見方もある。

 東電の勝俣社長は、KDDIとほかの電力会社との交渉がまだ本格的に始まっていないと話す。その上で「今後、それぞれ話し合いをする。我々としては(KDDIと各地域の電力会社の)橋渡しをできるならする」とコメント。電力系事業者として一枚岩にまとまりたい考えを示した。

 パワードコムの中根社長も、同様の方針だ。「各社と打ち合わせしていくが、NTTに対抗したいという考えからすれば、NTT以外に敵を作らないという協調路線をとるべき。そうなっていくだろうと思っている」とした。

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