マシン・ツー・マシン狙いで2009年度黒字化目指す──アイピーモバイル

» 2005年11月10日 15時01分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話事業への新規参入が決まった3社の内の1社(11月9日の記事参照)、アイピーモバイルが11月10日、会見を行い、今後の方針などについて話した。

PCカード型のTD-CDMA端末を手に持つ、アイピーモバイルの杉村五男社長

 1.7GHz帯、W-CDMAでの参入を行うソフトバンク、イー・アクセスの2社と異なり、アイピーモバイルは2GHz帯TD-CDMAでの参入。ターゲットとして狙うのはデータ通信、特に「マシン・ツー・マシン」と呼ばれる機械同士の通信だ。

 同社は2006年10月1日からサービスを開始し、5年後の2010年には1160万加入とする計画だが、そのうち、700万契約を見込むのがマシン・ツー・マシンだ。組み込み型モジュールを開発し、ベストエフォート型の低速・低料金(数百円)のデータ通信サービスを提供。自動販売機や、検針などの遠隔監視制御サービスや、車載機への採用を狙っている。

時期 エリア展開 加入者 備考
2006年10月1日 サービス開始
〜2007年度 東名阪(人口カバー率50%) 基地局数3000局
2009年度 430万加入 単年度黒字化目標
2011年10月 1160万加入
〜2012年度 全国エリア化 基地局数8500局

 一般向けは月額2500〜5000円程度の定額制、マシン・ツー・マシン向けは数百円の料金プランを用意し、2009年度には430万加入、単年度黒字化を目指す。

「データに特化」──TD-CDMAの優位性生かす

 アイピーモバイルが採用するのは、IMT-2000で3G規格の1つとして定められているTD-CDMA(2004年2月17日の記事参照)。同規格は国内でのサービスは初めてだが、海外では米国、英国、独など20カ国で提供されている。

 2GHz帯のTDDバンドを使い、上り下りの通信を同一周波数を使って行う。下り最大5.2Mbps(平均2.2Mbps)、上り最大858kbpsという高速な通信速度が特徴だ。同社社長の杉村五男氏は「データに特化し、TD-CDMAの優位性を活用していく。音声通話サービスは、日本では設備投資をして戦っていく環境にない」とした。免許を申請するに当たっては将来的な音声サービスの提供も予定するとしていたが、現時点では消極的。

 TD-CDMA自体はVoIP技術を使った音声通話も可能だが、同社技術担当の竹内一斉取締役によると、「高機能化した音声端末を開発投入して戦っていくのは、ビジネス的に割に合わない」というのが理由だ。

 代わりにデータ通信分野では多彩な端末を用意していく。まずサービス開始時に提供するのがPCカード型の端末。続いて、マシン・ツー・マシン向けのモジュール、固定インターネットの代替需要向けのモデム型端末を投入する。さらに、「パーソナルメディアゲートウェイ」と杉村氏が呼ぶのが携帯型のモデム型端末だ。

 これは持ち運べるモデム型端末で、無線LANやBluetoothなどを使って、ポータブルオーディオプレーヤーや携帯型ゲーム機などのネットワーク接続を可能にする。「ポケットに入れておくと、自分のいるところがすべてホットスポットになるというイメージ」(杉村氏)

アイピーモバイルのサービスイメージ

販売はMVNOモデル。自社設備は基地局中心

 アイピーモバイルの端末販売戦略は、提携先ブランドによる販売──MVNOモデルとなる。「ベンディングマシン、運行管理などの車載機、いろいろなジャンルの人たちと話している」と杉村氏。

 同社自身も直販を行うが、契約の半数以上はMVNOからを見込む。そのため携帯電話事業に対する投資も、ほとんどは基地局設備設置のためのものだ。「投資額は5年間で1500億円。基地局の設置が中心だ。バックボーンは既存の設備を借りて行う」(杉村氏)

 既存の携帯電話事業者の設備投資と比べると、非常に低コストでサービスを始める目算だが、現在のアイピーモバイルは資本金5億円程度の企画会社。事業のスタートに当たっては資金調達が不可欠だ。これまでも楽天やIIJなどからの資本を入れてきたが(9月30日の記事参照)、今後の増資に注目が集まる。「出資あるいは増資に関しては、機密保持契約のもとに話し合いを進めていて、ここでは話せない」(杉村氏)

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